優勝が厳しいカープが目指すもの。セ・リーグ全球団に勝率5割以上!

優勝が厳しいカープが目指すもの。セ・リーグ全球団に勝率5割以上!

 2019年のセ・リーグペナントレースも最終盤を迎えた。王者広島は今年、勝ち続ける難しさを知った。5月に球団記録の月間20勝を挙げるも、大失速した6月から毎月負け越し。4年ぶりに首位の背中が遠のく無力さを味わった。まだ数字上は可能性を残しているとはいえ、4連覇は絶望的な状況にある。2位でのクライマックスシリーズ(以下CS)進出も厳しい状況となったが、周囲は次なる目標と捉えるだろう。

 頂点を目指し、戦ってきた者にとって下方修正された目標へのギアチェンジは容易な作業ではないだろう。

 ただ、その先には明確な目標がある。開幕前、緒方孝市監督をはじめとした首脳陣、そして広島ナインが口にしていた最大の目標は「日本一」だった。CSという制度があるため、たとえ3位に終わっても、日本シリーズに出場する権利はある。'10年の千葉ロッテのようにリーグ3位から日本一となることだって、ある。

首位巨人は広島への負け越しが決定。

 広島はセ・リーグを独走した'17年にCSでDeNAに敗れた過去も持つ。そうなると一部から「CS不要論」なるものも聞かれるが、今年の広島にはそんな雑音をシャットアウトする術がある。

 それはセ・リーグ全球団に勝率5割以上、だ。

 セ・リーグ6球団でまだカード負け越し決定が1つもない球団は広島だけだ。首位巨人はすでに広島戦の負け越しが決まっている。2位DeNAも阪神戦の負け越しが決まっている。広島は現在1つ負け越している阪神にも勝ち越すチャンスがあり、残り1試合を残すDeNAとは、この試合に勝てば勝率5割となる。

 個人的には2位でのCS出場よりも、意味ある目標設定のように感じる。

逆転優勝が厳しくても泰然自若。

 広島の残り試合をただの消化試合にしてはいけない。もしかしたら、4連覇を逃した傷は、3連覇した栄光と達成感が癒やしてくれるかもしれない。ただ、頂点を逃した悔恨や、勝利への飢餓感は、広島の未来を変える。

 昨オフに移籍した丸佳浩(巨人)や引退した新井貴浩氏だけでなく、シーズン中にはケガや不調で田中広輔や中崎翔太が戦列を離れた。ザビエル・バティスタの想定外の離脱もあった。8月31日と9月1日の2位を争うDeNA戦2試合は、30日の試合で自打球を受けた菊池涼介が欠場した。

 スターティングメンバーの顔ぶれは、3連覇した昨年までとは大きく異なる。苦しいチーム状況の中、上位争いを続けた底力はある。逆転優勝が厳しくなった状況でも指揮官は「戦い方は変わらない。目の前の1試合、1試合に集中して戦っていくだけ」と泰然自若を貫いた。

「勝ち負けはどっちに転ぶか分からない」

 シーズン最終盤になっても、選手の状態を見極めながらの起用が続いている。思うように積み重ねられない白星とは対照的に、チームとしてやるべきことはできている。他球団スコアラーも「上位球団の中で一番戦い方がしっかりしているのはカープだと思いますよ。状況に応じてしっかり内野ゴロを打つこともできるし、打席での狙いが見える」と数字に表れない点を評価していた。

 主力を多く欠いた今季、広島の絶対的中心選手となった鈴木誠也も落ち着いた口調でチームを語る。

「やるべきことをやるしかない。やるべきことをできなければ勝てない。小さなミスが命取りになる。そこだけしかない。あまりゴチャゴチャ考えても、できることは少ないですから。シンプルに“ミスしない”ということだけをやって、それで負けたら仕方ない。勝ち負けはどっちに転ぶか分からない。やるべきことをやっていれば(勝利に)転ぶ確率は高くなります」

「凡事徹底」が必要。

 リーグを独走した昨年までもチームに浸透していた凡事徹底が、追う立場にある今季の広島にも求められている。3連覇した過去を逃げ道とするのではなく、3連覇によって得たものを発揮すべきときだろう。

 経験を重ねた昨季までのチームとは違い、今季は高卒1年目の小園海斗や同2年目の遠藤淳志など若手を積極的に起用している。安定性よりも積極性が求められる若手のミスをシーズン中なら許容できても、CSでは小さなミスが勝敗を左右する。それは3年続けてポストシーズンで涙を流した広島が一番分かっていることだろう。残り試合を戦いながら、短期決戦を見据えることも求められる。

ポストシーズンまで試行錯誤を。

 3連覇の王者として、他球団の徹底マークにあいながらも、さまざまな問題やアクシデントを乗り越えてきた。ポストシーズンまでに試行錯誤した末の答えを出せるだろうか。

 広島ナインはCS出場に向けて、口をそろえるように「勝って(日本シリーズに)出られるのであれば、勝って出たい」と言う。

 過去は変えられないが、未来は変えられる。残された戦いで強さを証明し、日本シリーズへ──。広島の19年シーズンの戦いはまだ、終わってはいない。

文=前原淳

photograph by KYODO


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