夏の甲子園・史上最強校はどこか?歴代優勝校をデータで比較する。

夏の甲子園・史上最強校はどこか?歴代優勝校をデータで比較する。

「夏の甲子園」最強はどの高校なのか?
その答えを知るために、Number785号(2011年8月25日発売)では、歴代優勝校を得失点差でランキングしました。
この年は3月に東日本大震災があり、福島県大会などに大きな影響が出ました。甲子園で優勝したのは日大三。花巻東の2年生だった大谷翔平も出場していました。
そんな8年前、どの高校が「最強」と認定されたのか、振り返るのも一興ではないでしょうか。
1978年から2010年までのデータをもとに作られたランキングと全文を公開します。
ぜひお楽しみください。

 甲子園史上の最強のチームはどのチームか。これは野球ファンなら一度は考えたことのあるテーマではないだろうか。

 このようなテーマは、正解のない問いかけだからこそ、ファンの1人1人に独自の答が あって面白くなる。それでも、ある程度の客観性をもって考えてみるには、やはりデータの面から見ていく他なさそうだ。

 夏の全国高校野球選手権は1915年から行なわれているが、会場が甲子園になった第10回大会も、出場は19校だった。この時は、甲子園で4回勝てば優勝することができた。

 その後出場校は増え続け、現在の全国49代表になったのは1978(昭和53)年のことだ。49代表の場合、優勝するには5試合か、または6試合を勝つ必要がある。基本的に4試合で優勝できた戦前の大会と、5試合以上勝たなければ優勝できない'78年以降の大会を、同じ土俵で扱うことはやはり無理があるだろう。そこで、ここでは、出場校数が49代表となった'78年以降だけを対象として考えたい。

強さは基本的に得失点差に反映される。

「最強」を判断するための、基準となるデータは何か。1つには得失点差が重要なポイントになる。野球の試合は「より多く得点して、より少なく失点を抑える」ことを目指しているわけだから、チームの強さは、基本的に得失点差に反映される。まずはこの点から、'78年以降の優勝校を見てみたい。

 表は、優勝校33校の中で、甲子園における1試合平均の得失点差が5.0以上のチームをピックアップして、ランクづけしたものである。これがちょうど10チームある。

 1位は'85年のPL学園、2位は'08年の大阪桐蔭、3位が'10年の興南だ。この3校が、1試合平均で得失点差6.0を超えていて、このデータにおける「ビッグ3」である。「やまびこ打線」で初優勝を遂げた'82年の池田などは、猛打で圧勝したイメージだが、得失点差で見ると4.83でそれほど高くない。

大量得点の中身を吟味する。

 ではこれで「最強チーム」の結論が出るかと言うと、やはりそう単純な話にはならない。なぜなら、大量得点をしても、それが、そのチームの攻撃力の正確な反映とは言えないからだ。

 例えば、相手チームのエースが故障して控え投手が投げた場合、実力差以上の点差がつくことはよくある。あるいは相手チームの度重なる失策で、大量得点することもある。そのような試合があると、そこで稼いだ大量得点が、大会トータルの得失点差に大きく影響することになる。したがって、大量得点の中身を吟味しなければ、その得失点差にどの程度意味があるのか、分からないのである。

 そのほかにも、得失点差だけでは測れない、そのチームの「強さ」を判断するために、次のような点を検討してみる必要がある。

(1)優勝するまでに、どのようなチームと対戦して勝ち上がってきたのか。対戦チームのレベルによって、同じ得失点差でも価値が違ってくる。

(2)卒業後、優勝メンバーの中から、何人がプロ野球に入ったか。プロ選手が出たかどうかは、そのチームの、ひと夏限りの結果ではなく、潜在力も含めたチームカを評価する裏付けとなる。

エース桑田、4番・清原が3年生の年。

 結論から言えば、こうした条件から総合的に判断しても、やはり'85年のPL学園は、ずば抜けた存在だ。エース桑田真澄、4番・清原和博が3年生だったこの年のPL学園は、走攻守、すべての面から見て、間違いなく一流であり「史上最強」の称号に値するテームだ。なぜ、そう言えるのか。その他の有カチ ームと比較しながら、詳しく見ていこう。

 '85年のPL学園が、1試合平均8.40という驚異的な得失点差になった最大の理由は、29−7で勝利した初戦の東海大山形戦にある。この時、PL学園は甲子園史上初の毎回得点を達成。22点も点差がつくと、東海大山形の自滅と思われがちだが、そうではなかった。失策は2つあったものの、29失点のうち27点が自責点。四球も7個だけで、32安打と力ずくで奪った29点だったのである。

