今週末のルヴァンカップを皮切りに、いよいよ2020年シーズンのJリーグが本格始動する。リーグ開幕を前に、J1全クラブの高卒ルーキーの補強事情について触れてみようと思う。昨年のJ1の成績順に高体連、Jユースからの新加入選手とそのクラブの戦略を分析してみた。この中からブレイクするルーキーは現れるか。前後編、期待感をもって読んでほしい。
 後編は戦略的な補強が進む大分トリニータから。

<大分トリニータ>
DF高橋祐翔(米子北)

 昨季の時点でもアタッカー陣の数は飽和状態であった大分トリニータ。FWの序列は目まぐるしく変わり、それがチームとしても活性化できたことで、J1昇格1年目ながら序盤は上位争いに加わった。今季もオナイウ阿道、後藤優介が抜けたが、新たに知念慶らを獲得しており、アタッカー陣は多士済々だ。

 それゆえ、新卒の補強ポイントは後ろ。さらにDFラインの中で一番不足しているのがCBだった。そのため、即戦力となりえる小出悠太と大卒ルーキー羽田健人(関西大)に加え、18歳の高橋を獲得した。

 新戦力CBの3人はいずれもボランチをこなせる器用なタイプだが、それぞれに売りが異なる。小出は高さこそないが冷静な判断力とカバーリングが、羽田は対人の強さと右足のキックが魅力。そのなかで18歳の高橋は189cmという圧倒的な高さがある。さらにスピードと左足のキックという稀有な武器も持っている。

 それぞれ守備だけでなく、ビルドアップや縦パスを繰り出せることで片野坂サッカーに適応する戦略的な補強だった。大型CBとして高橋が一気にブレイクすれば、その評価は一層高まることだろう。

札幌はゼロ、仙台は4年ぶりのユース生。

<北海道コンサドーレ札幌>
なし

 チーム全員に契約更新オファーを出したように、昨季とほぼ変わらない顔ぶれで新シーズンを迎える北海道コンサドーレ札幌。移籍した選手はわずか2人でともにレンタル(岩崎悠人、中村桐耶)。そのため、高卒新人は1人も取らなかった。

 一方で大卒選手は3人獲得した。東京五輪代表として活躍するボランチの田中駿汰(大阪体育大)、すでにJ1デビューを果たし、リーグ6試合に出場をしたMF金子拓郎(日本大)、そしてユース出身でホームグロウン制度に該当するMF高嶺朋樹(筑波大)。さらに2021年シーズン加入として201cmの超大型GKである中野小次郎(法政大)を獲得しており、大卒選手を中心に戦力充実を図っている。

 裏を返せば、来季は高卒選手の獲得に活発に動く可能性が高い。補強ポイントはズバリCB。すでに青森山田の藤原優大が練習参加をしているように、狙いを定めた動き出しを見せている。

<ベガルタ仙台>
GK小畑裕馬(仙台ユース)

 ベガルタ仙台の新卒補強はユースのGK小畑のみとなった。ここ数年、チームは高体連選手を立て続けに獲得をしていたが、佐々木匠(レンタルから復帰)、小島雅也(群馬へ完全移籍)以来の4年ぶりのトップ昇格となった。

 安定したセービングとステップワークなど、スキルの高いGKである小畑は高校1年生のころから3年連続で2種登録されるなど、将来性を買われてきた。満を持してのトップ昇格だけに、懸かる期待は大きい。

 チームとしても出入りが激しいオフだったが、その中でFW、MF、DFはバランスよく即戦力が取れており、GKに関しては小畑の存在を頭に入れての編成となったように映る。

190cmの栗原イブラヒムジュニア。

<清水エスパルス>
DFノリエガ・エリック(清水ユース)、MF鈴木唯人(市立船橋)、FW川本梨誉(清水ユース)、FW栗原イブラヒムジュニア(三菱養和SCユース)

 清水エスパルスは大卒ルーキーの補強は行わず、4人の高卒選手を獲得した。内訳はDF1人、MF1人、FW2人。

 まずペルーからやってきたノリエガはもともとスピードとダイナミックな仕掛けが魅力のアタッカーだったが、182cmの高さを生かした強さを買われて昨季途中でCBにコンバート。ボランチやFWとどこでもこなせる器用さと身体能力を買われての昇格と言えよう。

 同じくユースからの昇格となった川本も抜群の身体能力を誇り、あらゆるサイドのポジションで前への推進力発揮できる。また、市船からやってきた鈴木も技術レベルが高く、豊富な攻撃のアイデアを持ち、中盤のポジションならどこでもこなす。この3人は複数ポジションでの起用を考えながら、育てていくだろう。

