打てる捕手・阿部慎之助の後継者!?プロ2年目、宇佐見真吾とは何者か。

打てる捕手・阿部慎之助の後継者!?プロ2年目、宇佐見真吾とは何者か。

 160名を超える部員を抱える城西国際大学は、千葉県大学野球連盟に属している。

 今年6月の全日本大学野球選手権では、同じ連盟のライバル・国際武道大学が準優勝と躍進を遂げ、リーグへの関心も徐々に高まっているが、選手集めという点では、まだ他連盟の大学と比べ、遅れをとっていると城西国際大学の関係者は語る。

 そんな城西国際大学に救世主とも呼べる人物が現れた。同大学のOBで、現在は読売ジャイアンツで活躍中の宇佐見真吾だ。

 今年、プロ入り2年目を迎えた宇佐見は、8月に初の一軍昇格を果たすと、プロ初出場となった8月8日の対阪神戦で藤川球児からプロ初打席初安打を記録。さらに8月18日の横浜DeNA戦では砂田毅樹からプロ初本塁打をサヨナラ本塁打で記録するなど瞬く間に、世間の注目を浴びる存在となった。

東金市全体が、宇佐見の活躍を喜んでいてくれる。

「大学の人はもちろんですけど、大学がある地元の東金市の人達もね、今回の活躍をとても喜んでくれていますよ」

 そう話すのは城西国際大学の野球部監督を務める佐藤清だ。

 現役時代は天理高校で3度の甲子園出場を果たし、その後は早稲田大学、社会人野球の日本生命でもプレーを続け、引退後は1995年から早稲田大学の監督を務め、2007年からは城西国際大学に籍を置いている。

「(東金市は)人口6万人というけっして大きくはない街なんでね。『宇佐見が打った、また打った』って、何か活躍がある度に街のみんなが喜んでくれるんですよ。宇佐見がプロへ行く際も、方々から人が集まってくれてね。壮行会なんかもしていただきまして、彼のことをみんなが応援してくれているんです」

 194cmの大きな体は現役の学生たちと並んでもひと際大きく見える。

「私ももう60(歳)を過ぎたので、身長も縮んで今は191cmくらいじゃないでしょうか」

 その大きな体を揺らしながら時折笑みを浮かべ、佐藤は宇佐見の活躍を自分の事のように喜んでいた。

宇佐見の投打の才能に惚れ込んだ佐藤監督。

 宇佐見と佐藤が出会ったのは、宇佐見が市立柏高に籍をおいているころだった。

「(最初に見たときは)彼がキャッチボールをしていたんですけどね、とても柔らかい体の使い方で、『スムーズなキャッチボールをする選手だな』という印象でした。それとバッティングですよね。これもとても柔らかい。器用な選手だなって感じたのが第一印象ですね」

 宇佐見が城西国際大学に入学すると、1年秋にはそれまで正捕手を務めていた4年生のキャプテン・深瀬啓太を外野にコンバートさせてまで、宇佐見を正捕手として起用した。それほどまでに佐藤は、宇佐見の才能にほれ込んでいたのだという。

「キャッチャーですし当然、最初はミスも出るだろうと予測はしていました。ただ春の段階で『これはうちの正捕手としてやっていくだけの素材だ』と、スローイングやバッティングを見て思いましたし、なによりキャッチャーとしての雰囲気を感じましたよね。これはうちの財産になるなと感じましたね」

佐藤監督は、プロ入りを見越して鍛え上げた。

 その期待通り、宇佐見は千葉県大学野球連盟で次々と結果を残していく。

 宇佐見が正捕手として迎えた最初の秋のリーグ戦で初の連盟ベストナインに選出、打撃と守備の両面でその才能をいかんなく発揮した。

 2塁スローイングが1.8秒というプロ顔負けの素早さは、相手チームにも恐れられ、宇佐見が上級生になる頃には同連盟で、盗塁を仕掛けてくるケースがほぼなくなっていたという。

 さらにバッティングは、右手一本でも左中間を割る打球を打てるほど、入学当時から非凡な才能を発揮していた。

 だが、それだけでは上のレベルで野球をやるときに必ず壁にぶつかるだろうと考えた佐藤は、宇佐見に2つの約束事を課した。

走り方から徹底的に教えていった。

 ひとつ目は走り方の矯正だ。

「今の子に多いんですけど、宇佐見も(入学当時は)足の外側に力が入っちゃう癖のある走りをしていました。

 もう1人、右の大きい選手(現在は社会人野球・日本生命の本藤光貴)がいたんですけど、この2人をいつも組ませて、まずは走り方から矯正しようとしました。

 内転筋を使う、母指球を使う、体の内側から使う、これは2人が今後、野球選手として成長する礎になるものだから、極端な話ですけど、内股で走れとかも言いましたし、プレーの正確さ、速さ、強さというものが出て来るように、当時はしつこく言いましたね」

