激戦必至、プレミア優勝争い大予想。本命は“ビッグ6”のうち……どこ?

激戦必至、プレミア優勝争い大予想。本命は“ビッグ6”のうち……どこ?

 プレミアリーグ設立25周年となる2017−2018シーズンが、現地時間11日に開幕する。フットボールリーグ(現2〜4部)から独立した当初、約1億9000万ポンドだったテレビ放映権収入は、四半世紀で25倍以上の50億ポンド(約7250億円)を超す規模にまで膨れ上がった。所属クラブに分配される巨額の“TVマネー”が軍資金となり、リーグ全体の競争性が著しく向上。過去最大の激戦が予想されるのは今夏も例外ではない。

 とはいえ、ちらほらと耳にする「20強」はさすがに言いすぎで、タイトルレースに参戦できるのは一昨季から構成される“ビッグ6”に限定されるだろう。ざっと国内ブックメイカーのオッズを眺めると、本命はマンチェスター・シティとなっている。また解説者でもマーク・ローレンソンやスティーブン・ジェラード、新手の“辛口評論家”として人気のクリス・サットンもシティの優勝を予想している。

マンチェスター勢はともに豪華補強で戦力アップ。

 ペップ・グアルディオラ体制2年目となるシティは3億ポンド(約435億円)とも言われる補強予算を投じ、チーム改造に着手。グアルディオラ流のサッカーを実践する上で重要なサイドバックは昨季から総入れ替えとなった。タレントぞろいの前線でもラヒーム・スターリングが一皮むけそうな気配を漂わせ、昨季加入したガブリエル・ジェズスの怪我も癒えている。

 言い訳無用のチーム構成がかなったグアルディオラ監督はプレッシャーも最大級で、タイトル獲得が義務づけられている。もちろん昨季、指揮官として初の無冠を味わった本人自身が、優勝をノルマと意識していることだろう。

 もっとも実力伯仲の中では、理想主義者であるグアルディオラ監督ゆえの脆さが裏目になる可能性もある。それを踏まえて、結果優先の現実主義者ジョゼ・モウリーニョのマンチェスター・ユナイテッドを最有力候補とする意見にも頷ける。

 誇り高き常勝監督にすれば、就任1年目の昨季はヨーロッパリーグ優勝を果たしたとはいえ、プレミアでの復権に懸ける思いは並々ならないはずだ。

前線にルカク、中盤にマティッチが機能しそう。

 指揮官の意気込みを反映するように、パワフルなチームが出来上がりつつある。昨季故障者続出に泣いたCB陣には、若く屈強なビクトル・リンデロフを追加。そのリンデロフが標準体型に見えるほどのフィジカルを持つロメル・ルカクは、ズラタン・イブラヒモビッチに代わる新得点源となり得る。また中盤センターにはポール・ポグバをサポートする役割としてネマニャ・マティッチが加入し、ポグバの攻め上がる機会が増えている。

 モウリーニョ監督は昨季EL優勝時にコミュニティシールド、リーグカップと合わせたタイトル数を意味する3本指を立てて祝っていたが、来年5月には“自身4度目のプレミア優勝”を意味する4本指を立てて祝っていても不思議ではない。

連覇を狙うチェルシーで目立った補強はモラタくらい。

 ユナイテッドにルカク獲得競争で負け、マティッチを取られた昨季王者チェルシーはやや芳しくないムードだ。アントニオ・コンテ監督が憮然とした表情を見せたのは、コミュニティシールドでアーセナルに敗戦した時だけではない。チャンピオンズリーグでも優勝を目指す指揮官は、アーセナル戦を前にしたの会見でも「頭数が足らない」、「待つしかない」と嘆き、放出先行のチームに質問が及べば「同じことを何度訊く?」と苛立っていた。

 コンテにすれば、開幕前の補強が2年連続で期待外れなのだから無理もない。ルカクを逃した後で獲得したアルバロ・モラタについては「適応に時間が必要」と話している。ただ現実は、構想外であるジエゴ・コスタに代わる1トップとして即戦力として期待せざるをえない。新ボランチ候補のティエムエ・バカヨコが負傷していることを踏まえると、マティッチ放出は移籍市場が閉まる8月末まで引っ張って欲しかっただろう。

 とはいえ、足首の怪我で離脱中のエデン・アザールらが戻ってくれば、戦力は連覇可能なレベルにはある。ちなみに解説者となったフランク・ランパードは古巣を優勝候補筆頭に挙げている。

 しかし仮に序盤戦で躓いた場合、指揮官は補強への不満を飲み込んで執念を見せてくれるだろうか。「来年の今頃コンテはいないだろう」とするジェイミー・キャラガーの予想にも現実味はある。

トッテナムの懸念はウェンブリー開催のホーム戦?

