全米OPは松山英樹を除き予選落ち。国内選手に足りない海外での経験。

全米OPは松山英樹を除き予選落ち。国内選手に足りない海外での経験。

 スーパースターが同じ空間、それも息遣いが分かるほどに近くにいたら、どんな思いがするだろう。

 6月、カリフォルニア州ペブルビーチで行われた全米オープン。大会初日、コース内に設けられたウォーミングアップルームで今平周吾はスタートに備えて汗を流していた。

 隣にいたのはタイガー・ウッズ。親しげに言葉を交わすことはなくとも、その情景はひとつのタイトルを争う、同じフィールドにいることを大いに実感できるシーンに違いない。

 ただ、その数日後、“やっぱり住む世界が違う”と感じてしまうことになったのだろうか。目の前にそびえ立つ高い壁を越えられない、もどかしさを想起させる要素になるのだろうか。

日本勢が軒並み苦戦した全米OP。

 ゲーリー・ウッドランドのメジャー初優勝で幕を閉じた全米オープンで、日本勢は苦しんだ。4人が出場し、決勝ラウンドに進んだのは米ツアーを主戦場にする松山英樹ただひとり。日本での地区予選会を通過して本戦出場を果たした堀川未来夢、市原弘大、そして今平は予選落ちとなった。

 2017年以降のメジャー11大会(今年は7月の全英オープンを残している)で、予選を通過したのが松山だけだった、という試合は5回ある。

 数年前に比べ、欧州ツアーやアジア下部や中国など、海外に出向く日本人選手は増加傾向にあるが、メジャーへの出場権が豊富に用意されている日本ツアーメンバーの大舞台での活躍がどうも限られている。

 日本ツアー選手権森ビル杯でツアー初優勝を飾り、翌週の全米オープンに乗り込んだ堀川はペブルビーチGLを体験するなり、キャリア最高の数日間の余韻に浸る気はさらさらなくなった。これが初めてのメジャーどころか、米国での試合もキャリアで初出場。ラフの芝質の違い、フェアウェイの激しい起伏、海風の重たさに面食らった。

堀川、今平にあった“5打”のギャップ。

 堀川が開幕前日に頭に描いた具体的な数字はどうだったか。

「スコア的にはパープレーで回ったら優勝できるのかなというような……。予選カットラインも7オーバーくらいじゃないかなというイメージがあります」

 その予想は苦々しくも、現実とはかけ離れたものになった。実際の優勝スコアは通算13アンダー。そして2日目終了時点、36ホールの予選カットラインは2オーバーで、予想とは“5ストローク”のギャップがあったことになる。

 堀川は6オーバーで予選落ちした。第一に痛感したのはパワーの差。

「今まではPGAツアー(の中継)を見ても、『気候の条件で、飛距離が出ることもあるんだろう…』なんて考えていたんですけど、実際に一緒に回ってきてみたら、40ヤード、50ヤードと置いていかれる。海外選手はスケールの大きさが違う」と実感した。

 2日間で8オーバーだった今平はメジャー6試合目でまたも決勝ラウンドに進むことができなかった。同学年の堀川の“日本ツアーだったら”カットラインは「7オーバー」という意見に「そんなもんじゃないですかね……」と同意した。

「行けそうな気もするんですけど、普通にやらせてくれない。こっちでは絶対に何回かは“事件”が起こる、みたいな感じがある」

 昨年の日本ツアーの賞金王でさえ、なかなか壁を越えられない。これは彼らのゴルファーとしてのスキルやパワーの差だけが問題なのか――。

松山の元キャディ進藤氏「逆も然り」

 そんな問いにヒントをくれたのが、昨年まで6年にわたって松山とタッグを組んだ進藤大典キャディである。

 松山の前にも多くのトッププロにバッグを任され、日米のコースを歩き尽くした。

 彼は堀川、今平の感じた“5打の差“にうなずきながらも「日本人がアメリカのコースでやるとそうなるでしょうけど、逆も然り、だと思います」と言った。

海外の選手が日本でプレーしたら?

「PGAツアーの選手たちが日本でプレーしたらどうなるか。狭い国内のコースでやったら、カットラインはそんなに変わらないのでは……。変わっても1打、2打というところじゃないですかね。海外の招待選手が日本で必ず勝つかと言えばそうでもない。アダム・スコット選手はひとつの例で、日本オープンでなかなか勝てないでしょう」

 PGAツアーで通算13勝、'13年のマスターズ王者でもあるスコットは2014年以降、日本のナショナルオープンに4回出場して最高位は'15年の7位。'16年には予選落ちもした。

「海外の選手も日本では日本のコースに求められるゴルフをしなくてはいけない」

そう考えれば、日本のプロが必ずしもレベルが低い、とは一概には言えなさそうである。

年々大きくなる国内と海外の差。

 ただし、裏を返せば日米で求められるプレースタイル、メジャーで活躍するためのゴルフは依然として異なるということだ。そしてその違いは年々、際立っているようでもある。

「コースの差はひろがっていると思いますね。米国ではティがどんどん後ろに下がっていく。グリーンを降りて、次のホールのティまで100ヤードも歩かなきゃいけないんですから……(笑)」(進藤キャディ)

 アスリート化はとどまることを知らず、よりパワーが求められる傾向にある海外のコースに対し、日本ではとにかく正確性に特化したプレーをコースが要求し続けている。

 そうであれば、選手の立場では日本からのスポット参戦だけでメジャーで好結果を出すのはより難しい。今平は言う。

「それは自分でも思うんです。やっぱり海外にパッと来て、出る試合がメジャーばかりなので。普通に予選を通ることも難しい大きな試合でいきなり……(上位進出)というのは難しい。“普通の”アメリカの試合に出て、日本とは違う芝や環境に慣れて、それでメジャーに出られたら……」

 日本ツアーでの好結果の“ご褒美”は、メジャーか世界選手権シリーズ(WGC)への出場資格であることがほとんどだ。そのたびに経験の浅い日本人選手が世界最高レベルのプレーヤー揃いのフィールドにおののき、自分たちを過剰に卑下して帰国の途につく。

モデルとなる小平智の米ツアー優勝。

 しかし、欧米のツアーもそんな試合ばかりではない。全部の大会に世界ランク上位者が集うわけではないし、すべてのコースがロングヒッター有利とはいえず、バラエティーに富んでいるのが魅力のひとつ。

 ビッグトーナメントの間隙を縫って、“平場”の大会で経験を積んだ無名選手が突如、大活躍したりする。

 身近なモデルが小平智に違いない。昨年4月、スポット参戦して優勝したRBCヘリテージの会場、ハーバータウンGLは実にコンパクトなつくり。海沿いではあるが、各ホール両サイドが木々に囲まれ、距離を稼いでも、曲がればカンタンにトラブルになるコースだ。

 誰もがあっと驚いた日本人史上5人目の米ツアー制覇は、コースとの相性が噛み合ったからこそ生まれた。そして彼自身が、当時の世界ランク上位者としての出場資格をムダにすることなく、挑戦を続けた結果だ。

 そんな貪欲さを持った選手の登場とともに、メジャーやWGCではない、平場の試合にスポット出場できる“入り口”が国内にあれば……とも思う。

 日本と海外、ガラパゴス化するコース環境への理解が、もうこれ以上ファンを失望させないことにもつながってほしい。

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「ゴルフダイジェスト・オンライン」 http://news.golfdigest.co.jp/

文=桂川洋一

photograph by Getty Images


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