U-20W杯初戦で南米得点王を封殺。CB瀬古歩夢に漂うリーダーの風格。

U-20W杯初戦で南米得点王を封殺。CB瀬古歩夢に漂うリーダーの風格。

 エースを封じる大役を任された男は、時間が経つごとに集中力を研ぎ澄ましていった。

 U-20W杯の開幕戦、南米王者のU-20エクアドル代表と対戦したU-20日本代表。CBとして先発した瀬古歩夢(セレッソ大阪)は、南米予選の得点王で、相手のエースストライカーでもあるレオナルド・カンパーナ(バルセロナSC/エクアドル)を封じ込めるタスクを背負い、初戦のピッチに立った。

 カンパーナは187cmの高さを誇りながら、俊敏性とテクニックを持ち合わせた、世界が注目するストライカーだ。カンパーナを頂点に4-2-3-1の布陣で臨んできたエクアドルは、左サイドバックのディエゴ・パラシオス(ヴィレムII/オランダ)の攻撃力を引き出し、中央にカンパーナがシュートエリアに飛び込んでいくサッカーを展開した。

我慢の時間が続いた初戦。

「(最終ラインでコンビを組むヴィッセル神戸・小林)友希と、カンパーナに対してチャレンジ&カバーで抑えれば、決定的なシーンは作られないだろうと考えていた。

 相手ボールのとき、カンパーナは僕からちょっと離れた位置でボールを受けようというポジショニングを取っていた。それに対して、(最終ラインは)CBとサイドバックでラインをそろえながら、僕は彼がサイドに流れた時に、中に入る斜めのランニングは絶対にやらせてはいけないと警戒していた」

 瀬古はマークとカバーリング、ラインコントロールとビルドアップ……と、難しいタスクをすべて遂行すべく、集中力を研ぎ澄ませていた。

 日本は初戦の硬さもあってか、前半はチーム全体の動きが重く、パスが思うように繋がらない。攻撃にリズムが生まれず、苦しい展開となった。その雰囲気を敏感に察した瀬古は、小林とともにラインを深く設定。あえて“我慢の時間”を選んだ。

「正直、ボールホルダーに対してもうちょっと行けたら、もっといい形でボールを奪えて、ショートカウンターができたと思うのですが、全員で1回リトリートして、ブロックを作ろうとした」

ハーフタイムに飛んだ檄。

 15分、ダブルボランチが2枚とも前に出た瞬間、慌てることなく中央にスペースをつくらないようにポジションを埋め、リスク管理を選択した。「ボランチが全員前に行って、あそこの位置が空いてしまうのはサッカー的にあることなので、いかにそこでリスクを考えてプレーできるか。1トップのカンパーナを僕と友希で挟み込むようにしてチェックしようと冷静に判断できた」と、託された仕事を頭から離さずに対応した。

 日本は前半終了間際にFKからオウンゴールを献上し、1点のビハインドを背負ったが、後半になると流れを自分たちの手で引き寄せた。

「ハーフタイムに影山(雅永)監督から『今まで自分たちが積み上げてきたものがこれなのか』と声を荒げて言われました。自分たちも前半のサッカーにストレスを抱えていましたが、一番ストレスを感じていたのは影山監督だと思う。あの檄で、僕たちもスイッチが入った」(瀬古)

瀬古を中心にカンパーナを封じた日本。

 後半最初のチャンスを日本が作り出すなど、息を吹き返した日本は、51分にMF郷家友太(ヴィッセル神戸)のハンドでPKを与えてしまうが、これをGK若原智哉(京都サンガ)がビッグセーブ。ここからチームは勢いに乗っていく。

 前がかりになるアタッカー陣に対し、瀬古は積極的なラインコントロールでサポートし、68分にはゴール前の混戦からMF山田康太(横浜F・マリノス)が同点ゴールを挙げ、試合を振り出しに戻した。

 その後もカンパーナに対しても警戒を緩めることなくプレーをし続け、1−1のドロー決着。南米王者相手に貴重な勝ち点1を掴み取った。

「(カンパーナに)得点はさせなかったですし、この試合に関してはエースを止めることができたという手応えを感じています」

 試合後、瀬古はこう感想を口にした。

負傷離脱の橋岡の穴を埋める。

 もちろんすべてのプレーが完璧にできたわけではない。61分には自陣右サイドから左へサイドチェンジのパスを送り込むが、精度が低く、相手DFにインターセプトされた。相手のコントロールミスで事なきを得たが、トラップが成功していたら大きなピンチを招く状況だった。

 それでもDF菅原由勢(名古屋グランパス)、ボランチの齊藤未月(湘南ベルマーレ)、そしてPKを止めた若原など周りと協力しながら、最後まで集中力は切らさず、相手エースを封じ込めることができた。

「今までこのチームは(浦和レッズのDF橋岡)大樹くんに引っ張ってもらっていた部分が多々あった。でも今回は大樹くんが(負傷離脱で)いない中で、選ばれた僕らがその穴を埋めることができるか。穴を感じさせないように自分たちがプレーすることが大事だと思っています」

 大会前にずっとこのチームでDFリーダーを務めてきた橋岡がリーグ戦で負傷し、無念の招集外となった事で、瀬古にかかる期待はさらに大きくなった。

「活躍するか、しないかは自分次第」

 彼自身、5月4日のJ1第10節の松本山雅戦で待望のJ1デビューを飾ると、続く第11節の横浜F・マリノス戦でも2試合連続のスタメンフル出場を果たし、両試合ともに完封勝利に貢献。コンディションが上向いた状態でポーランド入りできたことで、その期待はより膨らんでいた。

「試合に出るか、出ないかは自分次第。セレッソでそこは本当に強烈に教えてもらった。U-20W杯でも活躍するか、しないかは自分次第」

 大会直前に行われた流通経済大学との試合後にこう語っていた瀬古。強烈な覚悟を持ってこの大会に臨み、初戦でそれをプレーで示した。

次戦はライネス要するメキシコ。

「CBである以上、たった1つのミスも失点に関わります。今日も(61分のシーンで)サイドチェンジしようとしたボールが完全に奪われていたら、かなり危ういピンチを作られていた。CBとして波があってはいけないですし、もっともっと安定した落ち着いたプレーをしたい。

 CBというポジションは経験を積めば積むほど、味が出てくるものだと思うので、それを積み重ねていきたい」

 そう話す彼の表情は、逞しさと頼もしさを感じさせてくれるものだった。2017年U-17W杯は大会直前に負傷し、出場できなかった。彼にとって初めての世界の大舞台での一戦は、彼に多くの財産を与えた。

「DFリーダーとしての自覚はしっかりと持ってやっていきたいです」

 瀬古歩夢は大きな一歩を踏み出した。守備のマイスターとして、かつエースキラーとして、これから先はさらに彼にかかる責務は増すが、それを背負う覚悟はより深まった。

 すべてはチームのために、そして彼自身のために。

 まずは26日のグループリーグ第2戦、絶対的エースのMFディエゴ・ライネス(ベティス/スペイン)を擁するメキシコ戦に向け、意識を研ぎ澄ましていく。

文=安藤隆人

photograph by Daisuke Nakashima


関連記事

おすすめ情報

Number Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る 動画一覧を見る

記事検索