長い間、引き分けを含まない公式戦連勝記録は、ヨハン・クライフを擁したアヤックス・アムステルダムが1972年に成し遂げた26連勝だった。その伝説のチームの大記録を44年ぶりに書き換えたのがウェールズのザ・ニューセインツで、27連勝を達成したのは2016年12月のことであった。

 さらに昨年9月、新たな記録が打ち立てられる。

 それもブラジルの女子チームによって。

 コリンチャンスが樹立した34連勝(その中にはフェロビアリアを2対0で破ったコパ・リベルタドーレス決勝も含まれる)は、南米女子サッカーの新たな時代の幕開けを告げるものでもあった。

 1997年に創設されたコリンチャンス女子チームは、成績不振と財政難で11年後の2008年に一度は活動を停止している。その後、グレミオ・オサスコ・オウダックス(サンパウロ州のサッカークラブ。以下オウダックス)との提携という形で2016年に活動を再開するが、当初はもっぱら資金援助のみに留まっていた。その後、練習場を提供したり試合日程を組むなど実質的な活動をオウダックスが行っていた。両者が袂を分かった2018年から再びコリンチャンスとしての活動が本格化するが、それからわずか2年で、どうしてここまで到達できたのか。エリック・フロジオ記者が、『フランス・フットボール』誌3月3日発売号でその秘密を解き明かしている。

監修:田村修一

偉大な記録を打ち立てた“コリンチャンス・マシン”。

 ギネスブックにまだ正式に承認されたわけではない。だが、遅かれ早かれそれが世界記録として認められるのは間違いない。

 コリンチャンス女子チームは、2019年3月26日から9月18日にかけて公式戦34連勝という偉業を成し遂げた。FIFAはその快挙を、《完ぺきなマシン》という言葉でツイッターで称賛した。

 フェロビアリアとのブラジル選手権決勝が2引き分け(1対1と0対0)に終わり、快進撃もまた終わりを告げるが、PK戦によりブラジルチャンピオンのタイトルを失った後も無敗記録は継続した。次の週末の試合でサンパウロFCに2対0と敗れるまで、コリンチャンスはその記録を48に伸ばしたのだった。

「素晴らしい記録だと思う」と、ブラジル女子代表のミッドフィールダーで2015〜18年にはパリ・サンジェルマンに所属したエリカ(33歳)は語る。

「ただ、それだけを目標にここまで来たわけじゃない。《マシン・コリンシアナ=コリンチャンス・マシン》について語るのはファンやメディアに任せて、私たちはひとつひとつの試合に勝つことだけに集中してここまで来た」

女子部門が無いクラブは活動できないという新規則。

 マシンは極めてうまく機能した。パートナー関係にあったオウダックスと2018年はじめに完全分離してから、コリンチャンスの女子部門は激しい競争の中に身を置いている。それは女子サッカーの発展のため新たな規則を制定したCONMEBOL(南米サッカー連盟)とCBF(ブラジルサッカー連盟)のルールに沿ったものであり、そのシステムがクラブを一気に飛躍させたのだった。

 規則自体はとてもシンプルだった。

「国内大会および国際大会に参加するクラブは、女子部門も持たねばならない」

 というものである。

 ほとんどのクラブは、これにより急遽女子チームを立ち上げた。

 コリンチャンスは違った。

 サンパウロ近郊のオサスコに本拠を置くオウダックスとの提携を続けてきたコリンチャンスには、すでに女子チームに関する経験とノウハウの蓄えがあった。そして新たなチームの命運は、男子チームのコリンチャンスで働いていた、かつて女子サッカーのアマチュア選手としてプレーし、マネジメントの経験も豊富だったクリス・ガンバレに委ねられたのだ。

白紙委任状が託されたディレクターの思惑。

 コリンチャンスの女子部門のディレクターに任命されたガンバレには、(選手を除く)19人の職員を統括しながら野心的なプロジェクトを遂行していくための白紙委任状が与えられたのだった。彼女は語る。

「女子部門を出来る限りプロ化することで、私たちは新たな次元に到達した。自分が尊敬され評価されているとわかったら、選手は持てるポテンシャルのすべてを発揮するでしょう」

 アンドレス・サンチェス会長の積極的なサポートにより、コリンチャンス女子部門は発展していくためのあらゆる手段を得ることができた。その第一が、名門チームの名前に相応しい練習場だった。

「ブラジルでこれだけのことが実現したのが凄い。素晴らしいピッチと優れたアカデミーができたのだから」とアルツール・エリアス監督は述べている。

 試合の日には、5000人収容の古びたパルク・サンジョルジ・スタジアムに女性たちが詰めかける。そして決勝ともなると、11月16日のサンパウロ州選手権決勝には、なんと3万人の熱狂的なサポーターが集まった。もちろんブラジル国内における女子サッカーの最多観客記録だった。

