同姓なのに、競技によって選手の呼称が変わる。今回、ふと気になったのが中日ドラゴンズに新加入したルイス・ゴンサレス投手である。

 ドミニカ共和国出身、この1月で28歳になる。メジャー経験はないが、2A、3Aを主戦場とした昨シーズン、10年に及ぶマイナーリーグ通算、このウインターリーグのいずれも投球イニングを上回る奪三振を誇る左のパワーピッチャーだ。昨シーズン、最優秀中継ぎに輝いたジョエリー・ロドリゲスの退団により空いたセットアッパーを、ゴンサレスに任せる。それが現状のチームプランである。

 少しオーバーな表現になるが、このゴンサレスは日本野球界の「前例」を打ち破った選手ということになる。Luis Gonzalez。中南米系ではポピュラーな姓と名だ。広く知られているように日本プロ野球には登録名があり、一般的にはアルファベットの本名をカタカナに変換して登録される。それとは別にスコアボード表記名もあり、字数に制限があるため日本人なら姓だけを表記するのが一般的だ。

ゴン「ザ」レスの間違えでは?

 Gonzalez姓で来日し、登録された選手は9人目。過去8名はすべて「ゴンザレス」だった。

Tony Gonzalez(1972年、広島)
31試合、打率.297、0本塁打、4打点

Dan Gonzales(1981年、阪神)
9試合、打率.174、1本塁打、3打点。
※米国出身だからか、この選手だけ末尾がZではなくS。

Denny Gonzalez(1991〜92年、巨人)
41試合、打率.248、9本塁打、27打点)

Paul Gonzalez(1999年、オリックス)
8試合、打率.188、1本塁打、1打点

Dicky Gonzalez(2004〜13年、ヤクルト、巨人、ロッテ)
143試合、45勝41敗、防御率3.55
※プエルトリコ出身の右投手で「ディッキー」の愛称でファンにも親しまれた。巨人時代の2009年に15勝2敗と大活躍。

Luis Gonzalez(2007〜08年、巨人)
57試合、打率.283、5本塁打、29打点
※ベネズエラ出身で、ドーピング違反が発覚し、解雇された。

Luis Gonzalez(2011年、横浜)
2試合、1勝1敗、防御率12.86

Enrique Gonzalez(2012年、西武)
16試合、2勝5敗、3セーブ、防御率7.04

 Luisだけでも3人目。よくある名前なのはよくわかったが、日本に来れば「ゴンザレス」だったのに今回は「ゴンサレス」。ひょっとして間違えたのか? 濁点がない理由を中日球団の桂川昇通訳に尋ねた。勝利後のヒーローインタビューでファンにはおなじみの屈託ない笑顔で答えてくれた。

「オレの名前はゴンサレスだ」

「本人に電話で聞いてみたんですよ。こちらでの登録はどうする?って。ゴンサレスで頼むということでした。英語の発音だとゴンザレスになるんでしょうか。読み方の違いですね」

 濁点の有無の違いは、この説明に表れている。彼らの母国語であるスペイン語の発音は「ゴンサレス」である。ところが、野球選手の多くはメジャーリーグを経由する。英語での発音は「ゴンザレス」と濁る。アメリカ経由で来日するから「ゴンザレス」となるのだろう。しかし、今回は先例にとらわれることなく、桂川通訳が労をいとわず本人の意向を確かめた。すると「オレの名前はゴンサレスだ」と濁らず発音する。よって日本球界初の「ゴンサレス」と表記される選手が誕生した。

 もちろん、登録名は本名やフルネームである必要はない。

 例えば2010、12年に巨人でプレーした「エドガー」もGonzalez姓だ。通算157試合で打率.253、16本塁打、63打点の成績を残した。MLBで2014年に打点王を獲得し、ゴールドグラブ賞も4度受賞したエイドリアンの実兄としても知られている。

 ファーストネームで登録したエドガーに対し、同じく巨人に2007年に在籍したGeremi Gonzalezの登録名「GG」は略称、通称タイプである。理由は「ゴンザレス」ではLuisとかぶり、「ジェレミー」の名もパウエルとかぶっており、混同を避けるため。ただ、ファーストネームは「Geremi」でパウエルの「Jeremy」とは違う。スペイン語での発音は「ヘレミー」に近い。1勝2敗、防御率6.52という成績で1年限りで退団したこの右投手は、翌'08年に落雷により不運な最期を遂げている。

英語風か、スペイン語風か。

 表音文字のカタカナは、外来語を可能な限り忠実に表記する。『アルプスの少女ハイジ』で、ハイジの幼なじみは「ペーター」だが、イギリス生まれの物語は『ピーターパン』となる。スポーツ界でも同様で、ボクシングのスーパースター、ロマゴン(ニカラグア人)は日本でも「ローマン・ゴンサレス」と表記され、サッカースペイン代表のスーパースターでレアル・マドリーで長らくプレーしたストライカーも「ラウール・ゴンサレス」と報道されてきた。

 競技の違いが英語風の発音かスペイン語風の発音かで分かれ、濁点の有無につながる。 日本球界初となる「ゴンサレス」は、1月下旬に来日し、沖縄キャンプに合流する。マウンドでも点が無い、無失点の快投を与田監督は望んでいることだろう。

文=小西斗真

photograph by AFLO