現3歳世代のGIで5レースつづいていた無敗馬による勝利は途切れた。2頭の無敗馬を下し、3歳マイル王の座をもぎ取ったのは、強力な先行力を武器とする伏兵だった。

 無観客で行われた第25回NHKマイルカップ(5月10日、東京芝1600m、3歳GI)を、ミルコ・デムーロが騎乗する9番人気のラウダシオン(牡、父リアルインパクト、栗東・斉藤崇史厩舎)が優勝。初めての重賞勝ちを、GI制覇で飾った。

 出走馬18頭のうち重賞勝ち馬が5頭。うち2頭は無敗馬だったのだが、それらが1、2番人気ではなかったことが、この一戦のレベルの高さを物語っていた。

 1番人気は昨年の2歳女王のレシステンシア。2番人気は重賞2勝に加え、朝日杯フューチュリティステークス2着の実績があるタイセイビジョン。無敗のサトノインプレッサとルフトシュトロームは3、4番人気だった。

デムーロは前目の位置を選択。

 ゲートが開くと、大方の予想どおり、クリストフ・ルメールのレシステンシアがハナに立った。そのまま単騎で逃げるのかと思いきや、外からデムーロのラウダシオンが上がってきて、レシステンシアと並走する形になった。これがテン乗りだったデムーロはこう振り返る。

「何回も映像を見たところ、スタートはいつも出ていますし、今回は1600mですけど、いいところにつけたいと思っていました」

 向正面半ば過ぎからレシステンシアが再び単独で先頭を走る形になり、ラウダシオンは1馬身ほど離れた2番手となった。

 前半800mは46秒0。後半800mは46秒5だから、数字のうえではやや速い流れになった。しかし、先頭から最後方までは10馬身から11馬身ほどと、馬群はスローペースであるかのように比較的かたまっていた。

ラスト200m、「これはイケるかな」。

 前半が速くなったのは、向正面で強い追い風を受けたからだろう。直線では逆に向かい風となり、時計を要することになった。

 レシステンシアが先頭のまま直線へ。

 ラウダシオンが外からレシステンシアに並びかけ、2頭とも持ったままでラスト400m地点を通過した。

 ラスト200m手前から2頭の叩き合いが始まった。やはり、牡馬と牝馬が馬体を併せると牡馬のほうが有利なのか、ラウダシオンがじわじわと前に出はじめた。

「これはイケるかなと思って、最後まで差し切れそうな気持ちがありました」とデムーロ。

 1完歩ごとに差をひろげたラウダシオンが、2着のレシステンシアを1馬身半突き放し、先頭でゴールを駆け抜けた。

最後に速い脚が無い馬の理想の勝ち方。

「今日の馬場はあまり後ろから伸びなかった。この馬はいつもスタートから最後まで同じペースで行くので、前目で考えていました。風が強かったけど、馬に力があった」

 そう話したデムーロは、昨年のアドマイヤマーズにつづく連覇を達成。騎手による連覇は初めてのことだ。これでJRA・GI通算32勝となり、岡部幸雄を抜いて、歴代単独2位となった(1位は77勝の武豊)。

「連覇は嬉しいけど、無観客で寂しい。あまりガッツポーズも出なかったです」

 強いが、最後に速い脚を使えないワンペースの馬で勝つにはこうするのだという、お手本のようなレースだった。

 ラウダシオンはこれまで1200mと1400mの勝ち鞍しかなく、これが1600mでの初勝利だった。単勝29.6倍の9番人気にとどまったのもやむを得ないところだ。

サトノインプレッサの巻き返しにも期待。

 無敗だった2頭は、1、2着馬とは対照的に、後方からの競馬になった。2頭とも、直線でスムーズに進路を確保できなかった局面があり、ルフトシュトロームは5着、サトノインプレッサは13着に終わった。

 キャリアの浅さが出てしまったのかもしれないが、それにしても、特にサトノインプレッサは負けすぎだった。

 新馬戦こそ14頭立てだったが、7頭立て、10頭立てだった前2走とは異なる多頭数に戸惑い、直線で前にたくさん他馬がいるのを見て嫌気が差したのかもしれない。自分で走るのをやめたようにも見えた。

 管理する矢作芳人調教師が「コントレイルを負かすとしたらこの馬だと思う」と話していたほどの素質馬だけに、巻き返しに期待したい。

無観客でも、面白い競馬がつづく。

 なお、NHKマイルカップの売り上げは140億191万7000円で、前年比88.4%。無観客GIでは、最初の高松宮記念こそ前年を上回ったが、つづく大阪杯、桜花賞、皐月賞、天皇賞・春、そしてこのNHKマイルカップは前年を下回っている。それでも、ネット投票と電話投票だけであることを考えると大健闘と言えるだろう。

 今週のヴィクトリアマイルには最強牝馬アーモンドアイが出走する。無観客でも、面白い競馬がつづく。

文=島田明宏

photograph by Kyodo News