リバプール中盤が“弱点”から強みに。マンCを圧倒した機能性とキーマン。

リバプール中盤が“弱点”から強みに。マンCを圧倒した機能性とキーマン。

 サッカーの世界では、「中盤を制する者が戦いを制する」と言われる。

 プレミアリーグでも顕著なトレンドからすれば、「高い位置でボールを奪う者が〜」となるのかもしれない。ユルゲン・クロップが率いるリバプールが、11月10日の第12節・マンチェスター・シティ戦(3−1)後に「リーグ優勝に向けて大きく前進」と言われた理由は、やはり中盤の力が認められたからに違いない。

 最大のライバルとの勝ち点差は9ポイントとなった。だが、まだシーズンは3分の1を終えたに過ぎない。レスターとチェルシーに抜かれて2位から4位にまで落ちた相手は、守護神エデルソンが怪我で欠場。ただでさえ最終ラインの柱アイメリック・ラポルテが長期欠場中のマンCは「攻めどき」だったと言える。

 とはいえリバプールは、今季リーグ12試合でパス本数(7639本)と得点数(35点)で20チーム中最多の攻撃集団を、ベルナルド・シウバの78分の1点に抑えた。

マンCを上回る中盤の機能性。

 90分間で相手のチャンスの芽を摘みつつ、チャンスに絡み続けたリバプールの中盤は、残るリーグ戦26試合で首位を譲ることはないと思わせるほどの、機能性とバランスの良さを披露した。

 ファビーニョの左右に、ジョルジニオ・ワイナルドゥムとジョーダン・ヘンダーソンを配した3センターは、運動量から創造性まで、換言すればプレッシングからゴールまで、「勝者」と呼ばれるチームの中盤に必要な全要素を備えていると思わせた。

 中盤が弱点とされていた(強いて言えば、だが)リバプールが、マンCを完全に上回ったのである。

 クロップ軍団の看板は、モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネの3トップであることは間違いない。昨季のCL優勝で証明したように、スピード、テクニック、フィニッシュ、リンクアップなど、どれをとっても欧州随一の前線トリオだ。

 昨季はそこにフルシーズン1年目のビルヒル・ファンダイク、足元も確かなGKアリソンが加わり、後方の安定度も増した。それにひきかえ中盤は単なるローテーションの域を超え、4-3-3システムを好む指揮官が、チーム最強の3センターの組み合わせを決めかねているように感じられた。

ファビーニョがアンカーで本領。

 同時に、レギュラーと控え組の実力差が否めない前線に故障者が出た場合、それを補う創造力と得点力に乏しい中盤が、選手層の厚さもリーグ最高とされるマンCとのタイトルレースの中で不安要素と目されていた。

 昨季はジェイムズ・ミルナーの5得点がMF陣で最多。それも、得意のPKによる3点を含んでいる。今夏の移籍市場で即戦力が加入したわけでもない。にもかかわらず、中盤に関する不安が解消された要因は2つある。

 1つは、ファビーニョの本領発揮だ。試合日の『サンデー・タイムズ』紙には、マンCのフェルナンジーニョに代わる「現プレミア最高のアンカーマン」との見出しが躍った。

 また翌朝の『デイリー・テレグラフ』紙で「スティーブン・ジェラードの穴を埋めた」と評されたセンターハーフは、移籍1年目だった昨季の終盤から存在感を見せ始めた。中盤の底で冷静に目を光らせ、タックルもパスも的を射ているメトロノーム役は、ジェラードのようにキラーパスを狙うタイプではないが、迅速かつ確実な繋ぎで貢献を見せた。

 好例はチーム2点目のシーン。ファビーニョが右SBトレント・アレクサンダー・アーノルドに預けたボールは、左SBアンドリュー・ロバートソンへとスイッチされ、絶好のクロスとなってサラーのヘディングを呼び込んだ。

 このブラジル人MFは、いざとなれば自らも上がってゴールを狙う意欲と技術も備えている。開始早々の6分には、自軍ペナルティエリアでの攻守入れ替わりから22秒という速攻を自ら締め括って先制点を奪った。20m強の位置からゴール左隅に叩き込んだミドルシュートは、クラウディオ・ブラボではなく、シティの第1GKエデルソンだったとしてもセーブは不可能だっただろう。

ヘンダーソンの進化が大きい!

