今場所はなんと、幕尻の徳勝龍が優勝したね。

 体が動いてるし、腰の重さが際立っていた。右に左に動いて相撲の流れもよく、しかも“重い”。突き落としも巧いんだよね。

 もうひとりの平幕である正代も最後まで優勝争いをしてくれて、場所を盛り上げてくれたな。

 先場所あたりから太ってきているように見えたけど、速い相撲を取ってもいた。立ち合いに体が反っているのをいつも指摘されていたけれど、小さい頃からあの形で相撲を取っているはずだから、直せと言っても直らないんだろうね。

 逆に、誰にも真似できない。やれと言ってもできないヨ(笑)。ただ、腰を悪くしなければいいな、と思うんだ。

 2横綱が休場し、上位陣がだらしないなか、貴景勝は大関として優勝争いに絡み続けて頑張っていたけれど、きっとまだケガが治りきってないと見た。来場所までに完璧に治るように期待してるよ。

「大関のプレッシャーってすごいもの」

 豪栄道が引退か……。お疲れ様。

 今場所は自分の相撲を取り切れていなかった。ケガが多かったのもあるけれど、もともと大関としての力が足りなかったとも思う。

 33場所在位して、9回目のカド番だったでしょ?

 優勝した徳勝龍と同じ33歳。大関にならずに下の番付だったらもっと長く取れたお相撲さんだと思うんだ。それだけ大関のプレッシャーってすごいもので、無理もしてしまうんだね。

「豪栄道は大関としてのプライドもあるのだと思う」

 最近の大関たちを見ていると、「大関の価値って何?」と僕はわからなくなってくるんだ。平幕より強くて、横綱を目指すのが“大関”という地位なはず。「相撲が好きだから、愛してるから、大関を落ちても続けたい」との思いもわかる。

 今でいえば琴奨菊や栃ノ心、かつてはハワイの先輩の小錦や、部屋の弟弟子だった雅山(現二子山親方)がそうだったしね。

 今回、豪栄道のようにスッパリ潔く引退するのは、もちろん長く大関を務めてやり切った思いがあるからこそで、大関としてのプライドもあるのだと思う。そこは豪栄道らしくもあるかな。

「遠藤は巧さにくわえて“圧”も出てきた」

 昨年の栃ノ心もそうだったけれど、今場所は高安が大関復帰を目指した結果、6勝9敗か……。

 見た感じ、まだ腰が治ってないね。

 立ち合いでかち上げに行く時も体が反っていて高いし、あれじゃ腰に負担も掛かるよ。ここは1回、きちっと腰を治して出直した方がいいと思う。

 モンゴル人は、もともと骨も太くて足腰が強いと聞いている。高安は日本とフィリピンとのハーフだけど、どうなんだろう。あまり体をデカくすると体の負担が大きいから気をつけないとね。僕たちハワイ人は、もともと体がデカいからなぁ。

 10勝して大関取りが繋がった朝乃山。

 自分の形になっても負けてしまう相撲が何番かあって、そこはもう、頭よりも体で覚えるしかないの。まだ、体が自分の形を覚えきってないんだ。

 かつて「右を取ったら敵なし!」の魁皇(現浅香山親方)や高見盛(現振分親方)みたいに、自分の型を体が覚えるまでに磨いてほしいな。

 2横綱から金星を挙げ、殊勲賞を受賞した遠藤。

 巧さにくわえて“圧”も出てきたね。

 前半は「優勝もあるかも?」との勢いだったけれど、後半にスタミナ切れ。まだスタミナが足りないな。15日間、最後までペースを保つのがいかに大変かってことでもあるんだ。

「みんな揃って前頭から頑張ればいい(笑)」

 みんな場所前の稽古だけガンガンやって、本場所が始まると四股を践む程度らしいけれど、せっかく場所前に調子がよくても、2週間も何もしないと、だんだんと体のキレが悪くなっていくんだ。

 だから、僕らの時代は場所中でも申し合い稽古をガンガンやっていた。

 後半戦になって疲れてきたら、それほど番数は取らずに幕下相手にと、調整しながらもやっていたんだよ。

 さて、両横綱が休場し、上位陣も振るわなかった今場所。もう横綱・大関はいらないくらいじゃないか? みんな揃って前頭から頑張ればいい(笑)。

 上位陣の代わりに平幕のお相撲さんたちが頑張って盛り上げてくれ、最後まで誰が優勝するかわからずに、本当に面白い場所だったと思う。こういう場所が、今後は毎場所続くといいね。

 今年は誰にでも優勝のチャンスがあるよ!

文=武蔵川光偉

photograph by Kyodo News