 トッテナムはチェルシーと同じく補強がやや進んでいないが、ムードは良好である。新戦力獲得ゼロで8月を迎えてたが、成長が望める若い主軸が順調だからだ。何よりハリー・ケインとデル・アリには具体的な移籍の噂すらない。心臓部の中盤もビクター・ワニャマをはじめ4名をローテーションで起用できる。そしてトビー・アルデルバイレルトとヤン・ベルトンゲンのCBコンビの、守護神ウーゴ・ロリスが控える守備陣はリーグ最高レベルの安定感だ。

 ただ「トッテナムの優勝はない」と見る識者が多い理由は“ウェンブリー・ファクター”にある。新スタジアム建設中のトッテナムは昨季までのホワイト・ハート・レーンに替わり、ウェンブリー・スタジアムを本拠地として使用する。かつての本拠地より5m長く2m広いピッチは、ハイラインとプレッシングを前提とするマウリシオ・ポチェッティーノ監督の戦術に微妙な影響を及ぼすかもしれない。

リバプールはとにかくコウチーニョの去就が……。

 リバプールはネイマールのパリ・サンジェルマン移籍余波という見舞われている。それは原稿執筆時点で結論は出ていないが、バルセロナによるフィリペ・コウチーニョ獲得の動きだ。

 昨季のリバプールはコウチーニョの負傷離脱がなければ優勝戦線に踏み止まれたとも評されたが、逆に言えばコウチーニョへの依存度の高さを示すものでもあった。チャンスメイクのみならず、自らゴールネットを揺らせるキーマンを引き抜かれてしまうと、大きなダメージとなる

 バルセロナは1億ポンド(約143億円)台の移籍金を用意しているとも言われるが、あと3週間程度の移籍市場で、ユルゲン・クロップ監督のスタイルに適した即戦力が買えるという保証はない。それ以上にもしリバプールのフロントが売却を選択すれば、コウチーニョにも勝る希望の源であるはずのクロップ自身が、クラブでの今後に疑問を抱く事態さえ危惧される。

アーセナルは珍しく積極補強を図り、戦術も柔軟に。

 優勝への意気込み、そしてタイトルの必要性では、アーセン・ベンゲル率いるアーセナルも負けていない。強まるファンの退任要求を余所に続投を決めたベンゲルは異例の積極補強を図った。プレシーズン開始前の段階で、課題とされたCBとFWにセアド・コラシナツとアレクサンドル・ラカゼットを獲得した。

 先のコミュニティシールドで先発した2人は、コラシナツが同点のヘディングシュートを叩き込むなど攻守に奮闘。ラカゼットはシュートがポスト直撃するなど無得点に終わったが献身的な働きを見せた。またベンゲル監督は昨季終盤から混ぜ始めた3バックを採用。戦術面での柔軟性を垣間見せている。

 とはいえ14年ぶりとなるリーグ優勝の可能性は、薄いと判断せざるを得ない。チェルシー戦では、優勢で試合を進めながらセットプレーの甘い守備で先制点を許したのはその好例だ。何よりコミュニティーシールドでの勝利後に「一致団結」の大切さを訴えた指揮官自身がが、自身への不満が爆発する危険性を理解している。

ベンゲル監督は現地メディアもリスペクトしているが。

 アーセナルと言えば、かつては開幕前にメディアも「今季こそは」と好意的な目を向ける存在だった。かつてJリーグで指揮を執ったこともあってベンゲルは日本人にとって特別な存在だが、イングランド人の記者たちもプレミアでで結果を残し続けてきた指揮官にはリスペクトの気持ちを持っている。

 ただ予想となると“トップ4は厳しい”という見方で接しているのだから、それ以降の第2グループ勢に関する見込みの薄さは推して知るべしである。

吉田、岡崎はそれぞれ所属クラブで定着できるか?

 その第2グループの中心を形成しそうなのが、エバートン、サウサンプトン、レスターだ。ウェイン・ルーニー復帰で移籍市場序盤戦をリードした感があるエバートンにしても、ルカク流出のダメージが大きい。

 マウリシオ・ペジェグリーノ新体制のサウサンプトンは、CBビルヒル・ファンダイクが移籍を志願しているが、クラブはここ数年、監督交代と主力引き抜きに耐え続けた。最終ラインでは、吉田麻也とジャック・スティーブンスのコンビが評価され始めてもいる。

 レスターでは、岡崎慎司としてみればさらなる競争激化となるが、新FWのケレチ・イヘアナチョが攻撃力アップをチームにもたらすだろう。3チームとも7、8位が現実目標となる。

 昇格組に目を移すと、2部を制した昨季終了後、ニューカッスルのラファエル・ベニテス監督が「優勝を目指さない手はない」と発言していた。ただ現実では解任第1号監督の有力候補と予想されている。

 予想の難しさは各国でも随一のプレミアリーグ。今季も熾烈なトップ4争いと、その差が紙一重のトップ10争いと、そして残留争いが始まることだけは確かである。

文=山中忍

photograph by Getty Images

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