今年のドラフト戦線は、現在のところ大学生たちが主役となっている。

 新型コロナウイルス感染拡大防止によるセンバツ甲子園の開催中止や休校で、高校球界で活動自粛・縮小が相次いでいることもあるが、その状況を差し引いても大学球界に有望株が多い。

 特にこの3月はプロアマ交流戦が多く開催されたこともあり、ドラフト上位候補たちとNPB選手との手合わせを多くのスカウトが視察に訪れた。またそんな有力選手たちもそれぞれが収穫や課題を得た。

 大学生にとっても本番となるリーグ戦開幕はこれから。現在はあくまで調整中の段階ということもあり、会心というほどの結果を残した者はいなかったが、それでもドラフト上位候補と呼ばれる片鱗を見せつけていた。

主将として牽引する早大・早川。

 早稲田大の左腕・早川隆久は千葉・木更津総合高時代の甲子園に3度出場(3年時に春夏連続8強入り)。大学でも昨年からエースを務め、U-18代表に続いて侍ジャパン大学代表入りを果たすなど、実績や経験値は同世代のアマ選手の中で群を抜く。

 そんな早川は22日の巨人二軍戦に先発登板し、5回9安打4失点というまずまずの内容だった。「ああ見えて(マウンド上では)短気なところもある」とスカウトが指摘するように、突如として連打や四球が出て失点した場面もあったが、それでも試合をしっかり作るという、良くも悪くも東京六大学野球で見せる姿とそう変わらない投球内容だった。

 そしてこれも変わらず、試合後は「2アウトから連打を浴びる課題が出ました。リーグ戦までに引き締め直したいです」、「ツーシームをもっと動かしたいですし、チェンジアップの使い方をより明確にしていきたいです」と冷静沈着に自己分析し課題を挙げた。

 今年はチームで主将も務めるだけに、打者としても全力疾走で内野安打を記録しただけでなく「大学に入って初めてでしたが、チームに勢いや流れを持ってこようと思いました」と盗塁も敢行。失敗には終わったが、チームを背中で引っ張っていく意志を強く感じた。

注目の日体大、今季の推しは森。

 辻孟彦コーチ(元中日投手)のもと、松本航(西武)、東妻勇輔(ロッテ)、吉田大喜(ヤクルト)と立て続けに好右腕をNPBに送り出している日体大で今季の注目右腕は森博人だ。

 愛知・豊川高時代は甲子園未出場ながら、大学1年時から150キロを超える速球で注目を浴び、昨秋には155キロを計測するなど成長を遂げてきた。

 しかし、17日の巨人三軍戦では4回から2イニングを投げて3安打4四球、押し出しで1失点するなど、やや制球に苦しんだ。NPB球が滑る感触はあったとしつつも「それは技術不足」と潔く話した。

 11日の楽天二軍戦(関係者以外非公開)でも同じような投球内容(押し出し2つを含む4回3失点)だったというが、「投げ急がぬように、ゆったりめのフォームにして、球の強さは今日の方があったと思います」と調子は上向きで「プロが相手でもストレートは押せているという手応えがありました」と前を向いた。

 また、制球についても「小さくなってしまったら自分の魅力はなくなってしまうので、自分のできることをしっかりやっていきたい」と、ブレない視線と話ぶりが印象的だった。

大型右腕・宇田川の柔軟性。

 地方リーグでは仙台大の宇田川優希の評価が高い。

 高校時代は強豪とは言えない埼玉県立八潮南高校で知る人ぞ知る存在。だが、大学4年間で球速を142キロから152キロにまで伸ばした184センチ92キロの大型右腕だ。

 オープン戦初戦となった11日のロッテ二軍戦では4回で5三振を奪ったものの、力が入りすぎて腕が振れず3安打3四球で4失点を喫した。それでも、以降の関東の強豪大学とのオープン戦では復調。

 NPB7球団のスカウトが集まった21日の慶應義塾大戦では、力強いストレートだけでなく落差の大きいフォークやブレーキのカーブで5回を投げて7三振を奪った。味方の失策後に若林将平に2ラン本塁打こそ浴びたものの、失点も安打もこの一打のみ。スカウト陣も「素材はもともと上位候補なので、これから楽しみ」と期待を寄せた。

 この3年間、指導してきた坪井俊樹コーチ(元ロッテ投手)も「踏み出す足が着くまでに、あれだけ上半身が残る投手はそうそういません。羨ましい柔軟性です」と評し、森本吉謙監督は「副将もして仲間内ではリーダーシップもある」と精神面の成長も頼もしく感じているようだった。

サニブラウンにも勝った五十幡の足。

 ドラフト上位候補の野手で大きな存在感をプロ相手に見せたのは、7日にDeNA二軍と対戦した中央大の五十幡亮汰と牧秀悟だ。

 五十幡は中学時代に陸上の全国大会でサニブラウン・ハキームを100メートル走と200メートル走で破り、優勝した逸話を持つ韋駄天である。

 2番・中堅手として出場したこの日は、初回に昨年のイースタンリーグ最多勝の中川虎大が投じた内角高めのストレートを右中間に弾き返すと、俊足を飛ばして易々と三塁へ。その後、先制点のホームを踏んだ。四球で出塁した4回には2死一、三塁から初球で二塁へ盗塁し、これが悪送球を誘い得点に繋げ、この回5得点のビッグイニングに。6回にも初球に盗塁を決め、さらに凡退時の一塁到達タイムも3.55秒と持ち味を存分に発揮した。

 試合後は「初球で盗塁を決めることができたのは自信になりました」と話し、スカウトからは「振る力もありますよね」と打力でも高い評価を得た。

侍4番の牧はシャープな打撃。

 また昨年は侍ジャパン大学代表の4番も務めた二塁手の牧はタイムリーを含む3安打を記録。勝負強くシャープな打撃を見せて、スカウトからも「変化球も上手く対応する中距離打者。二塁もソツなく守れている」と変わらず高い評価を持続している。今年は主将も務めるだけに、心身ともにさらにたくましくなっていく姿が見られそうだ。

 各選手たちがそれぞれ収穫も課題も見せた中で、今回取り上げた全選手に共通するのが、結果で一喜一憂しない落ち着いたコメントだった。冷静に自らを見つめて日々励んできたからこそドラフト上位候補に上り詰めたのだと、あらためて感じさせられた。

 この1年間は、これまで以上の注目やプレッシャーを受けることになるが、その中でどんなパフォーマンスを見せていくのか。彼らの真価が問われる。

文=高木遊

photograph by Yu Takagi