王者マンC、序盤戦でまさかの2敗。グアルディオラはどう腕を見せる?

王者マンC、序盤戦でまさかの2敗。グアルディオラはどう腕を見せる?

 10月の代表ウィーク前にプレミアリーグで最大の話題となったのは、マンチェスター・シティの敗戦だった。

 5日と6日に行われた今季8節では、トッテナムとマンチェスター・ユナイテッドが、それぞれブライトンとニューカッスルに敗戦していた。しかし、リバプールと「2強」を成すマンCが、ホームでウルブズに敗れた(0−2)衝撃は大きかった。

 ボール支配、ひいては試合自体の支配を身上とするペップ・グアルディオラが指揮するマンCは、昨年12月後半からエティハド・スタジアムで負け知らずだった。ホームでの完封負けは、昨年5月以来。加えて今回はアウェイでの第5節ノリッチ戦(2−3)に続き、早くも今季2敗目を喫したことになる。

 開幕8連勝で首位に立つリバプールとの勝ち点差は8ポイントに拡大した。「10月でも、ポイントを落とせば優勝の行方が騒がれる」とは、ユルゲン・クロップ監督の発言だが、ライバルの指揮官が半ば呆れ気味に指摘した通り、メディアは「2位マンCが'92年からのプレミア史上最大となる差をつけられた」と騒いだ。

 それらの報道は、「グアルディオラ軍のアキレス腱、見つけたり」といった調子。より具体的に言えば、ニコラス・オタメンディという弱点が露呈されたことになる。

センターバックに負傷者続出。

 マンCの最終ラインはアイメリック・ラポルテを、8月末に膝の怪我で失った。選手兼監督として祖国ベルギーのアンデルレヒトへ去ったバンサン・コンパニに代わる存在の復帰は、早くても来年2月という重傷だ。

 オタメンディとジョン・ストーンズのコンビは、ノリッチ戦の時点で解説者のガリー・ネビルに「このコンビが続くなら優勝はあり得ない」と酷評されたほどである。

 その直後にストーンズも大腿の怪我で離脱。急造CBとなったMFフェルナンジーニョが「現マンCのベストDF」と讃えられる一方で、残されたオタメンディはジェイミー・キャラガーに「簡単に身を投げ、アッサリかわされる癖は直らない」と見捨てられる有様である。

 ウルブズ戦、ラウール・ヒメネスの足下にひれ伏すかのような格好で先制点を奪われた場面を目の当たりにすれば、元リバプールDFのオタメンディ評に異論を唱えることも難しい。

攻めて攻めまくるスタイルは不変。

 守備の問題解決が火急の課題とする報道からは、このままでは二頭立てのタイトルレースすら成り立たないのではないかという不安も感じ取れた。とはいえ、今季開幕前の国内には、2強の構図さえリーグの魅力という観点からは好ましくないという声があった。

 個人的にも「マンCのアキレス腱、大いに結構」という心境だ。

 二頭立ての優勝争いでも、リバプールがわずか1敗でも優勝できなかった昨季のようなハイレベルな争いであれば見応えは十分。マンCが、このままズルズル引き離されるとは思えない。今季も最後まで手に汗握るデッドヒートが楽しめると信じている。その根拠は、マンCの看板であり、グアルディオラの本質とも言うべき、攻めて、攻めて、攻めまくり、貪欲に得点を狙い続ける攻撃にある。

 とはいえウルブズ戦は精彩を欠いた。前線と中盤の出来を評価すれば、3トップも中盤の3センターも、10点満点中6点の及第点が限界だろう。グアルディオラの「バッド・デイ」という試合後のコメントを鵜呑みにしているわけではないが、この日は「たまたま出来が悪かった」と感じられた。

 完璧主義者として知られる監督に率いられて、持てる能力も向上心もトップレベルの顔ぶれが揃うチームとはいえ、マンCの選手たちも人間だ。

リーグ戦無得点は29試合ぶり!

 なにせリーグ戦での無得点は29試合ぶりである。5日前には、クラブ史上初の優勝を意識しているだろうCLで、ディナモ・ザグレブ相手のホームゲームに勝利し(2−0)、グループステージで2連勝スタートを決めたばかりでもあった。

 また5-3-2システムで守備に頭数を割いたウルブズは、格上との対戦では速攻に徹して結果を出すスペシャリストとも言える。

 そのウルブスに右にならえでマンC戦では引いて守ってカウンターを狙うチームが続出するのかというと、総体的にポゼッション志向が強まっているリーグの傾向を考えれば、そうとは言い難い。格下に当たる他のチームが、ヌーノ・エスピリト・サント率いるウルブズと同じレベルで、戦前のプランを90分間遂行する組織力と精神力を備えてはいないだろう。

デブライネが戻ってくれば……。

 ウルブズ戦は、ケビン・デブライネをハムストリングの怪我で欠いてもいた。芸術的なアシスト能力を持つチャンスメイカーがいれば、フィールド選手8名による敵の防御壁を前にした25m程度の距離からでも、相手の隙間をすり抜けるようなスルーパスや、ゴールエリア手前に届く危険なクロスが得点につながっていたのではないだろうか?

 デブライネが不在でも、前半にラヒーム・スターリングのミドルが相手GKに横っ跳びセーブを強い、後半にはダビド・シルバのFKがバーを叩き、ボックス内のベルナルド・シウバのシュートがブロックにあうなど、チャンスがあったことも事実だ。

 デブライネはCLに続く欠場だったが、リーグ前に取り沙汰されていなかった。その背景には、CB事情はさることながら、開幕からのゴールラッシュもあった。

 前節までの計27得点は、国内トップリーグの開幕7試合消化時点で1894年以来のハイスコアである。試合当日の『サンデー・タイムズ』紙を見ても、餌食になりかねないウルブズの身を案じるプレビューがあったほどである。

リバプールが王座を奪い取るか?

