菊池涼介と山田哲人の守備数値比較。2019年、鉄壁の二塁手はどっちだ。

菊池涼介と山田哲人の守備数値比較。2019年、鉄壁の二塁手はどっちだ。

 レギュラーシーズンが間もなく終了する。今年もいろいろなタイトルが決まり、いろんなアワードも決定する。私が毎年、微妙な思いを抱いているのが「ゴールデン・グラブ賞」、つまり守備のベストナインだ。

「ポジションごとに一番守備がうまい選手を選べばいいんだろ?」というかもしれないが、「守備がうまい」とは何なのか、その定義は一筋縄ではいかない。

 守備の記録としては、守備率、「エラーしない率」というのがある。ただこれだけで守備の優劣がすべてわかるかと言えば、そうではない。

 大昔、川上哲治という大打者は、一塁守備で“無理目の送球”は捕らなかったとの評判があった。だから守備率は高かったが、他の内野手や投手には不評だったという。つまり「エラーしない」は「守備がうまい」ではなく「捕れる球しか捕らない」ことであるかもしれないのだ。

 また現代の野球では、内野手でも守備率は95%以上になる。失策は極めて少ない。このレベルで守備率98%と99%を比較することに決定的な意味はなく、参考程度だ。

 むしろ際立って守備率が悪い選手は問題あり、となる。今季で言えば、阪神の大山悠輔の守備率は.948(9月18日現在)。セで規定試合数以上を守っている他の2人は.970台なのだから、これは改善の余地があるだろう。

守備範囲の広さを数値化したRF。

 守備の指標としてはもう1つ、RF(レンジ・ファクター)というものが知られ始めている。

 これは補殺(送球してアウトにした数)と刺殺(直接タッチしたり、飛球を捕ったりしてアウトにした数)の合計を、出場試合数で割った数字だ。

 1試合当たり、いくつのアウトを取ったかという数字(厳密には守備イニング数で割って9を掛けて算出)だ。これは守備機会の多さ、つまり守備範囲の広さを示す数字である。なお「UZR」など、野手の動きをひとつひとつ追いかけるセイバーメトリクス系の指標も出ているが、一般では入手できないので、ここでは触れない。

年齢を重ねた名手は守備率が向上。

 これは守備率とは対照的に、エラーを恐れず無理目の打球でも追いかける選手の数字が良くなる。

 ざっくり言えば、ベーシックな守備の評価は、守備率とRFで判断すると分かりやすい。

 一般的に若い内野手はRFの数値が良くて、ベテランになるにつれて守備率が高めになる。

 今季、DeNAの一塁手、ホセ・ロペスは1632守備機会無失策というNPB記録を作った。MLBではイチローのチームメイトで二塁を守ることが多かったが、NPBではゴロさばきが巧みで捕球もうまい好守の一塁手で、今年36歳のベテランだ。

 またヤクルトの宮本慎也が2011年、三塁手の守備率.997というセ・リーグ記録を樹立したのも40歳の時だった。

 年とともに打球に対する予測精度や捕球技術が向上し、エラーしなくなるのだ。

2016年の菊池は両方とも凄かった。

 これに対して、守備範囲の記録は若い選手が作る。

 広島の菊池涼介は、2013年にRF「6.23」を記録した。これは、二塁手としてはNPB史上屈指の記録だ。当時23歳の菊池はゴールデングラブに選ばれたものの、広島ファンの評価は必ずしも高くなかった。菊池は18個も失策し、守備率が.980だったからだ。

 しかし菊池は年とともに失策数が少なくなり、2016年にはわずか「4」。守備率は.995に、なおかつRFは5.90と高い数字をキープしていた。

 以前のコラムでも書いたが、翌2017年のWBCで、菊池は異能の守備力でMLBの注目も集めた。一躍菊池は「日本一の名二塁手」ということになった。

 前置きが長くて誠に恐縮だが、ここからが本題である。

「菊池涼介は、今も一番いい二塁手なのか?」

 確かに2013年から菊池はセのゴールデングラブを6年連続で獲得している。でも、今も一番なのか?