有能で、十分な権限を持ったガンバレの活躍。

 男子サッカーが圧倒的な人気を誇るブラジルにおいて、これは特筆すべきことであった。
「もちろんまだまだ男子とは比べるべくもないけれども、男子と同等の権利を得るための契機にはなり得る」とエリカは語る。

「仕事の条件や環境であれ食事やサラリーであれ、女子もそれなりの配慮をされてしかるべきでしょう。それこそが私の闘いであり、すべての女子チームがコリンチャンスのような恵まれた環境でプレーできるようになることを私は願っている」

 コリンチャンスがここまで模範的なクラブになったのは、女子サッカー分野で評論家の第一人者であるシンティア・バルレンが《プロジェクトのアーキテクト(建築家)》と名づけたクリス・ガンバレの存在はとてつもなく大きいという。

 バルレンはガンバレをこう評している。

「彼女は経営者として有能だし経験も豊富で、財政面での裁量権もあるから選手の生活基盤を向上させ、スタッフとともにクラブを安定させることができた」

 アルツール・エリアス(38歳)はオウダックスとの提携解消後も監督の地位に留まり、グランジやカカウ、レレ、パルダルといったオウダックスの主力を引き抜いただけでなく、タミレス(フォルツナ・ヒョリング)やアンドレッシーナ(ポートランドトーンス)、エリカ(PSG)らブラジル女子代表選手を獲得してチームを強化した。

 その結果、2018年にはブラジル選手権を獲得し、翌年はコパ・リベルタドーレスも制覇して南米の頂点に立ったのだった。

しっかりした成長戦略に則った成功だった。

 エリアスが絶対的な信頼を寄せるのが、フィジカルトレーナーやGKコーチ、ビデオアナリスト、栄養士、心理療法士、フィジオセラピストといった専属のスタッフたちであった。

「彼らは能力が高く知性もある。成功の70%は彼らの力だと思う」とエリカも認める。

 エリアス自身はこう語っている。

「スタッフやグループが安定しているのがチームの力になっている。ベースは強固で、同じ人たちがずっと一緒に働いている」

 その安定感が、4つの理念を打ち立てた青年監督に、プレーにおけるオートマティズムの確立を可能にしたのだった。

 ちなみにその4つとは、「言葉と視覚によるコミュニケーション」、「強度の高いテクニック」、「プレーへの積極的な参加」、「先を読む能力を高めること」である。

 これらは選手同士のリスペクト(尊敬)とコオペレーション(協力)というふたつの基本原則に立脚している。

 こうしてすべての要素が有機的かつ効果的に絡み合い、コリンチャンスは攻撃的で魅力に溢れたサッカーを実現した。

 直近の47試合で147ゴール。1試合平均3得点という数字が、内容の濃さを物語っている。

女子サッカーの人気はまだ表面的。

「このチームでプレーするのは本当に楽しい。ボールに触れる回数が多いし、攻撃も守備も全員が一体となっておこなっている。嬉しいのは私の心のクラブでそれが出来ていること。父も家族も熱烈なサポーターだったから」とエリカは言う。

 かくいう彼女自身が、クラブのスター選手だったマルセリーニョ・カリオカが主宰するサッカースクールの出身であった。

 攻撃サッカーを進化させながら勝利を重ねたコリンチャンスにはファンも増え、ツイッターでは3万7000人、インスタグラムでは30万人以上のフォロワーを集めるに至った。そしてホームスタジアムであるパルク・サンジョルジには、常時1500人の観客が集まるようになった。

「とても家族的な雰囲気で、女性の数も多い」とエリアスは語る。

 そうした中には、より情熱的だが暴力的でもある男子サッカーから宗旨替えをした人たちも少なくないという。

「女子サッカーは、メディアの中でもある程度の地位を確保できたがまだまだ十分ではない」と彼は続ける。

「人気はまだ表面的で、本当に定着させるためにはさらなる議論と分析が必要だ」

欧州女王のリヨンにも負けない!

 評論家のシンティア・バルレンは、メジャーなテレビ局で女子サッカーの試合が放映されていないのが残念でならない、と言う。ただそれもコリンチャンスがさらなる成長を遂げ、ヨーロッパのビッグクラブと伍していく障害とはならない。最大のターゲットが、現欧州チャンピオンのオリンピック・リヨン(フランス)であるのは言うまでもない。エリカは述べる。

「もし戦ったらどうなるのか。フィジカルではリヨンが優っているけど、テクニックなら私たちが負けていない」

 エリアスも自信をのぞかせる。

「私たちはどんな相手でも倒すことができる。誰かが試合を開催することを望んでる」

 コリンチャンスからパスは出された。

 受け取ったボールを、リヨンとジャン・ミシェル・オラス会長はどう返すのだろうか……。

文=エリック・フロジオ

photograph by Facebook SC Corinthians Paulista