積極性が空回った時にどう戦うか。作新学院の連覇を阻んだ「負の循環」。

積極性が空回った時にどう戦うか。作新学院の連覇を阻んだ「負の循環」。

 高校野球はメンタルスポーツであることをあらためて感じた。

 9日の第1試合、作新学院(栃木)の夏連覇の夢は初戦でついえた。1回表に幸先よく1点を先制したものの、2回裏に同点に追いつかれると、5回裏に3失点。そのまま1−4で盛岡大付(岩手)に敗れた。

 作新学院の連覇を阻んだものは何だったのか。

 指揮官の小針崇宏監督は試合後、このように話していた。

「去年のチームとは選手がたくさん入れ替わっていますので、正直追われる立場というわけではなく、新しいチームを作っていこうとスタートしました。ただ、周りは優勝校という目で見てきますし、それに値するような選手、チームであろうと取り組んできました。試合の流れや1球の重要性を感じた試合でした。いろんな負け方がある中で、悔しい負け方のひとつであったと思います」

犠打を使わず攻める姿勢は相手に驚きを与えたことも。

 作新学院のチームカラーを端的に言うと、積極的な攻撃的スタイルに尽きる。高校野球の常套作戦である送りバントはあまり使わず、積極的に攻めていく。守備・走塁面でもミスを恐れずに果敢な姿勢を見せていくのが作新学院だった。

 それは、2007年に小針監督が就任して以来目指してきたものだった。

 2016年センバツ覇者になった智弁学園の小坂将商監督は、友人である小針の野球をこう語っていたことがある。

「自分の場合、普通は無死一塁なら送りバントという野球をしてきたけど、小針の野球はそうじゃなかった。自分はそれまで当たり前に思ってきたのと違う野球があるというのを、作新学院との対戦で教えてもらった」

 小坂は2011年夏の準々決勝で、小針の率いる作新学院に敗れている。

 今大会の作新学院も、積極性を失ったわけではなかった。

 1回表に先頭の相原光星が出塁すると、2番・添田真聖にバントを命じず強攻策に出た(結果は左飛)。その後1死満塁としたのちにワイルドピッチで先制している。

 ただその後は、持ち前の積極性が裏目に出た。

サードゴロで併殺を狙うか、確実に本塁アウトか。

 2回表にも先頭打者が出塁したが、続く加藤は併殺に打ち取られた。またエンドランを試みてもフライを打ち上げるなど拙攻が続いた。

 野球とは難しいもので、こういった場面が続くと相手に流れが渡ってしまう。「走者がスタートを切れなかったり、エンドランでフライを打ちあげてしまったり、攻守両面で流れを引き寄せられなかった」と小針は話した。

 噛み合わない流れは守備面にも波及した。

 5回裏1死一塁の場面で、盛岡大付は作新学院のお株を奪う強攻策に出てきた。1番・林一樹の安打で1死一、三塁となると、2番・大里昂生の場面でのワイルドピッチで同点。さらに大里にライト前へ運ばれて再び一、三塁とされた。

 問題のシーンは、続く3番・植田拓。サードゴロに打ち取った打球を三塁手の中島淳が本塁へ転送して挟殺プレーでアウトにしたのだ。

 ただこの場面、作新学院ぐらいのチームなら、三塁走者を無視して併殺を狙う選択肢はあったはずだ。たとえ併殺崩れに終わって1点を失ったとしても得点圏に走者は残らず、ピンチが続くのを避けられるからである。

 結果論になってしまうが、2死一、二塁で迎えた次の比嘉賢伸に走者一掃の二塁打を浴び、さらに2失点を喫した。

攻撃でうまくいかず、守備面も積極性を失った?

 中島はサードゴロ後の送球についてこう語る。

「あの場面でどちらをアウトにするのかは、点差や展開にもよると思いますけど、あの場面では同点だったので、1点を守りに行くという選択でした。今思えば打球が速かったので、併殺を狙いにいってよかったかなと思います」

 確かに“今思えば”なのである。

 冷静に考えれば大量失点を防ぐ選択がベターだったかもしれないが、「そこはベンチが指示しきれなかった」と小針監督が話すように、一瞬の判断の中では難しい選択である。中島の言葉からは、作新学院が置かれていた精神状態をうかがい知ることができる。

「攻撃面での積極性が上手くいかなかったので、守備面でも積極的にいけなかったのかなと思います。5回裏1死から内野安打を許した場面では遊撃手がボールを弾きましたが、その前に僕がダイビングしてでも取りに行くべきでした。積極的に行けなかった」

高校野球は勝負が決まるワンプレーが連続する。

 小針監督も中島も「昨夏覇者のプレッシャーはなかった」と断言している。ただ複合的な要素が彼らの判断を迷わせるものが発生したのかもしれない。

 盛岡大付・関口清治監督は、試合に臨むにあたっての意識をこう回想していた。

「作新学院さんは積極的なチームですので、それを上回るくらいの積極性を出さないと話にならないと生徒たちにはいってこの試合に臨みました。エンドランを掛けたり積極的な攻めをしたのは、その表れでもありました。守る側としては、作新学院さんがエンドランを多用するチームなので、守備が早く動かないなどの対策はしっかりしてきたつもりです」

 作新学院はいつも通りに戦ったはずだった。だが、相手に積極的な姿勢で上回られ、気づかぬうちに受けて戦っていたのではないか。

「(高校野球は)ワンプレーで勝負が決まっていくことの連続だと思うので、1球の勝負強さが増していかないといけないと思いました」

 小針はそう唇をかみしめた。

 昨夏覇者はメンタルスポーツの難しさに苦しめられ、夏の戦いを終えたのだった。

文=氏原英明

photograph by Kyodo News

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