ここ5年の菊池と山田の数値比較。

 実は、菊池には同一リーグにライバルがいる。ヤクルトの山田哲人だ。トリプルスリーでおなじみの大打者だ。年齢は今年29歳の菊池に対して、27歳。双方まだまだ若いが、2人の守備率とRFの数字は、近年、接近してきている。

<2014年>
菊池 RF6.21 守備率.987
山田 RF5.69 守備率.984
<2015年>
菊池 RF5.65 守備率.988
山田 RF5.66 守備率.989
<2016年>
菊池 RF5.90 守備率.995
山田 RF5.42 守備率.993
<2017年>
菊池 RF4.99 守備率.993
山田 RF5.20 守備率.988
<2018年>
菊池 RF5.15 守備率.996
山田 RF5.64 守備率.984
<2019年>※9月18日時点
菊池 RF4.70 守備率.984
山田 RF5.04 守備率.988

 山田は2015年には菊池と拮抗していたが、2014、2016年には菊池とはっきり差があった。
しかしそれ以降は、山田の方がRFで菊池をはっきり上回っているうえに、守備率でもよい年が多い。

 数字だけを見る限りでは、菊池涼介はここ近年、守備範囲が狭くなり、山田に逆転されているうえに守備の精度でも追いつかれている、ということになる。

印象に残る「見た目」と「印象」。

 ちなみに守備の数字も、打撃や投球成績と同様、毎年変動する。

 自チームの投手のタイプや、他の内野手の守備範囲、リーグの投打の力関係などが作用するからだ。だから年ごとの数字の比較にはそれほど意味はなく、同じ年の同一リーグの選手との比較ができる程度だ。

 私はここ2年ほど、ゴールデングラブは山田哲人でもいいんじゃないかと思ってきたが、今年こそそうなるのか、注目している。

 ただし、ゴールデングラブ賞は記者投票で決まる。もちろん、記者各位は数字も参照するだろうが、それ以上に「見た目」「印象」も重要だ。

「気がつけばそこにいる」山田。

 私はこの春の東京ドームでのMLB開幕戦、イチローの引退シリーズの前のエキシビションゲームで、アスレチックスの遊撃手、マーカス・セミエンの華麗なグラブさばきに見とれた。

 ひょいとモノでも捨てるようにボールをつまんで軽く一塁送球するのを「なんて格好いいんだ」とみていたが、試合が始まったらぽろぽろやってがっかりした。

 グラブさばきが派手で洗練されていたり、動きが大きかったりすると記者の印象は良くなる。菊池は無理目の球を追いかけて、ぎりぎりで追いついて捕球するという「見せ場」をよく作る。山田哲人は「気がつけばそこにいる」という印象で、派手さは菊池に比べればない。

 しかも山田は「打」では文句なしの「二塁手のベストナイン」だ。「打は山田なんだから、守備の方は菊池でいいんじゃないか」みたいな空気があるのかもしれない。

出場試合数で菊池、山田の争い。

 ちなみに今季、規定試合数以上出ている二塁手はもう2人いる。9月18日時点での数字で4人を比較すると以下の通りだ。

菊池涼介(広)
134試合 RF4.70 守備率.984
山田哲人(ヤ)
136試合 RF5.04 守備率.988
糸原健斗(神)
117試合 RF4.76 守備率.995
阿部寿樹(中)
109試合 RF4.63 守備率.994

 守備率だけなら糸原や阿部の方が上だ。しかしこの2人は二塁での出場試合数で菊池、山田に大きく見劣りする。やはり守備のアワードはフル出場近く守った選手に与えるのが本筋だ。今季も山田と菊池の争いだろう。

 広島4連覇の目はなくなった。昨年までの売り物だった「タナキクマル」も、マルが巨人に行って、タナは棚落ちして二軍へ。キクも少し元気がない。

 例えば、今年はゴールデングラブを山田哲人に譲って、それを発奮材料に来年、またすごい守備を見せる、という筋書きもなくはないだろう。

文=広尾晃

photograph by Kyodo News


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