プレミア12、不調から復活の3安打!坂本勇人が天敵の残影を振り切った。

プレミア12、不調から復活の3安打!坂本勇人が天敵の残影を振り切った。

 振り向いた視線の先には仲間たちの歓喜の姿があった。

「ベンチでめっちゃ、みんなが喜んでくれていたんで……」

 こうはにかんだのは今大会、不振に苦しんできた坂本勇人内野手(巨人)だった。

「プレミア12」スーパーラウンド第3戦のメキシコ戦。2回1死一、二塁だった。メキシコの2番手、フェリペ・ゴンサレス投手の高めのツーシームを強引に左前へと運んだ。この坂本の大会初のタイムリー安打にベンチのボルテージが一気に沸騰する。その様子に応えて坂本も、一塁上で思わず両手の拳を突き上げ喜びを爆発させた。

 前夜にアメリカに苦杯を喫して後が無くなった侍ジャパン。勝負のメキシコ戦を前に稲葉篤紀監督が、まず動いた。

 本大会では2番に座り打線を牽引してきた菊池涼介内野手(広島)が、首の違和感を訴えてこの日の出場はドクターストップ。そのアクシデントを逆手にとって大幅な打線の組み替えを断行したのだ。

シーズン中に慣れ親しんだ打順で。

 4番の鈴木誠也外野手(広島)だけはそのままに、3番に前日3打点の浅村栄斗内野手(楽天)と5番に外崎修汰内野手(西武)を前後に起用。1番には山田哲人内野手(ヤクルト)を抜擢して、2番に入れたのがこの大会、スランプに苦しむ坂本だったのだ。

「シーズン中にも2番を打っていて慣れ親しんだ打順できっかけをつかんで欲しかった」

 そんな指揮官の願いを受けて立った1回の第1打席。先発のオラシオ・ラミレス投手の初球のツーシームを強引に引っ掛けた打球が、メキシコ内野陣のシフトの間を抜けて左前へと転がった。

「あまり分からない投手なので早めに仕掛けていこうと。たまたまシフトを敷いていてくれていたから。(シフトがなければ)ただのショートゴロでした」

「迷惑かけていたんでホッとしました」

 二塁手が二塁ベースの後ろに回って、それに合わせて遊撃手が三遊間へと移動。その2人の間をちょうど割って転がっていった安打だったが、この1本が坂本にとってもチームにとっても大きな一打となった。

 2死から鈴木、外崎、そして6番に回った近藤健介外野手の3連打で奪った先制の2点が、大一番に臨んだチームに勇気を与えてくれた。

「内容的には良くないけど、ヒットのランプがつくと打者としては凄く気持ち的に楽になる。迷惑かけていたんでホッとしました」

 6回の第4打席でも三遊間を破る安打を記録して3安打の猛打賞。試合後の坂本は何より結果が出たことに安堵の表情を見せながらこう語った。

ポストシーズンで突然のスランプに陥る。

 今季は自己最多の40ホーマーを放ってMVPの最有力候補となる活躍を見せたが、ポストシーズンで突然のスランプに陥った。

 ソフトバンクとの日本シリーズでは13打数で安打はわずかに1本。4連敗の“戦犯”の1人と揶揄された。しかもこの不振は、シリーズだけでは終わらない、底無しの泥沼だったのである。

「勇人はクライマックスシリーズ(CS)の途中からずっと状態が悪かった」

 巨人・原辰徳監督がこう指摘したように、実はこの不振の原因は、CSのある打席から始まっていたと思える節がある。

 その打席とは阪神・青柳晃洋投手と対戦したCSファイナルステージ第3戦の第2打席だった。

青柳は坂本にとって“天敵”。

 場面は1点をリードされた3回無死一、二塁。ここでベンチから出されたサインは送りバントだったが、坂本の変調はこのバントから見えていた。

 普段なら一発で決めるはずのバントを2度も失敗する。しかもボール1つを挟んだ4球目は青柳の外角に流れるスライダーに全くタイミングが合わず、何とかファウルにするのが精一杯だった。

 そして最後はやはり外のスライダーに完全に形を崩されての投ゴロに倒れた。

 バッターにとって苦手なだけではなく、対戦することでバッティングの形そのものを狂わされるような“天敵”がいるとすれば、青柳は坂本にとってまさにその“天敵”である。

 青柳と対戦する以前のCS2試合では3安打2打点としっかり自分のタイミングでボールを捉えていた。右足にしっかり体重を乗せて、ボールを呼びこみ右軸で回転できていたのが、この対戦から体が前に出て崩れるようになってしまった。

修正する時間がない戦いが続いた。

 シーズン中も青柳と対戦すると、その後はしばらくタイミングが狂って打撃の状態がおかしくなると嘆くことがあった。ただ、長いシーズンであれば、ある程度の打席を捨てて修正に専念できる時間はある。

 しかし坂本を待っていたのはCSから日本シリーズ、そしてこの「プレミア12」と続いた短期決戦の連続だった。どの打席も結果を求められ、いくら状態が悪くても打席を捨てて修正する時間はない戦いが続いた。

「プレミア12」が始まってからも、何とか練習で自分のタイミングを取り戻そうと様々な努力を繰り返してきたが、肉体的な疲れも不調に拍車をかけて、そう簡単には元に戻らないままに打席に立ち続けてきていた。ずっと不振を引きずったままに打席に立ち続けてきた。

 その結果が豪州戦のスタメン落ちであり、前日のアメリカ戦の3三振だったのである。

どん底からの復活劇。

 坂本にとってはこの「プレミア12」は飛躍へのきっかけとなった大会だった。

 前回の2015年の第1回大会に侍ジャパンの一員として参加。そこでチームメートだったDeNA・筒香嘉智外野手や西武・秋山翔吾外野手の打撃論を聞いて、右軸での回転という発想を手に入れた。それが本格化への階段を登り始めるきっかけとなった。

 そんな自身の中ではメモリアルな大会で経験したどん底と、そこからの復活劇。だが、本人はまだまだ納得はしていない。

「(前に出るので)ステップの幅だったりとかを意識しています。内容は良くなかったですけど、ファウルにならなかった、空振りにならなかったというのを収穫として、何とかどんなヒットでもいいから打てるようにしたいですね」

 チームはこの坂本の復活劇であげた3点を、先発・今永昇太(DeNA)から甲斐野央(ソフトバンク)、山本由伸(オリックス)、そして山崎康晃(DeNA)の各投手を繋いだ完璧リレーで守り切って、決勝進出へと大きく前進する白星を手にした。

「このチームで試合ができるのも韓国戦と決勝の2試合だけ。悔いのないように全員で結束力をもって戦っていく」

 試合後の会見でこう語ったのは稲葉監督だ。

 苦しい中でも何とか繋いできた世界一への道。1人、また1人と役者も揃い、ゴールは見えてきている。

文=鷲田康

photograph by Nanae Suzuki


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