今週末の5月3日には第161回となる春の天皇賞(GI、京都競馬場、芝3200メートル)が行われる。

 伝統の一戦であり、その昔は何か他にもGIを勝っているような実力馬でないと勝てないレースだった。ミホシンザンやスーパークリーク、メジロマックイーンにライスシャワー、ビワハヤヒデらが活躍した時代の話であり、その後のスペシャルウィークやテイエムオペラオー、マンハッタンカフェあたりもぎりぎり該当していた。

 しかし、そのあたりから少々傾向が変わりだした。日本の競馬はスピード重視に舵を取り始めたのだ。サンデーサイレンスの血が浸透し、レース番組も長距離戦が少なくなるなど、スピード化に拍車がかかると、菊花賞や天皇賞(春)のような長距離レースの結果がそれまでとは微妙に変わっていった。

ここ数年は実績を残した馬が……。

 2004年にイングランディーレが初GI勝ちをこの天皇賞(春)で飾ると、翌年のスズカマンボも同様。その後も'08年のアドマイヤジュピタ、'09年マイネルキッツ、'10年ジャガーメイル、'11年ヒルノダムール、更に'12年のビートブラックや'13年のフェノーメノらがいずれも初めてのGI優勝を天皇賞(春)でマークした。

 マイネルキッツやジャガーメイル、ビートブラックに至っては初GIどころか初重賞勝ちが天皇賞という事で、明らかにひと昔前とは異質の結果が出るレースになった。

 一昨年の勝ち馬レインボーラインもやはり初GI勝ちではあったが、それでもここ数年はまた実績のある馬が勝つようになっている。'15年のゴールドシップは皐月賞や菊花賞、有馬記念に宝塚記念も勝っている馬だった。'16、'17年に連覇したキタサンブラックも菊花賞の他、ジャパンCや大阪杯、後には有馬記念も勝つような名馬だった。

 これらの傾向から見えてくるのは、現在はどの馬でもチャンスを有しているものの、突き抜けた成績を残している馬や長丁場の大レースで結果を残している馬であれば、よりチャンスがあるという事ではないだろうか。

フェノーメノやキタサンブラック。

 先述した'13年の勝ち馬であるフェノーメノは当時が初のGI制覇ではあったものの、翌'14年には連覇を達成している。キタサンブラックも連覇を果たしたのは先に記した通り。長距離戦なら長距離戦で、リピーターとして活躍する馬はいるのだ。

 つまり、現在のレース番組からするとこの3200メートルというレースが異質なため、普段のレースからは傾向を掴むのが難しく、故にビートブラックやマイネルキッツなど全く人気のない馬が初GI勝利を飾っただけであって、もし3000メートル超級のレースが沢山存在していれば勝ち馬はある程度絞られるのではないだろうか、という事。

 長距離戦がスタンダードであればビートブラックやマイネルキッツにしてもダークホースではなかったのかもしれないという事だ。

有馬以来となるフィエールマン。

 さて、これらの事を頭に入れて今年の登録馬をみると、フィエールマン(牡5歳、美浦・手塚貴久厩舎)がかなり有力なのが分かる。

 今年、2週前登録でエントリーしたのは16頭。その中でGIを勝っているのはキセキ(牡6歳、栗東・角居勝彦厩舎)とフィエールマンの2頭だけだ。
 キセキは'17年の菊花賞(GI)勝ち馬。その後は翌'18年のジャパンC(GI)2着や昨年の大阪杯(GI)と宝塚記念(GI)で連続して2着するなど善戦をしているが、勝ち鞍からは遠ざかっている。

 一方、フィエールマンは一昨年の菊花賞馬であり、昨年はこの天皇賞(春)を勝っている。つまりディフェンディングチャンピオンである。2頭は共に昨秋、フランスへ遠征して凱旋門賞(GI)に挑んだものの大敗。帰国後は有馬記念(GI)に出走し、キセキが5着、フィエールマンは4着だった。

 その後、キセキは阪神大賞典(GII、7着)を叩かれてここに臨むが、フィエールマンは今回が有馬記念以来、今年の初出走となる。

 休み明けの初出走となると、少々狙いづらく思えるところではあるが、ことフィエールマンに関すればそれほど危惧しなくても大丈夫かもしれない。同馬が菊花賞を勝った時はラジオNIKKEI賞以来、4カ月近い休み明けだったし、昨年、このレースに出走した時も1月のAJCC以来の休み明けをモノともせず優勝してみせた。

手塚師のもとでしっかりと乗り込み。

「1番人気に推された昨年はプレッシャーもあったけど、負けられないという気持ちもありました。そんな中で勝てただけに嬉しかったです」

 管理する手塚調教師はそう語った。

 では、連覇を狙う現在はどのような状態か。4月3日には美浦トレセンに帰厩し、しっかりと乗り込まれている。前走の有馬記念も4着に敗れたといえ、道中は最強馬とも思われたアーモンドアイをマークするように進出するシーンを作り、負けてなお強しと言える内容だった。

 ちなみに手塚調教師は昨年のレース後、表彰式で天皇盾を手にした際の心境を次のように語った。

「天皇盾にはズシリとした重みを感じました。平成最後の天皇賞を勝てて歴史に名を刻む事が出来たのは感慨深いモノがありました。そして、こういう表彰式は何度でも味わいたいとしみじみ思いました」

 あれから1年。今年もまたその雰囲気を味わえるかもしれない。先週のフローラSをウインマリリンで制した勢いに乗って長距離GIの天皇賞に臨む。

文=平松さとし

photograph by Satoshi Hiramatsu