決して先走ることはしない。しかし静かにプロ野球は6月19日開幕に向けて水面下で準備を進めることになった。

 プロ野球の12球団代表者会議が5月11日に行われ、7月に予定されていたオールスター戦とフレッシュオールスター戦の中止を発表した。同時に明確な日にち設定はしなかったが「来月の半ばから下旬のどこかで開幕を目指そうと12球団が一致している」(NPB・斉藤惇コミッショナー)と最短で6月19日の開幕を目指して動き出すことになった。

「現時点では開幕日を決定するのは難しい」

 12球団代表者会議に先立って行われたNPBとJリーグで共同設置した「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第7回会議では、緊急事態宣言が5月31日まで延長されたことなどを受けて専門家グループから「まだ予断を許さない状況」と提言がなされプロ野球の開幕、Jリーグの公式戦再開日程の確定は見送ることとなった。

 緊急事態宣言が延長される中で最大の感染者数を出している東京でも11日現在で6日連続で新たな感染者数が50人以下に抑え込まれるなど、自粛の成果ともとれるデータは出始めている。

 その中でプロ野球に関しても一部で6月19日開幕の可能性を報じる報道があり、一気にムードは高まっていた。

 ただ、その一方で「対策連絡会議」の賀来満夫議長(東北医科薬科大大学)からは終息傾向にあった韓国でクラスターが発生するなど、世界的には再流行の気配も出ていることなどを挙げて予断を許さない状況下であることを指摘された。

 その結果、「現時点では開幕日を決定するのは難しい」という意見が出されて、開幕日の決定は見送られることになった。

“自粛生活”表明の社会的な意義。

「何度も開幕の日付が決まらないということは、我々も残念に思いますし、選手やファンの方々にも大変心苦しい思いであります」

 こう語る斉藤コミッショナーの言葉通りに、確かに出口の見えないままに、また数週間を過ごすことへの不安は選手や関係者だけでなくファンの間でも重いものがある。

 ただ、その一方で非常事態宣言が延長された中で、ゴールデンウイーク明けには、自粛への我慢疲れを指摘する声もある。ここでもし具体的に早期のプロ野球開幕の日取りが決まれば、そうした緩みをさらに助長することにも繋がりかねない。

 その点では球界が踏ん張って、あえて開幕日を決めずに“自粛生活”を続けることを表明したことには社会的な意義があったのではないだろうか。

 ただ、この決断の裏ではリスタートに向けた準備も粛々と水面下で進められることになる。

開幕後の日本独自のルール作成は必要。

 1つは開幕後に向けた様々なガイドラインの作成だ。

「再開に向けて緊急事態宣言が段階的に解除されても、ゼロリスクにならない中でどうしていくか。例えば再開後、チームに感染者が出た場合どうするかなどを、いまの時期に考えておく必要もあります」

 こう賀来議長が指摘するように、開幕後の日本独自のルール作成は必要だ。

 また、たとえ開幕日が決まったとしても、開幕に向けて試合カンを取り戻すためには必須となる練習試合を通常通りに各地でやるのか、それとも移動リスクを軽減するために1箇所で集まって何試合かをこなすのか? 

 また、開幕後のチームの移動をどうするのか?

 選手や関係者に罹患者が出た場合にはリーグを中止するのか、それとも中断して新たなリスタートを模索するのか……。

 すでに開幕している台湾、韓国のプロ野球を参考にしながら、様々なケースを想定した基本方針の策定にも取りかかっている。

6月19日の開幕に向けて具体的に動き出している。

 一方の現場では、各チームがすでに6月19日の開幕に向けて具体的に動き出している。

「決定ではないが、6月19日というのが1つの目安だとは聞いている」

 こう語るのはある球団の関係者だ。

 出口が見えないまますでに2カ月以上にわたって、選手たちは球団施設などを使ってキャンプで作った身体を維持するためのトレーニングを続けてきた。

 個々のプロ意識に根ざしたここまでの個人練習が最低限のコンディション維持を目的とするなら、そこから再度、試合を行えるまでの肉体的、精神的なビルドアップにどれくらいの時間がかかるのか。

 巨人の原辰徳監督は目安を3週間と語っている。一方で楽天のようにチーム活動を停止して練習施設も閉めていた球団だと、投手の調整などには1カ月から1カ月半はかかるのではないかという意見もある。

 8日にはその楽天も球団施設を使った自主練習を開始し、19日に開幕したとしても調整期間として40日の時間を確保した。

 その上で6月4日から10日間ほどかけてオープン戦を行えば、19日にはギリギリ間に合う。どの球団もそこを1つの目標として動き出しているのである。

5月14、21日の政府専門家会議を受けて。

 次回の「対策連絡会」と12球団代表者会議は5月22日に開催予定。同14日と21日には政府の専門家会議が開催され、ゴールデンウイーク明けの感染状況のデータなどを含めた、総合的な終息への見解が示される。

 それを受けてプロ野球も、具体的な開幕日の発表に踏み切りたい意向だ。

「私たちとしては選手のためにも、あるいはファンの皆さんのためにも、あるいは諸般の準備の関係から日にちを決めたいなという気持ちはずっとある」(斉藤コミッショナー)

 ただそのためにはまず感染拡大が収束し、各本拠地のある地方の受け入れ態勢がしっかり整い、その上でファンが本当に開幕を待ち望む準備が整うことが条件だ。

 6・19に確実に開幕できるかどうかは、まだ分からない。ただ、この日を目標に選手も、チームも、球界も動き出したことだけは間違いない。

文=鷲田康

photograph by KYODO