 もう1つの理由は、攻撃的役割を担ったヘンダーソンの存在だ。

 個人的には、こちらの進化の方がインパクトが大きいと思っている。

 ファビーニョがアンカーに定着できたのも、在籍9年目の現キャプテンと指揮官の話し合いが背景にあるからだ。片時も足を休めないプレッシング、身を挺してのタックルと「フォア・ザ・チーム」の精神を体現するヘンダーソンは、中盤中央はファビーニョが最適だと認めたうえで、自身の持ち味である攻撃寄りの起用をクロップに直談判したのだ。

デビュー時はサイドハーフ起用。

 それは、自身と代わったファビーニョの投入を境にチームパフォーマンスが改善された、昨季32節トッテナム戦後のことだ。以降リバプールは、今節と同じ3センターで臨んだリーグ戦計10試合で、3トップのレギュラー揃い踏みは6試合ながら、9勝1分けという結果を残している。

 そうした過程でヘンダーソンではなく、より攻撃的MFであるアレックス・オクスレイド・チェンバレンやナビ・ケイタの先発を望む一部サポーターの声も減ってきたように思われる。

 開幕のノリッジ戦(4−1)から右インサイドハーフで先発した今季のヘンダーソンは、サイドハーフばりに外に開いて攻撃を仕掛ける姿も増えてきた。

 例えば、10節のトッテナム戦(2−1)。攻撃的な相手の左SBダニー・ローズを牽制する狙いもあっただろうが、後半から右アウトサイドに頻出したヘンダーソンは攻め上がってクロスを狙うだけでなく、自らもボックス内へ侵入した。浮き球をハーフボレーで捉えて、約4年ぶりとなるホームでのゴールで逆転勝利への口火を切っている。

 思えば、筆者が初めて生で見たヘンダーソンも中盤右サイドにいた。11年前の11月、18歳だったサンダーランドユース出身のMFは、後半から右ウインガーのスティード・マルブランクに代わってピッチに立ち、プレミアデビューを果たしたのだった。ちなみにこの試合はチェルシーMFフランク・ランパード(現監督)がプレミア通算100得点目をヘディングで決めた一戦でもある。

ワイナルドゥムも絡むと威力抜群。

 それだけに、タッチライン際を駆け上がるプレーにもぎこちなさは見られない。後半からサイドでのボールタッチが増えたマンC戦では、相手MFのイルカイ・ギュンドガンを置き去りにすると、右サイドをえぐるようにしてファーポストへクロスを送った。

 ヘッドでの3点目につなげたマネへのアシストは、BBCのハイライト番組『マッチ・オブ・ザ・デー』で解説を務めたアラン・シアラーが、スピードに乗ったクロスを「好物」とした元CFらしく、「このクロスときたら、もう! FWにとっては夢のようだ!」と、興奮で声を裏返らせるほどの「絶品」だった。

 守備面でのハードワークも健在だ。アタッキングサードでのプレッシングに、SBが攻め上がる際のカバーと、余念がない。特に後者の仕事は、ロバートソンとアレクサンダー・アーノルドの両SBが、攻撃的なだけではなくアシスト供給源となっている中で、インサイドハーフの基本業務である。それは、その気になれば巧みなドリブルや軽快なワンツーでタイトなエリアをすり抜ける能力を持つ、ワイナルドゥムにも当てはまる仕事だ。

 ハイレベルな3センターの威力は、マンC戦の45分にも確認できた。敵陣内での相手のスローインにヘンダーソンが猛ダッシュして誘ったビルドアップ失敗から、ワイナルドゥムがボールを奪い、パスを受けたフィルミーノがサラーのシュートをお膳立てしたプレーだ。エリア付近中央でミドルを狙えたのは、揃って動き直したワイナルドゥムとヘンダーソンが、合わせて3名のマークを引きつけていたからだった。

ペップは敗戦後も強気の発言だが。

 計2ゴールの3トップ以上に、計1ゴール1アシストの3センターの活躍で勝利したリバプールは、開幕からのリーグ戦無敗を12試合へと伸ばした。昨季と同じ連続無敗だが、昨季はホームでのマンC戦がスコアレスドローに終わっており、4ポイント多い、勝ち点34で首位を快走している。

 クロップ監督は「来年の5月に首位でなければ意味がない」として、30年ぶりのリーグ優勝へはやる周囲を抑えようとしている。しかし今季終了時に悲願が達成される信憑性は一段と高まった。

 一方で4位から追い上げることになったマンCのペップ・グアルディオラ監督は、「我々は2連覇中の王者に相応しい力を示した」と強気な発言をしている。

 だがそれは1失点目の直前、PKをもらえなかった判定への不満に加え、相手を崩すことも抑えることもできなかった無念が言わせたように感じられた。

 試合後に残った印象は、リバプールは今季の優勝争いで「勝者」となるに相応しい中盤の力を示した、ということである。

文=山中忍

photograph by Getty Images


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