13年ぶりバスケW杯制したスペイン。原動力は“レガシー”を伝えること。

13年ぶりバスケW杯制したスペイン。原動力は“レガシー”を伝えること。

「このチームは、新しい黄金世代でしょうか?」

 9月15日に終わったFIBAワールドカップの大会で、アルゼンチン代表に何度も投げかけられた質問だった。

 2002年のインディアナポリス世界選手権で準優勝し、2004年のアテネ五輪で優勝、2008年の北京五輪でも銅メダルだったアルゼンチンは、天才マヌ・ジノビリを中心とする『黄金世代』の選手たちから成るチームで、しばらく世界の強豪であり続けた。

 今回は、その『黄金世代』チームの若手だったルイス・スコラが39歳のベテランとして率いる、新しいチームだ。

末っ子たちがリーダーとなって。

 同じことは、スペインにも言える。

 2006年世界選手権で優勝し、2008年の北京五輪、2012年のロンドン五輪で準優勝、2016年のリオ五輪で銅メダルと、やはり『黄金世代』と呼ばれる選手たちが中心となって、世界のトップを争ってきた。

 今回はパウ・ガソルを故障で欠く中、13年前の優勝では末っ子的な存在だったマルク・ガソルがベテランのリーダーとなり、やはり当時を知るルディ・フェルナンデスと共にチームを率い、北京五輪時に17歳の若きホープとして代表デビューしたばかりだったリッキー・ルビオも、ベテラン・ポイントガードとなって活躍した。

 ワールドカップ決勝は、そんな両チームの対戦となった。

 大会前に優勝候補としてあげられていたセルビアもアメリカも準々決勝で敗れてメダルを取れず、アメリカを倒したフランスは、セルビアを倒したアルゼンチンに破れた。世界は、それだけ混沌としていた。

 そして、だからこそ面白く、エキサイティングな大会となった。

 もっとも、決勝戦は意外なほどあっけなく決着がついた。

「これがバスケットボールだ」

 試合開始直後から7連続得点でリードを取ったスペインは、2Q開始早々にリードを二桁に広げると、試合の流れを支配。アルゼンチンも何度か追い上げを試みたが、スペインのディフェンス相手に苦戦し、サイズでゴール下を制され、後半は点差が一桁になることもないまま、95−75で試合終了を迎えた。

 セルビア、フランスという強敵を次々と倒して勝ち上がりながら、優勝を前に敗れたアルゼンチンのセルヒオ・エルナンデスHCは、試合後、疲労やサイズ不足といった言い訳をきっぱり否定し、「これがバスケットボールだ」と言った。

「相手のチームよりいい試合を戦えば勝つ。きょうのスペインはベストチームだった」

“強いスペイン”の基準。

 優勝後のミックスゾーンで、マルク・ガソルは「これ以上ないほど完璧なディフェンスだったのではないか」との称賛に対して、「2〜3分ほどはとてもいいディフェンスができていたと思う。終盤に彼らのペースでやられ、早いテンポの試合をされてしまったけれど」と、まるで自画自賛したら、胸にかけたメダルが消えてしまうかのような、真面目なコメントで応えた。勝っても負けても、真摯に試合に向かう。それは、彼の一番の才能かもしれない。

 決勝で20点、3アシスト、7リバウンドをあげ、大会通して平均16.4点、6.0アシストでチームを牽引し、大会MVPを受賞したルビオは、チームの強さの鍵を、こう語った。

「僕らは最も才能あるチームではなかったし、一番大きなチームでもなかった。でも、どのチームよりも大きなハートを持っていた。今夜も、そして大会を通してずっと、それを見せてきた」

 ガソルは今のチームについて、「以前のように経験豊富な選手が10人、12人いるわけではない」と、黄金世代のチームと比較した。

「でも、みんながチームを助けようという気持ちで戦っていた」

 決勝で活躍したウィリーとフアンチョのエルナンゴメス兄弟ら、次の世代の若手も伸びてきている。黄金世代を見て育ってきた彼らにとって、“強いスペイン”が基準であり、当たり前のことになりつつある。

次の世代に引き継ぐためのW杯。

 2009年から12年、そして2015年から現在までスペイン代表を率いてきたイタリア人コーチのセルジオ・スカリオロHCは言う。

「勝つことで、さらに勝ち続けることができるようになる。大会で準々決勝、準決勝、決勝を戦えば、勝ち方がわかるようになる。そういった試合を多く経験してきた選手たちが5、6人いる。彼らがすばらしいリーダーとなってやってきた」

 それこそが、自分が黄金世代から学び、次の世代に引き継がなくてはいけないことなのだと、ガソルは言う。だからこそ、トロント・ラプターズの一員として6月まで戦い、念願のNBA優勝を果たしたとき、それだけで満足せず、迷うことなく代表として戦った。

「この夏に代表に参加することは、肉体的には簡単ではなかった。でも、それだけの価値があることだ。代表活動に対する思いを伝えていくことはそれだけ大事なことなんだ。そういった価値観は何年もの間、僕より年配の選手たちにとっても重要なことだった。今は僕らが、そういったレガシーを次の世代に伝える番だ。才能ではなく、コミットメント、思いの強さなんだ」

 混沌のなかを勝ち抜き、再び世界の頂点に立ったスペイン――。その秘訣は、世代を超えて受け継がれた勝者のハートだった。

文=宮地陽子

photograph by Getty Images


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