ラグビーW杯出場20カ国の情報を網羅。名鑑づくりは“テストの答案返し”。

ラグビーW杯出場20カ国の情報を網羅。名鑑づくりは“テストの答案返し”。

 まるでテストの答案を返されてるみたいだ――。

 発売中のNumber986号ラグビーW杯プレビュー特集には、別冊付録として32ページのボリュームの選手名鑑「ラグビーワールドカップ2019 出場20チーム完全ガイド」がついている。

 参加20カ国のチーム概要と、各メンバーの紹介文の執筆を担当していた筆者が、朦朧とする意識の中で感じたのが冒頭の思いである。

 制作のスタートの時点で仕事量が膨大になることは予想をしていた。懸念は別のところにあったのだ。

 各国のW杯メンバー発表を待っていては、作業が到底間に合わない――。

 今回のワールドカップの参加20カ国の最終メンバー31人の登録期限は9月2日。別冊付録の内容等の最終チェックを終える校了日は9月4日――登録期限のわずか2日後だったのだ。

 登録期限は9月2日でも、チームによってメンバーを公に発表するタイミングはまちまちである。イングランド代表は最も早い8月12日に、日本代表は8月29日に最終メンバー31人を発表した。アメリカ代表にいたっては、校了日の4日後にあたる9月8日の発表となり、残念ながらこちらは選手の差し替えはできなかった。

31人を事前に予想して紹介を用意。

 どの国がいつメンバーを発表するか分からないが、とにかく始めるしかない。8月の猛暑のなか、執筆はスタートした。

 まずは参加国のメンバー31人を予想し、扱うページ数に応じて最大31人の選手キャプション(紹介文)を用意する。

 そしてメンバー発表がされるたびに随時照らし合わせ、メンバー入りしなかった選手は外し、入った選手は新たにキャプションを書いていく。その繰り返しだった(ちなみに選手名鑑には予想スタメンのフォーメーションもあり、それも修正が必要である)。

予想が外れると仕事が増える。

 予想が外れた分だけ仕事が増えていくことになるので、毎回のメンバー確認は冒頭のように“答案返し”の心境である。

 正解不正解の結果はといえば――予想がすべて当たった国はなく、最大8人の差し替えがサモア代表、トンガ代表、ナミビア代表。最小の差し替えは日本代表の1人という結果。残念ながら優等生とは言えなかった。

 そして続々と発表される各国代表メンバーの中には、驚きの正解(=サプライズ選出)もあった。各国のチーム紹介や注目選手などは選手名鑑をご覧いただくとして、ここでは作業過程で驚かされた選出を取り上げて紹介してみたい。

日本と同プールのサモアには驚きの37歳が。

 まずは、日本代表が入ったプールA。驚きの選出はサモア代表のスタンドオフ、トゥシ・ピシだ。

 サントリーに7季在籍した経験があり、日本のラグビーファンにはお馴染みの選手。スーパーラグビーのサンウルブズでは2016年の参入初年度で一等輝いていた。

 昨秋にサモア代表として活動しており、当初はメンバー入りを予想していた。しかし今年度は環太平洋6カ国によるパシフィック・ネーションズカップ(PNC)に参加せず、英ブリストルから移籍した豊田自動織機でトップリーグカップ2019に参戦していた。

 もう37歳だし、このまま不参加か――。そう踏んでいたため最初の執筆時には予想から外していたので個人的にもサプライズだった。さらには同じくPNCには不参加だった元リコー、ティム・ナナイウィリアムズ(30歳)もいたから二重に驚いた。

 10月5日の日本代表戦にピシは登場するのか。瞬間的な着想を大事にするファンタジスタ系の司令塔だけに、予測不能なプレーが楽しみだ。

オールブラックスも意外な人選。

 次はニュージーランド(NZ)代表と南アフリカ代表という2強が揃ったプールB。意外に思えた選出は、NZ代表“オールブラックス”のSHブラッド・ウェバーだ。

 これまでオールブラックスはSHの3番手争いが長年の話題だった。

 長らく1番手はアーロン・スミス、2番手は追い上げムードのTJ・ペレナラ。果たして3番手は誰になるのか。チーフス(NZ)のタフリオランギか、クルセイダーズ(NZ)のドラモンドか。

 かつてチーフスに在籍した3番手のカーバーロは2017年度に渡仏。チーフスでそのカーバーロの影にいたのがウェバーで、10人制大会での大怪我もあり活躍が先延ばしになり、タフリオランギといった若手の追い上げにあっていた。

 そんな苦労人が今年、南半球4カ国対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」(TRC)のアルゼンチン戦で途中出場。4年ぶりの出場で代表2キャップ目を獲得し、初のW杯出場を掴んだのだ。

 我慢を重ねて掴んだW杯スコッド入り。驚きとともに応援したくなる存在の登場だった。

アルゼンチンではスターが揃って落選。

 続いては“死の組”プールC。イングランド代表やフランス代表がひしめき混戦も予想されるが、アルゼンチン代表のメンバー選考は意外に映った。

 仏スタッドフランセのPRエレーラ、英エクセターのWTBコルデーロ、そして仏トゥーロンのNo.8イサといった、海外を拠点とするスター選手が揃って落選したのだ。

 特に豪快な突進力を誇るイサは、今年のTRCにも2試合に先発。メンバー入りは濃厚と思われたが、指揮官のレデスマHCとアルゼンチン協会は国内組を優先。主力のさらなる国外流出に歯止めをかけた格好だ。

 代わりに8番先発が予想されるデシオ、4大会目のレギサモンらに期待が掛かる。

 今年はアルゼンチン代表候補で構成したジャガーズが、スーパーラグビー参戦4年目で初の決勝進出。次は初優勝という気運さえ高まっており、母国民はプール戦敗退を受け入れられないだろう。もし屈辱を味わえば、今回の選考を疑問視する声が起こりかねない。

 海外組を入れておけば――。そんな批判を封じるためにも、“死の組突破”は至上命題だ。

「ゴルゴジラ」が日本にやってくる。

 最後のプールDでは、今回最も意外な選出があった。「ゴルゴジラ」の異名を持つジョージア代表のマムカ・ゴルゴゼだ。

 前回大会で主将を務めた195cmの大型No.8だが、2017年3月のルーマニア戦で代表戦から退いていた。

 破壊的なパワーでならした35歳は、現在フランス国内1部リーグのトゥーロンでプレー。五郎丸歩も在籍した強豪で、8月開幕の新シーズンで3試合に出場。2試合目の後に代表選出のニュースが駆け巡った。

 しかしゴルゴゼはW杯開幕まで2週間を切った9月7日、リヨン戦にも7番で先発出場している。W杯の開幕2週間前になってもまだフランスでプレーしていた怪物は、果たしてジョージア代表に、W杯日本大会にどんなインパクトをもたらすのだろうか――。

 別冊付録選手名鑑には、ここには到底書き切れない膨大な情報が詰め込まれている。ぜひ観戦のお伴として、手にとってみてほしい。

文=多羅正崇

photograph by Ichisei Hiramatsu


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