 その中でタイプが異なるのが、190cmの大型ストライカーである栗原だ。ガーナ人の父を持ち、しなやかな身のこなしとスプリント力、バネを駆使する。ポストプレーヤーとしてボールを集約し、そこから反転からのシュートは破壊力も抜群だ。FWはチームの大黒柱であったドウグラスが抜けただけに、彼のような破壊力とインパクトのあるストライカーが大きく成長できるか、注目したい。

 4人に共通するのは、それぞれ高い向上心を持っているということだ。ノリエガは異国の地から来日し、川本は清水ジュニアユース3冠達成メンバーの中で唯一のトップ昇格という自負がある。鈴木は中体連チームから名門・市船10番に駆け上がった男だ。そして栗原は伸び悩みを経験しながらも、身体の使い方が格段に上達したことでプロ契約を勝ち取った。頼もしいメンタリティーを持ったルーキーカルテットに注目だ。

名古屋に次世代の守護神候補。

<名古屋グランパス>
GK三井大輝、DF石田凌太郎(ともに名古屋U-18)、DF吉田晃(九州国際大付属)

 名古屋グランパスは高卒3人の加入となった。

 菅原由勢が昨年途中でオランダへに渡り、金井貢史、櫛引一紀の放出、レンタル中だった新井一耀もそのままチームを離れたことで、厚みを増す意味でも補強ポイントはDFラインだった。そこでユースから石田、九州国際大付属から吉田と、将来性豊かなDFを獲得している。

 石田はFWからサイドバックまで幅広くこなせる選手。縦への仕掛けの強度、トップスピードの中で判断を変えられる頭の回転の速さが売りで、メンタル的にもプロ向き。どこで起用しても能力は十分だが、SBでの成長も楽しみである。吉田は185cmの高さだけでなく、スピードで広範囲をカバーできるCBだ。全国的には無名だが、大化けする可能性を秘めており、課題のビルドアップ面を含めてじっくりと育てて欲しい逸材だ。

 GKでは189cmの三井もユースから昇格を果たした。足元の技術に長け、ビルドアップに関わることができるこの世代屈指のGKである。ランゲラック(31歳)、武田洋平(32歳)、渋谷飛翔(25歳)といずれも世代が異なるため、次世代守護神としての期待を背負う。

青森山田10番がキャンプで躍動。

<浦和レッズ>
MF武田英寿(青森山田)

 昨季14位に沈んだ浦和レッズは、即戦力の獲得が急務だった。そのためか、新人選手の獲得は武田のみとなった。だが、高体連からの高卒ルーキーの獲得は今季復帰した伊藤涼太郎以来。さらに選手権を沸かせた青森山田の10番とあって、すでにサポーターからも話題を集めている。

 戦術眼が高く、周りの状況を俯瞰で見ながら、正確な場所に左足のキックでボールを配ることができる司令塔タイプ。プレスバック、攻撃の組み立て、フィニッシャーと役割は幅広く、常に試合に関わり続けられる力も魅力だ。キャンプでは正確なキックでチャンスを演出するなど、頭角を現しており、レギュラー争いを活性化させている。

 1999年シーズンのDF池田学以来、21年ぶりの「高卒ルーキーで開幕スタメン」も十分に狙える位置にいるだろう。

鳥栖はユース生のみ、湘南は若月が即移籍。

<サガン鳥栖>
GK板橋洋青、DF大畑歩夢、MF本田風智(鳥栖U-18)

 残留争いに巻き込まれたサガン鳥栖は、選手の入れ替わりが激しいオフだった。新チームに向けて補強が着々と進む中、新卒選手は大学2人に加え、ユース昇格の3人となった。

 U-18でエース格だった本田は、1.5列目の位置から裏のスペースに飛び込む動きが武器。フィニッシャーとしてだけでなく、オフ・ザ・ボールの動きの質も高い。左SBが主戦場の大畑は豊富な運動量をベースに、球際で激しさを発揮できる選手だ。GK板橋は185cmの高さを生かしたハイボール処理と、冷静な判断力がある。 

 彼らはひと足先にトップチームに昇格した同年代のMF松岡大起に大きな刺激を受けて、伸びてきた選手たちだ。3人とも足元の技術がしっかりとしており、U-18時代の恩師でもある金明輝監督がトップで指揮を執るだけに、“大抜擢”も見られるかもしれない。

<湘南ベルマーレ>
DF畑大雅(市立船橋)、FW若月大和(桐生第一)

 鳥栖同様に入れ替わりが激しかった湘南ベルマーレは、2人の高卒選手と1人の大卒選手を獲得。しかし、即戦力候補と目されていたFW若月は1月にスイス・スーパーリーグのFCシオンにレンタル移籍が決まったため、キャンプには同行しなかった。

