G1後に待っていたクライマックス。鈴木みのるが派手技を解禁した意味。

G1後に待っていたクライマックス。鈴木みのるが派手技を解禁した意味。

 飯伏幸太の初優勝で幕を閉じた今年のG1クライマックス。

 最終戦の8.12日本武道館では、飯伏vs.ジェイ・ホワイトの優勝戦のほか、KENTAが“ソウルメイト”柴田勝頼を裏切ってBULLET CLUB入りという“ヒールターン”を行うなど、サプライズもあったが、ある意味でもっともインパクトを残したのは鈴木みのるだった。

 鈴木は、今年のG1出場メンバーからまさかの落選。昨年はIWGPインターコンチネンタルヘビー級王座を獲得するなど、NEVER王座も含めたタイトル戦線で闘い続けていたにも関わらず、最強を決める闘いから外されたことで、G1開幕前まではその怒りを爆発させていた。

 6.16後楽園大会では試合後にマイクを握り、「なぜ、俺をG1に出さない? そんなに目障りか、そんなに危険か? お前らが大事にしているオカダをこうやって苦しめるからか? (観客に向かって)お前らだって、見たいだろ。俺とG1出場選手の試合を。客の声聞けば分かるだろ! 今すぐ『最強決定戦』なんて、偽りの看板を下ろしやがれ!」と、新日本プロレスと、ファンの両方に対してアジテーションを展開。

2階席まで響いた“生音”。

 しかし、G1開幕後は黙々と前座のタッグマッチに出場し続け、不気味な沈黙を貫いていた。

 その鈴木が口を開いたのは、G1最終戦前日となる8.11武道館大会。試合後のコメントルームで「知ってるか、おまえら? 何かを動かす時、目の前の小さなことをいじっていたらダメなんだ。大きく……動くぞ」と、なにやら予告めいたことを口にした。

 そして迎えたG1最終戦の8.12武道館。鈴木はザック・セイバーJr.と組んで、オカダ・カズチカ&棚橋弘至と対戦。

 この試合で鈴木は、自分の力を大観衆と新日本の上層部に見せつけるかのように、抜群のコンディションで、動きにキレのある闘いを展開。オカダとのエルボー合戦では、武道館の2階席まで“生音”が届くような強烈なエルボーで、オカダをマットに這わせてみせた。

オカダを仕留めた派手技。

 何よりファンを驚かせたのが、フィニッシュへの動きだ。

 鈴木はロープに走ると、オカダに対してメキシコのスター選手ミスティコの得意技ラ・ミスティカの要領でオカダの首を支点に回転。あっという間にバックを奪うと、そのままスリーパーホールドから必殺のゴッチ式パイルドライバーを決めて、IWGP王者から完璧な3カウントフォールを奪ったのだ。

 鈴木みのるといえば、殴る、蹴るといった原始的な攻撃と、若手時代の新日道場から、UWF、パンクラスなどで磨き続けた各種関節技を駆使して闘い、派手な技はほとんど使わないレスラー。

 そんな鈴木が、ここでルチャ・リブレの高等技術を、長年磨き続けた技のように、“自分の技”として鮮やかに使ってオカダを仕留めたことは、ファンに大きなインパクトを与えた。

「みんなが動くのであれば動かない」

 ただし、これは鈴木の“新技”というわけではない。“引き算のプロレス”を信条とする鈴木は、やろうと思えば、空中殺法でもスープレックスでも使えるが、本当に必要な技しか使わない、というこだわりがある。かつて、ぼくが行なったインタビューでは、次のようなことも語っていた。

「いまのプロレスのトレンドとして、オカダ・カズチカ、棚橋弘至、内藤哲也、飯伏幸太らがそうであるように、ヘビー級でありながら、ジュニアの動きだったりルチャの動きができる選手が上にきてる。そこで俺がピンとひらめいたのは、それを徹底的にやらないってこと。みんなが動くのであれば動かない。そうすれば俺が一番目立つから」

 こうしてあえてルチャ的な動きを使ってこなかった鈴木だが、できないわけではない。ここぞ、という必要な時に必要な技として使い、見事にIWGP王者を仕留めて見せたのだ。

武道館の大歓声が証明する闘い。

 試合後、鈴木はマイクを握ると、憎々しげな笑みを浮かべながら、こうアピールし始めた。

「おい、オカダよ。G1にも出させてもらえない俺に負けて、だらしねえなあ! オカダ・カズチカ! そして新日本プロレス! そのIWGPヘビーのベルト、俺によこせ! 新日本プロレスよ、今度はごまかすなよ。今度は逃げるなよ。俺は逃げも隠れもしねえぜ。なんでかっていうと、俺はプロレス界の王だからな」

 この鈴木のマイクに対し、武道館を超満員に埋め尽くしたファンから、大歓声とみのるコールが巻き起こった。普段はブーイングを浴びるヒールである鈴木の発言がこれだけ支持されたのは、その発言に見あう闘いを鈴木がしてきたことの何よりの証明だろう。

ロンドンでの“クライマックス”。

 鈴木が今年、G1に落選したのは、新陳代謝を促進する新日本において、51歳という年齢がネックになったことは想像に難くない。しかし、鈴木はそんな年齢を超越した闘いでファンを納得させた。そして、G1に出場しないことでその存在感をさらに際立たせ、最終戦ですべてをひっくり返してみせたのだ。

 この鈴木のアピールを受けて、オカダ・カズチカvs.鈴木みのるのIWGPヘビー級タイトルマッチが、8月31日(現地時間)イギリス・ロンドンで開催される新日本プロレス『NJPW Royal Quest』で行われることが決定した。

 新日本プロレスの真夏の“クライマックス”は、G1後に待っていたのだ。

文=堀江ガンツ

photograph by Essei Hara


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