サッカー、バレーボール、バスケットボール、ラグビー……etc。高校の部活の全国大会が多数繰り広げられるウィンターシーズン。多くの父兄や学校の仲間達が応援に駆けつけるなか、吹奏楽部も会場で演奏しているのをご存知だろうか。

 吹奏楽の応援というと、春夏の甲子園で演奏しているのはよく知られていると思うが、筆者も毎回現地に足を運んでは、音楽の力で選手を後押しする吹奏楽部の熱演に魅せられている。しかし、春夏だけではなく、実は冬の全国高等学校サッカー選手権大会や春高バレーにも吹奏楽部が駆けつけているのだ。

 筆者も、地元の北海道に帰省せずに東京で過ごす年末年始には、応援観たさにサッカーやバレーの全国大会に足を運んでいるのだが、数年前に初めて観戦した際、野球応援とはひと味違う魅力に思わず興味津々となった。

野球応援とサッカー、バレーの違い。

 野球応援の場合は、攻撃時のみ演奏が許され、守備時は演奏してはいけないという決まりがある。

 ほかにも、「打者がバッターボックスに立ってからでないと音を出してはいけない」「和太鼓は使用禁止」など、細かいルールが決まっているが、サッカーやバレーボールの応援にはほとんどルールがない。そのため、応援の仕方は学校によってかなり異なり、この統一感のなさがなんともいえない雑多な魅力を醸し出しているのだ。

 野球の場合は、「選手1人に1曲」という応援スタイルが目立ち、「ヒットが出たら吹く曲」「チャンスの時に吹く曲」といったルールのある学校も多い。

 ところが、サッカーやバレーボールのように攻守が入りみだれる競技の場合、現地で観ていて「演奏ルールも作りようがないのだろうな」と感じた。

 試合中演奏し続けている学校もあるが、さすがにずっと吹きっぱなしというのは唇がバテて現実的には不可能なため、吹奏楽部は休み休み演奏しているという印象だ。

高校サッカーはJクラブの曲が多い?

 サッカーやバレーボールには、野球のように「攻撃時のみ演奏」というルールが当てはまらないため、両校同時に演奏することがほとんど。

 たとえば、今年筆者が足を運んだサッカー選手権大会決勝戦の場合、青森山田の『ロッキーのテーマ』と、静岡学園の『どか〜ん』(真心ブラザーズ)が同時に鳴り響いたと思ったら、青森山田はドラムのきいたロックな『第九』、オペラ『アイーダ』の『凱旋行進曲』、東京ヴェルディがチャントとして使用する『ジ・エンターテイナー』と、次々に切り替わっていく。

 対する静岡学園は、サンフレッチェ広島が使う『Saturday Night』や、柏レイソルや川崎フロンターレが使う『グリーングリーン』、松本山雅や大分トリニータの『SEE OFF』といった具合だ。

 当然だが、Jリーグで使われている曲が多いのが、サッカー応援と野球応援の大きな違いだろう。

 高校野球応援でも高い人気を誇るロックバンド・BRAHMANの『SEE OFF』は、松本山雅や大分トリニータも使用している影響で高校サッカー界でも人気だが、両チームの『止まらねぇ 俺たち○○(地名)暴れろ 荒れ狂え』という歌詞を使う野球部が甲子園でも増えており、野球応援にもサッカー応援の影響が大きくなっているように感じている。

 青森山田の場合は、サッカー部のみで応援歌を歌い、吹奏楽部は演奏しない場面も多かった。

 吹奏楽部顧問の高橋太郎氏に聞いたところ、「野球応援には野球部の、サッカー応援にはサッカー部のそれぞれの想いがある。普段サッカー部は自分たちで歌って応援することが多いので、彼らのいつもの応援をバックアップするという気持ちで演奏しています」とのことだった。

4試合同時進行の春高バレーはカオス!

 このように、2校同時に演奏するサッカー応援に輪をかけてカオスなのが、春高バレーの応援だ。

 1回戦や2回戦は、4面で4試合同時に行われるため、当然ながらアリーナの中に8校がいることになる。吹奏楽部の応援は全校が来るわけではないが、筆者が観戦した時は、半分くらいの学校が来ていることが多く、4面となると4〜5校の吹奏楽部がいる。同じ空間ですべての吹奏楽部が同時に演奏するため、四方八方から音が入り乱れてまさにカオス状態。

 サッカー同様、細かい演奏ルールが決まっているわけではないため、得点時のみ演奏する学校もあれば、タイムアウト時のみに演奏する学校や、試合中ずっと応援曲を吹き続けている学校もある。

 点が入るたびに、高校野球でもおなじみの天理高校の『ファンファーレ』を吹く学校もあるのだが、野球と違って頻繁に点が入るため、しょっちゅうファンファーレが鳴り響いているといった具合だ。

過去に習志野は、あの曲を……。

 応援曲は、野球と共通の曲も多く、筆者が観戦した今年の準決勝では、共栄学園が『サウスポー』や『狙いうち』など、高校野球でもおなじみの曲を演奏。甲子園でも人気の高い千葉ロッテマリーンズの応援曲はバレー応援でも健在で、共栄学園が千葉ロッテマリーンズの『モンキーターン』を演奏していた。

 金蘭会は、阪神タイガースの『チャンス襲来』を演奏。さすが大阪代表。プロ野球なのか高校野球なのかバレーボールなのか、音を聞いただけでは一瞬脳内が混乱しそうになる。

 このように、野球応援と共通の曲が多いながらも、『アタックNo.1』など、バレーボールに関係のある曲を演奏する学校も少なくない。

 準決勝以降は、ハーフタイム時にコートで吹奏楽部やバトントワリング部のショーが行われるのも楽しみのひとつ。今年の準決勝では、バトントワリングの強豪・杉並学院が一糸乱れぬ見事なパフォーマンスを繰り広げ、試合に花を添えていた。

 過去には、名門・習志野高校吹奏楽部がコートで演奏したこともあり、大会スポンサーであるジャパネットのテーマソングを演奏し、会場を大いに盛り上げたという。

 吹奏楽部出身としては、「のんびりしたい年末年始に応援に駆けつけて、えらいなあ……」と率直に思うが、以前、全国常連のとあるサッカー強豪校の吹奏楽部顧問に聞いたところ、「それが年末年始の恒例行事のような感じなので、我々も生徒たちも父兄も、学校の仲間たちを応援するのを楽しみにしていますよ」と言っていたのが印象的だった。

 近年、甲子園での応援が注目されている吹奏楽部だが、春夏だけではなく、冬もこんなに応援しているのだ。

文=梅津有希子

photograph by Hiromi Ishii