ペップ、クロップを抑え最優秀監督!プレミアの国産監督はなぜ増えた?

ペップ、クロップを抑え最優秀監督!プレミアの国産監督はなぜ増えた?

 原点回帰へ──。

 今シーズンのプレミアリーグには、ピッチにもベンチにもイングランド人が多い。Number欧州蹴球名鑑のコラムでも書いたが、スリーライオンズの強化を目的に『ホームグロウンルール』が制定されてから9年が経ち、近年はどのクラブでも国産の若手が存在感を放っている。

 一方、国産指揮官の増加は今シーズンの特徴だ。その数は8人。これは昨シーズンの開幕時の倍だ。世界で最も経済的に潤うリーグはこれまで、有能な外国籍の監督をたくさん招き、彼らの手腕に発展を委ねてきたところがある。

 スペイン人のジョゼップ・グアルディオラ、ドイツ人のユルゲン・クロップ、アルゼンチン人のマウリシオ・ポチェッティーノと、今もトップチームの指揮官はイングランド人ではない。だが、彼らの先進的な手法を間近で見てきたホームグロウンの指導者たちが徐々に台頭し、その数が近年で最多となったと言える。

 叩き上げの苦労人、変わり種の智将、リーグ史上最年長のボスなど、それぞれのキャラクターも際立っている。

ペップらを抑えて最優秀監督になった男。

 昨シーズンのチャンピオンシップ(2部リーグ)を2位で終えたシェフィールド・ユナイテッドのクリス・ワイルダーは、セミプロから指導を始め、苦節18年をかけてプレミアリーグに到達。しかもこの51歳の元フルバックは今年、リーグ監督協会から最優秀監督に選出されている。

 この賞はプレミアリーグから4部までの監督が対象となり、昨年はグアルディオラ、一昨年はアントニオ・コンテが受賞。つまりワイルダーは今年、同業者たちからグアルディオラやクロップよりも優れた手腕を見せたと称えられたわけだ。

 プロの選手キャリアを歩み始めた心のクラブ、シェフィールド・Uで見せる斬新なスタイル──攻撃時に3バックの左右が積極的に前の選手を追い越していく──は、今季序盤戦の論点のひとつになっている。

「彼はブライトンで終わる玉じゃない」

 ブライトンの新任監督グレアム・ポッターはリーダーシップと感情知能の修士号を持つ読書家だ。

 この44歳の元U-21イングランド代表は、30歳で現役生活に見切りをつけると、大学に通いながら指導をし、2007年には女子ワールドカップに出場したガーナ女子代表のテクニカル・ディレクターを務めた。

 プロの監督として初めて就任したのは当時、スウェーデンの4部リーグに所属していたエステルスンド。

 ポゼッションをベースとしながら、フレキシブルに対応するモダンなフットボールを標榜し、5年間でチーム史上初の1部に引き上げただけでなく、その後にヨーロッパリーグ予選にまで導いて注目を浴びた。

 そして昨シーズン、スウォンジーに招かれ、2部で10位に終わったものの、今オフに変化を求めていたブライトンが白羽の矢を立てたわけだ。

 集団のオーガナイズはもちろん、選手の内面に語りかける指導で、多くの教え子を魅了し、北欧時代に薫陶を受けた者が、「彼はブライトンで終わる玉じゃない。いずれ世界屈指の指導者になる」と『ガーディアン』紙に語っているほどだ。

 音楽やナイトライフで知られるブライトンの街にふさわしい、面白いフットボールが展開されるだろう。

指導歴43年の72歳、今年も健在。

 第4節を終えた現在、驚きの4位につけるクリスタルパレスは、3シーズン目のロイ・ホジソン監督が統率する。

 指導歴は実に43年、現在72歳の御大は、今年2月のレスター戦で、サー・ボビー・ロブソンの記録を塗り替えてプレミアリーグ最年長監督となった(ちなみに3位はサー・アレックス・ファーガソン)。

 それにしても、ホジソン監督の熱意には恐れ入る。1976年にスウェーデンで指導キャリアを歩み始めた(偶然にもポッター監督と出発地が同じ)彼は、同国のフットボールの近代化を助けたあと、スイスやイタリア、デンマーク、UAE、ノルウェー、フィンランドを渡り歩き、母国ではリバプールなどを指揮。

 2012年からはイングランド代表を率いたが、EURO2012は8強どまり、14年W杯はグループステージ敗退、そしてEURO2016では16強でアイスランドに敗れて厳しい批判に晒された。

 それでも翌年に開幕4連敗を喫したパレスの後任を任され、自身も3連敗スタートとなりながら、最終的に11位に(開幕7連敗からのプレミア残留は史上初)。昨季も手堅く12位でフィニッシュし、今季は第3節の敵地でのマンチェスター・ユナイテッド戦で白星を挙げるなど、上位をかき回している。

キック&ラッシュ一辺倒の時代は終わった。

 ボーンマスの象徴的な若き智将エディー・ハウ、バーンリーを熱く指導するショーン・ダイシ、オーナーとファンが反目し合うニューカッスルで難しい仕事に挑むスティーブ・ブルース、そして昨季の昇格プレーオフの決勝で相見えたアストンビラのディーン・スミスとチェルシーのフランク・ランパード(昨季はダービーを指揮)と、そのほかの面々にもそれぞれの魅力がある。

 イングランド人監督がキック&ラッシュしか知らない時代は終わった。

 今季のプレミアリーグでは、フットボール発祥地出身の8人のボスたちが、古い定評を覆そうとしている。

文=井川洋一

photograph by Getty Images


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