父が心配した守備で見せた「確実性」。ドラ1太田椋の強さとしなやかさ。

父が心配した守備で見せた「確実性」。ドラ1太田椋の強さとしなやかさ。

 9月14日、オリックスのドラフト1位ルーキー、太田椋が一軍デビューを果たした。

 試合前の練習では、親子対決も実現した。いや、正確には対決ではないのだが……。

 太田の父、暁さんはオリックスの一軍で打撃投手を務めている。普段は外国人選手や主軸の選手に投げることが多く、一軍に初昇格したばかりの選手が、打撃練習で暁さんの球を打つのは異例だが、練習順を決める下山真二打撃コーチの粋なはからいにより、中学生の時以来の、親子での打撃練習が実現した。

「打ちやすかった」と笑顔で振り返る息子とは対照的に、父は、「僕のほうが緊張しまくりでした」と顔を引きつらせた。

 それでも、「楽しく投げられた。幸せですね。本当にありがとうございますという感じです。実力的にはまだまだですけど、いい経験をさせてもらっていると思います」としみじみと語った。

一軍合流が決まった状況での骨折。

「今シーズンは一軍に来ると思っていなかった」と暁さんは言う。開幕前、太田が不運な怪我に見舞われ、大きく出遅れたからだ。

 天理高校からドラフト1位で今年入団した太田は、早くから評価され、3月のオープン戦で一軍に合流することが決まった。ところが、合流する前日の8日、二軍の教育リーグ・ソフトバンク戦で千賀滉大から右腕に死球を受けた。右尺骨骨幹部の骨折で全治は3カ月と診断され、手術、入院を余儀なくされた。

 しかし回復は早く、約3カ月後の6月4日、ウエスタン・リーグのソフトバンク戦で実戦に復帰した。

 怪我をする前よりも下半身は明らかに太くなっており、バットを握れない期間も、充実したトレーニングを行なっていたことがうかがえた。

息子の一軍デビューに「ドキドキ」

 その後は二軍で、主に1番または3番・遊撃手で試合に出続け.267の打率を残し、本塁打も5本放った。そしてチームが9連敗と苦しんでいた9月、一軍に呼ばれた。

 息子の一軍デビューの日、暁さんは一日中緊張しっぱなしだったと言う。「ドキドキで、心臓が止まるかな、というほどでした」と、試合はバックネット裏から見守った。

 打席よりも、守備の時間のほうが心臓に悪かった。

「バッティングのほうは、そう簡単に打てるもんじゃないとわかっているので。でも守備のほうは、ミスしてしまったら……というのがあって」

 しかし太田本人は、初打席は緊張したが、守備では浮き足立つことはなかったと振り返った。

 太田はショートの守備に自信とこだわりを持っている。入団会見の時から、アピールポイントを聞かれて、「守備の確実性」と答えていた。

動きにムダがなく、肩も強い。

 その確実性の土台は、高校時代の冬場の練習にある。

 その1つが、太田たちが「たまコロ」と呼んでいた練習だ。地面にボールを転がし、それを低い姿勢でひたすら捕球する練習を、毎日1時間行った。

 太田を担当した谷口悦司スカウトは、同学年の遊撃手、根尾昂(中日)や小園海斗(広島)と比較して、こう語っていた。

「181cmという体格は魅力。大型のショートはなかなか出てこないので。3人の中では一番大きくて、それでいて動きがしなやかで、捕ってからの動きにムダがなく、肩も強い。アウトにできる打球を確実にアウトにする選手」

 谷口スカウトは、「派手さはないけれど」と話していたが、9月14日からの東北楽天との3連戦で先発出場した太田が見せたショートの守備は、見る者を惹きつけるものがあった。

 三遊間を抜けそうな打球を、深い位置で逆シングルで捕球すると、両足で踏ん張って、ノーステップで一塁へロングスロー。センター前に抜けそうな打球に追いつくと、今度は流れのままサイドスローですばやく送球。強さとしなやかさを見せつけた。

 右腕を骨折してからのリハビリ期間に行ったトレーニングにより、下半身により粘りが出たと太田は言う。

緻密な守備、打撃にも期待。

 太田の守備位置は深めだ。相手打者によって変わるが、アンツーカの外の、外野の芝の部分で構えていることが多い。それは守備範囲の広さと肩への自信の表れでもある。

「相手の打者の足の速さなどによりますけど、基本的に右の強打者の場合は、後ろめから行っています」

 対楽天で言えば、浅村栄斗やゼラス・ウィーラー、ジャバリ・ブラッシュといった右の強打者は、引っ張る傾向があり、三遊間への打球が多いため、深めに守った。一方、俊足の打者の場合は少し前に出て構え、できるだけ速く打球を処理する。そうした一軍の打者に対する守備戦略にも余裕を持って対応していた。

 太田に安打が出れば、21世紀生まれの選手の初安打ということになるのだが、12打席(9月18日現在)に立ってまだ安打は出ていない。

 それでも、打席での落ち着きや、ダイナミックかつ緻密な守備は、今後への大きな期待を抱かせてくれる。

文=米虫紀子

photograph by Kyodo News


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