いつも最後までしっかり両手で振り切っている宇佐見。

 2つ目はバットを両手で最後まで振り切るよう徹底させた。

「せっかくの親からもらった大きな体があるわけですから、それをちゃんと生かしなさいよということですよね。両手でしっかり振り切りなさいと話をしました。

 彼はどちらかと言うと、上半身を上手く、柔らかく、使える選手なので、その分、下(下半身)がおろそかになってしまう傾向が当時はあったんですよ。

 両手でスイングすれば、分かると思いますけど、特に下半身がきつくなります。それを常にやりなさいと言ってきました」

 宇佐見がプロで打った3本の本塁打を映像で確認すると、最後までしっかり両手で振り切っているのが分かる。

 非凡な長打力がクローズアップされる選手だが、けっして長打を狙って大振りしているわけではない。バットに当てて、なんとかしようという意志のあるスイングというべきか――彼のコンパクトなスイングはこのとき原型が出来たのだ。

ゴルフスイングのような本塁打も当然、の理由。

 さらに佐藤が続ける。

「(両手でスイングすることによって)タイミング、そしてポイントを覚えます。それとボールを捕まえに行く際のバットの入れ方も分かりますし、ボール球も振らなくなってきます。そうしたバッターにとって基本的なことを、大学ではしっかりやりましょうと……そういうことを言い続けましたね」

 2017年9月5日、長野県松本市野球場の対中日戦の9回裏で見せた宇佐見の同点本塁打もこうした中から生まれた。

 膝元というにはやや低すぎる足元に近いボールをゴルフスイングのような形ですくい上げた曲芸とも言える一発。

 SNS上では「信じられない」「神懸っている」などとあらゆる言葉で、この日の宇佐見のバッティングが称えられ、侍JAPANの正捕手として活躍した小林誠司の座を今後脅かす存在だという声も少なくない。

二軍には育成に定評ある内田、田代、小関らがいた。

 ジャイアンツの中では阿部慎之助の後継者ともいえる「打てる捕手」の誕生。それほどのインパクトを、宇佐見は8月8日の一軍昇格後から、わずか1カ月で残してきた。

 プロ入り後、彼の才能をさらに伸ばせる環境がジャイアンツにあったこともこの急成長に繋がった。

 現二軍監督の内田順三は、広島で若手時代の正田耕三、江藤智、金本知憲ら後の名選手を教え、指導力には定評がある人物だ。

 巨人でも阿部慎之助や、現一軍監督の高橋由伸らが若手時代に世話になっており、この内田の周りを、内川聖一や村田修一を覚醒させた二軍打撃コーチの田代富雄と、現役時代はコンパクトなスイングで安打製造機として知られた小関竜也らが取り囲む。

 宇佐見が言う。

「内田さん、田代さん、小関さんの3人の方からは、練習のときから1スイングも無駄にするなとずっと言われてきました。それを日頃から意識して練習そして試合に取り組んで来たことで、スイングスピードは大学の頃よりも格段に速くなっていると思います」

プロ入り後、白内障になり手術・リハビリの苦労も。

 大学4年の春、宇佐見は大学日本代表の合宿中に、ボールを顔面に当てて、左眼を眼底骨折。約2カ月間寝たきりの生活を余儀なくされた。

 その後、外傷性白内障を発症し、プロ入り後もその症状に悩み、順風満帆とは言えないプロ生活のスタートとなった。健常な人よりも早く白内障の症状が進んでいた状況や、手術をすれば確実に良くなるからというトレーナーからの声にも励まされ、2016年6月に手術を決断。その後のリハビリも乗り越え、現在の活躍に繋げた。

 宇佐見は言う。

「自分はまだ一軍が確約されている身ではないので、与えられた少ないチャンスでひとつひとつ結果を出していくだけです」

 今はまだ焦らずに、また一段、もう一段と着実な一歩を彼は歩もうとしている。宇佐見真吾の物語はまだ始まったばかりだ。

文=永田遼太郎

photograph by Kyodo News

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