 情け容赦のないマンCの決定力と得点意欲。それは第6節で8失点を喫したワトフォードのゴールを守るベン・フォスターが「前半を0−5で終えられて良かった」と振り返ったほど凄まじい。

 開幕戦でウェストハムを寄せつけずに(5−0)スタートを切った時点では、他チームのファンの間ではやっかみ半分で、中立的なメディアでも冗談半分で、「強すぎてつまらない」とまで言われていた。

 リバプールのクロップ監督は最終節まで優勝を争った昨季、諦めずに戦う自軍を映画『ロッキー』シリーズの主人公に例えていた。マンCは、その4作目に登場した対戦相手のイワン・ドラゴのようだ。ドラゴが通常の2倍の破壊力を持つパンチ連発で相手を叩き潰すボクサーなら、マンCはゴール量産で相手を蹴散らしてきたチームだ。

 4得点以上を奪っての勝利は、前述のワトフォード戦が3年前からのグアルディオラ体制下で43試合目。しかも、格下を打ちのめすだけではなく、リバプール、チェルシー、トッテナムとの対戦でも過去に大勝を収めている。

 マンCに「アキレス腱」が認められたことで、「ロッキー・チーム」ことリバプールが、マンCのリーグ3連覇を阻止する可能性が増した。開幕当初とは違い、リバプールが優勝の最右翼とみなされるようになり、二頭立てのレースでも序盤戦にして第1弾のツイストが加わった。

グアルディオラの策や、いかに。

 識者も感服しきった様子のグアルディオラも、新たに腕の見せ所という興味が生まれた。新任地での成績が芳しくないコンパニが解任されたなら、CBとして呼び戻すとの噂もある。

 来年1月の移籍市場で即戦力購入の見方も根強いが、指揮官の発言を信じるなら、開幕前にハリー・マグワイア(マンU)の獲得を断念した今季は、冬も史上最高額を要するような即戦力に手を出す余裕はないことになる。

ストーンズは、早ければ今月の代表ウィーク明けに復帰できる可能性が浮上しているが、「後方のリスク」と呼ばれているオタメンディの扱いはどうするのか? ウルブズ戦直後には、MF陣による最終ラインの「プロテクト不足」を口にしている。

 中盤中央のロドリが盾になり切れていなかったのも事実だが、オタメンディとストーンズのCBコンビが復活すれば、SBが攻め上がるチームに必要な後方スペースのカバーに長けたフェルナンジーニョをボランチに戻すのか?

 それとも「ロドリはCBもこなせるし、起用も考えた」と語る指揮官は、攻撃面で上々の滑り出しを見せていた今季新MFを最終ラインで試し、フェルナンジーニョに中盤中央を任せるのか? 机上の理論では3バックもあり得るなかグアルディオラが、どのように改善を図るのかが注目される。

昨季は勝ち点差7をひっくり返した。

 一方、攻撃では代表ウィーク明けにデブライネ復帰が見込まれている。キーマンが一時戦列を離れる前のマンCには、大きな不安はなかった。

 第7節のエバートン戦、デブライネのトレードマークのクロスから、主砲セルヒオ・アグエロのベンチ温存で先発起用されたガブリエル・ジェズスが先制点を奪取した。ハーフタイム前に追いつかれたものの、終盤に、移籍1年目の昨季は静かだったリヤド・マフレズと、今季目標の年間計30得点台に迫るペースのスターリングがネットを揺らし、結果的には順当勝ちを納めていた(3−1)。

 点の取れる本来のマンCは、昨季後半戦で首位リバプールとの7ポイント差を跳ね返して優勝に漕ぎ着けた実績も持つ。当時と現在では、リバプールが持つ自信のレベルが違うという意見もあるだろうが、今季のマンCには、まだ30試合が残されているという違いもある。

11月には待望の直接対決が。

 リバプールのしぶとさはグアルディオラ自らも「ポイントを落とさない」と認めるところだが、例えば第8節レスター戦(2−1)の終了間際に得たPKによる決勝点は、判定を覆さなかったVAR(ビデオ判定)の判断ミスとも言われているように、判定が味方した部分もある。

 逆に、第2節トッテナム戦(2-2)で後半ロスタイムの3点目を「ノーゴール」となるなど、VARに泣かされたマンCと、シーズン途中で判定を巡る運が入れ替わるかもしれない。

 11月には、まずはアウェイだがリバプールとの直接対決もやって来る。

 筆者は8月のコラムで触れたように、最終的にはリバプールが、プレミアでは初となる30年ぶりのリーグ優勝という願いを叶えるシーズンになるのではないかと予想している。だが、それは序盤戦10月からの首位独走などではなく、昨季に勝るとも劣らない接戦の末にある悲願達成だ。

『ロッキー4』は、最終ラウンドでロッキーがドラゴにノックアウト勝ちを収めるという劇的なエンディングで締めくくられる。

 プレミアのドラゴに当たるマンCも、失点を招く「アキレス腱」の痛みなど何のその、点を取って取って、取りまくる強さに物を言わせて「ロッキー・チーム」を追い詰めて、来年5月までの“マッチレース”で我々にスリルを味わわせてくれると見る。

文=山中忍

photograph by Uniphoto Press


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