楽天の新監督は日本野球の革命家。「常識を度外視したシフトを考えた」

楽天の新監督は日本野球の革命家。「常識を度外視したシフトを考えた」

 日本シリーズが終わり、ストーブリーグがにわかに活気付いてきた。

 FAなどを含めて今年は実力者たちが顔を揃え、世間の注目を浴びている。

 その一方、例年より静かだったのが監督人事だ。

 来季から新監督を迎えるのは、セ・リーグ最下位のヤクルト、4連覇を逃した広島、パ・リーグの3位に終わった楽天の計3球団。そしてすべてが内部昇格と、やや静かな動きとなっている。優勝候補の1つに挙げられながら下位に沈んだ球団もあったが、それぞれの決断がどういう結果をもたらすかも来季の楽しみの1つである。

 監督人事の中で、密かに注目しているのが楽天の三木肇新監督だ。

 来季から指揮をとる広島の佐々岡真司氏やヤクルトの高津臣吾氏と比べれば知名度は落ちるものの、すでにプロで10年以上の指導キャリアを誇る腕利きの人物だ。

 筆者と同じ大阪の上宮高校の出身で学年も1つ違いということで個人的には注目してきたのだが、コーチになってからの彼の言動やコーチング哲学には目を引く要素がいくつもあった。

セオリーは信じすぎると辛くなる。

 三木を一言で言うと、革新的な指導者である。

 思い返すのは、2015年にセ・リーグ覇者になった時に聞いた、ディフェンスにおけるポジショニングについての考え方が斬新だったことだ。

 この頃のヤクルトは、投手はもちろん、守備面でも新たな常識をチームに浸透させていた時期で、特に内野守備を担当していたのが三木だった。

 三木がよく話していたのは「セオリーに囚われない新たな発想を持つ」ことだった。野球界では当たり前とされる前提も疑って、角度を変えて考えるということである。

「野球には長い歴史があって、こういう風にした方がいいというセオリーが多くありますけど、セオリーありきになることで逆に自分が苦しくなることもあると思ったんです。なので、常識を度外視したシフト、ポジショニングや作戦を考えるようになりました」

ランナー一塁で長打警戒は正しいか。

 世界中で野球は日々進化しているのに、日本の野球界だけに生き残っているセオリーは存在する。

 例えば、無死ニ、三塁での前進守備や、ランナー一塁で一、三塁線を締める守備シフトなどだ。

 三木がこんな話をしていた。

「ランナーが一塁にいるときに一、三塁線を締めるという考え方がありますよね。長打をケアーするためのセオリーだと思いますけど、それは本当に正しいんかなと考えるようになりました。長打を防ぐためのシフトではありますけど、一塁に走者がいるのでセカンドとショートは二塁寄りに守りますよね。つまり一、二塁間と三遊間がめちゃくちゃ空くので、ヒットゾーンが広くなっている。

 これをやめて一、三塁線を開けてヒットゾーンを狭めるやり方もあると思う。これはセオリーから離れることで思いついたものでした」

左右非対称な珍しいシフト。

 また、実際の試合で見たものでは、1死ニ、三塁での珍しいシフトに感銘を受けたものだ。

 それはある試合でのことだ。

 1死ニ、三塁のケースでは、得点差が大きくない限り日本のチームは内野が前進守備を敷くことが多い。だがこの時のヤクルトは、セカンドの山田哲人が前進する一方で、遊撃手の大引啓次は定位置を守っていたのだ。

 これが三木の発案によるものだった。

「ランナー二、三塁での前進守備は現役時代から疑問に思っていました。二、三塁で守備側が定位置だったら、二塁ランナーはリードを大きく取れない。しかし前進守備をすると、ニ塁走者はノーマークになる。リードが大きくとれて走塁がしやすいんですよね。日本ハムのファームコーチ時代に、そのことに気づいていろいろ試してみました」

革新的な男が新しい風を吹き込むか。

 近年、メジャーリーグではデータを活用したポジショニングが普及しており、今でこそ、ポジショニングの考え方は多様化されたところはあるが、三木の場合は、それ以前からセオリーに立ち向かい、新しいことを見つけ出そうとしてきたのだ。

 データは何かを決定するための重要なファクターとなっているが、決断する側の腹の括り方が同時に必要だということも忘れてはいけない。

 革新的な男が楽天の長となって、どんな野球を取り入れていくのかは非常に楽しみと言える。

「多角的なところからものを見て、いろんな野球ができるチームにしたい」

 監督就任会見で、三木はそう語っていた。

 新しい風をパ・リーグに吹き込んでくれるかもしれない。

文=氏原英明

photograph by Kyodo News


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