 結果的に唯一の高卒ルーキーとなった畑は湘南のスタイルにマッチした選手だろう。4バックでは右SB、3バックではウィングバックが適正で、持ち前の爆発的なスピードでサイドを駆け上がる。正確なクロスを一層磨けば、1年目から試合に絡む可能性は十分にある。中核を担ってきた杉岡大暉が鹿島へ完全移籍しただけに、左サイドでの起用プランもあるだろう。

 ライバルは両サイドをこなせる石原広教、新加入の馬渡和彰と強力だが、切磋琢磨しながら成長してほしい。

生え抜きアタッカーが豪華攻撃陣に挑戦。

<柏レイソル>
DF井出敬大、FW細谷真大、FW鵜木郁哉(すべて柏U-18)

 1年でのJ1復帰を果たした柏レイソルは精力的な補強に動いた。J1定着に向けてGK、CB、MF、FWとすべてのポジションに主軸となりえる実力者を獲得し、リーグ屈指の選手層となっている。

 高卒選手の獲得は例年通りすべてユース昇格組となったが、今年は細谷、鵜木の2人のアタッカーを昇格させた。近年は攻撃陣に外国籍選手が多くそろっていたこともあり、中盤やDFの昇格が続いている。

 2人に共通しているのは主戦場がサイドだということ。共にずばぬけたスピードを持ち、周囲との連係の中で打開力を発揮できる能力の高い選手だ。シンプルに叩いて崩しに関わることもできれば、ドリブルでぶち抜くこともいとわない。一発で裏を取るシーンもあるなど、それぞれサイドからのアプローチは多彩。細谷はすでに公式戦6試合に出場、鵜木もベンチ入りを経験しており、戦力としてすぐに期待してもいいだろう。

 しかし、いわずもがな、アタッカー陣の層は厚い。瀬川祐輔、江坂任、クリスティアーノ、オルンガと主軸は健在。そこに呉屋大翔、神谷優太、仲間隼斗らが加入している。どう頭角を現していくかに注目だ。

 ビルドアップ能力とラインコントロールに長けたレフティーの井出は、CBだけでなく左SB、ボランチまでこなせる。だが、CBでは大南拓磨や高橋祐治が、SBには三丸拡が、ボランチには戸嶋祥郎が加入。才能は十分だけに、まずは激しい競争の中で生き残れるよう準備したい。

横浜FCに“帰還”古宿に注目。

<横浜FC>
MF古宿理久(青森山田)

 昇格組である横浜FCは即戦力の確保が急務だった。新卒でDF星キョーワァン(駒沢大)、MF瀬古樹(明治大)、そして昨季からレギュラークラスの活躍を見せているMF松尾佑介(仙台大)と、開幕スタメンを狙える大卒ルーキー獲得に舵を切った。

 高卒では選手権での活躍も記憶に新しい青森山田の古宿のみ。古宿は中学時代を横浜FCジュニアユースで過ごし、同い年にはすでにトップで活躍している斉藤光毅がいる。同世代に刺激を受けながら高い戦術眼と広い視野、正確なキックを磨き、チームを支えるボランチとして成長してほしい。

 今季は若手、中堅、ベテラン、バランスのとれた選手編成となっている横浜FC。さらに“大ベテラン”からも学びを得れば、高校年代屈指のボランチが一気に成長する可能性は秘めている。

J2で期待したい高卒ルーキーは?

 最後にJ2リーグで期待したい高卒ルーキーを2人紹介したい。

 まず、大宮アルディージャのMF高田颯也だ。

 高田は質の高いドリブラータイプ。わずかな身体の揺れで相手の逆を突くコース取りは抜群だ。まるでそこに花道があるかのように、一直線にゴールに向かっていく。上体が下がることなく、相手DFから見ても常に「見られながら」進んでくるため、むやみやたらに飛び込めない。さらに足のスイングもシャープで、相手を剥がした瞬間に正確なラストパスやシュートを放つ。いずれクラブの10番を背負う人材になるだろう高田に注目してほしい。

 もう1人はモンテディオ山形のDF半田陸だ。

 すでにリーグデビューを飾る半田を高卒ルーキーと扱っていいかはわからないが、彼はとにかく頭がキレる。ピッチ全体の状況を常に把握し、危険なスペースを察知する能力に長けているのだ。CB、ウィングバック、ボランチとしてもプレーし、それぞれで高いカバーリング力を発揮する。正確なキック、対人の強さ、奪ってからの展開も常に頭に入れており、将来的にA代表も目指せる存在だと推したい。今季は飛躍の1年にしたいところだ。

文=安藤隆人

photograph by Takahito Ando