東京五輪を内側から撮影する責任感。組織委員会フォトグラファーの仕事。

東京五輪を内側から撮影する責任感。組織委員会フォトグラファーの仕事。

【組織委員会フォトグラファー】
オリンピック・パラリンピックの準備が着々と進む中、当企画では今回から東京2020にかかわる仕事にフォーカス! 東京大会の記録者として8年前の招致活動から携わってきたフォトグラファーとその仕事の具体的な内容に迫る。

 スポーツの大会でメディアが取材できるのは表側のみで、内側へのアクセスは厳しく制限される。そんな中、表も内も自由に行き来できるのがオフィシャルカメラマンだ。東京2020組織委員会フォトグラファーである竹見脩吾は、会見やイベントはもちろん、控え室や内部の会議まで、あらゆるところでシャッターを切っている。

「部屋の中で偉い方にカメラを向けるのは勇気がいりますし、実際怒られたこともあります。会議の議論が白熱し、意見の相違があるときも撮りづらい。でもそこにいるカメラマンは自分だけ。記録を残すという大きな責任を感じて取り組んでいます」

最初は単発、徐々に長期的な視野で。

 東京五輪に関わるようになったきっかけは、活動していたカナダからの帰国後、お台場で行われたトライアスロンを撮影したことだった。1枚の中に選手だけでなくファンの感情も捉えられており、それが東京2020招致委員会の目に止まったのだ。2011年のことだ。

「最初は『明日撮影に行ける?』という感じで単発の依頼だったんですが、1年くらい続いて『招致の勝ち負けが決まるまでやらせてもらえるのかな』と徐々にわかってきた。その前の招致活動は大手フォトエージェンシーが担当していたことは知っていましたが、他者との競争は意識せず、1枚でもいい写真を残すことに集中しました」

 当時は招致活動の真っ只中で、記録だけでなく、プレゼンテーション用の写真を撮ることも大事な役目の1つだった。招致委員会からの依頼は「東京をダイナミックに表現して」といった大枠であった。竹見はポジティブに捉えた。

「任せてくれているんだなと。テーマとしては学生のときの課題に近い部分もある。1日東京を歩いたり、各競技の大会へ行ったりして、1回の撮影で300枚くらいセレクトして提出しました」

最初は、カメラを持たずに話しかける。

 招致活動を記録するための密着もスタートした。意識したのは、人間関係を築くことだった。

「いきなり撮られるとびっくりする人もいる。だから最初はカメラを持たずに話しかけるようにしました。カメラマンであることは伝えるんですけど、大事なのは覚えてもらうこと。コミュニケーションを取ってから撮影するようにしました」

 それによって盟友ができた。招致活動のプレゼンターを務めた北京五輪フェンシング男子フルーレ個人・銀メダリストの太田雄貴だ。

「歳が同じということもあって意気投合し、(2013年9月)ブエノスアイレスのIOC総会で東京開催が決まったときには、雄貴くんが『脩吾だからカメラを向けられても全然嫌な気がしなかった』と言ってくれた。今では雄貴くんが会長を務める日本フェンシング協会に関する撮影も任せてもらっている。国際フェンシング連盟の副会長にもなった彼の背中を見て、自分も世界に出なきゃと刺激を受けています」

「撮られていることをいかに気づかれないか」

 安倍晋三首相のスピーチでも写真が使われ、開催決定の日は竹見にとっても忘れられない1日になった。

「開催決定の瞬間もその場で撮影していて、レンズ越しだったので現実とは思えなかったのですが、部屋に帰ってから実感が湧いてきた。前日までは不安もあったので大逆転の勝利という感じ。この仕事をやってきて、やっぱり一番嬉しかった出来事です」

 あれから約6年、竹見は東京2020組織委員会の活動を記録し続けている。

「携わる人たちの自然な姿を記録したい。撮られていることをいかに気づかれないかが大事です。ただ、1割は影があるようなドラマティックな写真を撮ることを心がけている。ドキッとする写真を1日1枚残していきたいです」

 記録者として、作家として、仲間として、竹見は内側から東京五輪を表現していく。

竹見脩吾たけみ・しゅうご

1985年11月23日、東京都生まれ。写真家の祖父と父を持ち、日本大学芸術学部写真学科卒業後は、カナダ・バンクーバーに渡り現地の新聞社へ。アメリカの通信社「ZUMA PRESS」のフォトグラファーを経て独立。拠点を日本に移し、スポーツ写真撮影を中心に写真教室や講演会の講師としても活動している。'10年から障がい者スポーツを追い続けることをライフワークとし世界各国で撮影。'11年から東京2020招致委員会フォトグラファー、現在は東京2020組織委員会フォトグラファーを務めている。

文=木崎伸也


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