6年前の山田哲人と同パターン?DeNAのCS秘密兵器は細川成也だ。

6年前の山田哲人と同パターン?DeNAのCS秘密兵器は細川成也だ。

 流れを変えるための抜擢だった。

 ただ、その起用の背景には、きちっとした力の見極めがあったことは、その後のブレークが証明している。

 2011年のセ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)。ファーストステージで巨人を破ったヤクルトだったが、この年のセ・リーグを制覇した落合中日とのファイナルステージは苦しいスタートとなった。

 初戦は中日のエース・吉見一起の好投の前に終盤まで0点に抑えられ、ようやく8回に内野ゴロの間に1点を挙げたが、浅尾拓也、岩瀬仁紀とつなぐ当時の中日の黄金リレーの前に1対2と完敗した。アドバンテージの1勝を含めてこれで0勝2敗。いきなり後がない状態に追い込まれた小川淳司監督が、その夜に勝負手を打ったのである。

 埼玉・戸田で秋季練習中だったプロ1年目の山田哲人を急遽、名古屋に呼び寄せたのだ。しかも翌日の第2戦で、いきなり「1番・ショート」で先発起用という大抜擢を行なった。

「流れを変えないといけないと思った。朝の散歩をしている最中に先発で使おうと決めた」(小川監督)

CSで一軍デビュー、“プロ初安打”を記録した山田。

 山田はこの年は公式戦での一軍出場経験はなく、一軍未経験でのCS出場は'07年の中日・岩崎達郎内野手以来、史上2人目。ただし岩崎は代走での出場で、いきなり先発出場というのは山田が文字通り史上初だった。

 この“一軍初出場”となった試合の山田は4打数で無安打に終わったが、山田の登場は確かにヤクルトの負の流れに楔を打つことになり、この第2戦は3対1で初白星をつかむことができた。その後も先発出場を続けた山田は、第3戦では山井大介から四球を選び、青木宣親のタイムリーで初得点を記録。第4戦では川井雄大から右翼線に二塁打を放って“プロ初安打”をマークするなど、CSの歴史に大きな足跡を刻んだのである。

 最終的にヤクルトは中日に敗れて日本シリーズには進出できなかったが、その後の山田のブレークが小川監督の抜擢はまさに必然だったことの証しとなった。

遠くに飛ばす力は松井クラスの19歳細川。

 ポストシーズンの大舞台だからこそ、年齢や経験を飛び越えた「何か」が、勝負の流れを変えることもある。そういう存在を見つけ出して抜擢する。それが短期決戦の監督の腕の見せどころでもあるわけだ。

 14日から甲子園球場で始まるセ・リーグのCSファーストステージ。2位阪神と激突するDeNAのアレックス・ラミレス監督が見つけ出したそんな秘密兵器がプロ1年目の細川成也外野手だった。

「遠くに飛ばす力は松井(秀喜)クラスの潜在能力を持っている。必ず将来のウチの柱になる選手だから必ず見ていってよ!」

 今春の宜野湾キャンプを訪れたときに名伯楽として知られる吉田孝司スカウト部長兼編成本部長、GM補佐がこう絶賛していた逸材だ。

 昨年、明秀学園日立高校からドラフト5位で入団した右投げ右打ちの外野手は、キャンプからその長打力が他球団の編成担当の間でも話題となっていた。

 開幕後はずっと二軍で腕を磨いてきたが、ファームでチーム最多の435打席に立って打率2割1厘ながら10本塁打とパワーに磨きをかけてきた。

 そうして細川の持つ「何か」を感じさせたのが、シーズン終盤の爆発だった。

ラミレス監督も「カブレラのようだ」とビックリ。

 巨人との熾烈なCS争いを制した直後の10月3日に一軍昇格。

 その日の中日戦に「5番・右翼」で先発起用されると、プロ初打席でいきなりバックスクリーンを直撃する特大の3ランを放ったのだ。さらに最終戦となった翌4日の同カードでも2試合連発となる2号ソロを右翼席に叩き込んだ。

 このパワーに目を丸くしたのがラミレス監督だった。

「日本人でこれだけのパワーを持っている選手は見たことがない。アレックス・カブレラ(元西武)のようだ」

 すぐさま一軍残留を決めると、CSに向けた社会人との練習試合でも生き残りをかけたテストを行った。その2試合の4打数で中堅フェンス直撃の二塁打を含む3安打と結果を残してファーストステージでのベンチ入りを力でもぎ取ったのである。

劣勢の場合、早めの仕掛けが想定されるだけに……。

 一軍でしっかりと結果を残して第1戦からCSメンバーに抜擢されたところは、あの山田より一枚上とも言える。

「どんどん打撃が成長して向上している」

 指揮官は細川の話になるとこう目を細める。

「彼はこういう舞台を経験していないリスクはあるが、(代打で使えば)回の先頭などで流れを変える可能性は十分にある」

 期待するのはもちろん一発の魅力だ。

 CSでは代打での起用になるが、経験不足を認めながらも、それを超える「何か」を感じたラミレス監督が、どんな場面で細川を指名するか。そして細川がその指名にどんな結果で応えるか。

 '07年に両リーグで同制度が導入されてから延べ20カードのファーストステージで、初戦を落として逆転でファイナルステージ進出を果たしたのは'09年の中日のたった1チームしか過去には例がない。

 それだけ第1戦の持つ意味が重く、劣勢のチームは当然、普段より早めの仕掛けにならざるを得ない

 その大事な初戦、阪神先発は左腕・能見篤史が有力で、DeNA打線は9月28日には4安打2得点に終わり完投勝利を許している。序盤で追いかける展開になったら、予想以上に早くこの細川に出番が回ってくる可能性も出てきそうである。

文=鷲田康

photograph by Kyodo News

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