 逆にPL学図が7失点しているのは、大差がついてエースの桑田が6回1失点で降板、あとは控えの投手が投げたことが理由だ(9回には一塁手の清原が登板して2/3回を投げている)。もう少し桑田が投げていれば、点差はさらに広がったはずで、実際の実力は「8.40」より、さらに上だったと言っていい。

決勝戦で17−0という大差。

 得失点差7.00で2位の'08年・大阪桐蔭は、実力差の出やすい初戦ではなく、決勝(対常葉菊川)で17−0という大差をつけた点は、注目に値する。だがこの決勝は、重要なところで2失策が絡み、自責点は10点だけ。相手の自減という面が強かった。こうした点から見て、大阪桐蔭の得失点差は、PL学園に比肩し得るものではない。

 興味深いのは、'89年の帝京だ。得失点差は5.80で4位タイだが、この時のエース吉岡雄二(巨人3位)と優れた守備陣は、延長10回の決勝を含む全5試合で、1点しか取られていない。平均失点は実に0.20だ。通算46イニングでチーム失策わずか1というのも目を引く。チーム打率.331、チーム長打率.448だから攻撃力はやや劣るものの(PL学園の打率は.401、長打率は.692)守りのよさは歴代でも際立っている。投手も吉岡1人に頼り切りではなく、控え投手が通算5イニングを0点に抑えている。

 同じ程度の得失点差のチームであれば「得点も多いが失点も多いチーム」より、帝京のように「得点は多くないが失点は常に少ないチーム」の方が、安定感がある。'89年の帝京は、そのような守備的チームとして、歴代で最高峰と言っていいだろう。

'06年夏を制した早実も注目に値する。

 この年の帝京は、対戦した相手も、準決勝でエース中川申也(阪神5位)の秋田経法大付、決勝ではエース大越基(ダイエー1位)の仙台育英と、プロ選手を輩出した強敵を倒している。そして帝京からも、吉岡と鹿野浩司(ロッテ5位)という2人の選手がプロ入りしている。この意味でも、'89年の帝京は一定の評価ができるチームだ。

 失点が少なく、対戦相手に有力選手が多かったという意味では、斎藤佑樹(日本ハム1位)を擁して'06年の夏を制した早実も注目に値する。得失点差は5.14で9位に過ぎないが、平均失点は、決勝の引き分け再試合を含む7試合を戦って1.43。対戦相手には、2回戦の大阪桐蔭に中田翔(日本ハム1位)と丸毛謙一(巨人育成8位)、準決勝の鹿児島工業に榎下陽大(日本ハム4位)、そして決勝の駒大苫小牧には田中将大(楽天1位)がいた。

 中田と田中はすでにリーグを代表する選手としてプロで活躍している。レベルの高い戦いを制しての優勝だったと言える。

表には入ってないが、捨てがたいチーム。

 相手のレベルという点では、表には入っていないが、松坂大輔のいた'98年の横浜を忘れることはできない。2回戦・鹿児島実業のエースは杉内俊哉(ダイエー3位)。延長17回を戦ったPL学園からは、田中一徳(横浜1位)、大西宏明(近鉄7位)、田中雅彦(ロッテ4位)、平石洋介(楽天7位)と、4人の野手がプロ入りしている。

 さらに準決勝・明徳義塾のエースは寺本四郎(ロッテ4位)、決勝の京都成章の捕手は吉見太一(西武3位)だった。得失点差で見れば3.67だから「最強候補」から外れてしまうが、内容を見ていくと捨てがたいチームだ。

1つの高校チームから5人がプロ入り。

 しかし、こうした面から見ても、'85年のPL学園は、やはり「史上最強」の条件を満たしている。準々決勝で大会注目の右腕・中山裕章(大洋1位)を擁する高知商業と対戦し て6−3で撃破。PL学園からは、桑田真澄と清原和博以外に、松山秀明(オリックス5位) 、内匠政博(近鉄3位)、 今久留主成幸(大洋4位)がプロ入り。1つの高校チームから5人がプロ入りするというのは例外中の例外だ。

 当時の中村順司監督が「何年も経って『こんな強いチームがあったんだな』と思い返すことになると思う」と語った、まさに最強の名に相応しいチームだったと言える。

文=小川勝

photograph by BUNGEISHUNJU


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