「Did you know the Cubbies are the last place(カブスって最下位なの、知ってた)?」

 友人の友人みたいな人からダイレクトメッセージが来て、何のことかと思いきや、Baseball-Reference.comにあるシミュレーションのことだった(https://www.baseball-reference.com/sim/leagues/MLB/2020.shtml)。

 それは6月1日、61試合経過時点での「Out of The Park Baseball 21(OOTP)」というメジャーリーグのシミュレーションゲームに基づいた「途中経過」のことで、すでに本来の開幕日である3月26日、同サイトにこんな声明が寄せられていたようだ。

「本日より、毎日正午(東部時間)にサイトを更新し、その日のゲームの結果を掲載します。サイト全体の選手ページをチェックして、シーズンの進行に伴う統計情報の更新を確認してください。

 さらに毎日のスコアと現在の順位を確認できる毎日のダイジェストページと、すべてのシミュレーションがされた統計が1カ所にまとめられたチームとリーグのページを設定しています」(一部抜粋)

ヤンキースやドジャースの評価は高い。

 その「途中経過」によると、開幕から2カ月を過ぎた時点でア・リーグ東地区はヤンキース(36勝25敗)、中地区はインディアンス(38勝23敗)、ナ・リーグ東地区はブレーブス(36勝25敗)、中地区はカージナルス(39勝22敗)、西地区はドジャース(42勝17敗)が首位に立っていた。

 それらのチームはキャンプが始まった頃、専門誌やMLBネットワークなどで「優勝候補」に挙げられていたチームなので、驚きはない。

カブスの最下位とマリナーズ首位に驚く。

 日本人選手がいるチームでは、今年から筒香嘉智内・外野手がプレーするレイズ(33勝29敗)が、ア・リーグ東地区で田中将大投手のいるヤンキースを3.5ゲーム差で追走している。やはり今年から山口俊投手がプレーするブルージェイズ(27勝34敗)は、9ゲーム差の同地区3位である。

 前田健太投手のいるツインズ(33勝28敗)は5ゲーム差ながらア・リーグ中地区2位で、今年から秋山翔吾外野手が加入したレッズは、31勝29敗でナ・リーグ中地区の首位カージナルスを追う3位である。それらの順位もやはり、前出の「戦前予想」とそう遠くないので驚きはない。

 驚いたのはやはり、「友人の友人」が指摘したカブスのナ・リーグ中地区最下位と、開幕前の専門誌等の予想で「最下位候補」だったマリナーズがア・リーグ西地区の首位に立っていることだった。カブスはダルビッシュ有投手、マリナーズは平野佳寿、菊池雄星両投手がいる。

 OOTPによるとカブスは現在、23勝38敗(勝率.377!)で首位カージナルスに16ゲームもの大差を付けられて最下位に沈んでいる。一方のマリナーズ(38勝24敗)は、追走する2位アスレチックス(36勝25敗)に1.5ゲーム差、3位アストロズ(35勝25敗)に2ゲーム差をつけて首位を快走している。

別サイトは戦力から成績を予想。

 シミュレーションは、様々な「Projection(予測)」システムに基づいている。統計分析学の教祖ビル・ジェームズ氏の名前が付いたBill Jamesや、2008年や2012年のアメリカ合衆国の大統領選挙における各州の勝者をほぼ正確に予測したことで知られる統計学者のネイト・シルバー氏が開発した「PECOTA」、ファンタジーベースボール愛好家に人気のFanGraphs.comが使うSteamerやZiPSなどが有名だ。

 そのFanGraphs.comにも「予測」の順位表は掲載されていて、こちらは「仮想試合」を積み重ねて毎日更新するのではなく、シーズン前の今季戦力から「最終成績」を「予測」したものだ(昨年の開幕前の予測と実際の成績、そして2020年の予測が掲載されている)。

カブスの優勝を予想するサイトも。

 それによると、FanGraphs.comのア・リーグ東地区は1位ヤンキース(94勝68敗)、2位レイズ(90勝72敗)と同じ結果。同中地区はインディアンス(85勝77敗)ではなく、ツインズ(89勝73敗)が優勝。

 ナ・リーグでも東地区はブレーブス(87勝75敗)ではなく、ナショナルズ(88勝74敗)が優勝し、西地区はドジャース(97勝65敗)が優勝と多少の誤差はあれ、上位を占める幾つかのチームはBaseball-Reference.comの「途中経過」と共通している。

 FanGraphs.comの「最終順位」シミュレーションが違うのはやはり、ナ・リーグ中地区のカブスが85勝77敗で優勝している部分や、ア・リーグ西地区でアストロズ(95勝67敗)が優勝し、マリナーズ(66勝96敗)が最下位である部分だ。

ダルビッシュの成績も散々な予想。

 OOTPの「途中経過」には個人記録も掲載してあるので調べてみると、ゲームのシミュレーションではカブスの先発投手陣が、完全に崩壊していた。

 カイル・ヘンドリクスこそ12試合に先発して5勝2敗、防御率3.68と健闘しているものの、左腕ジョン・レスターは2勝4敗、防御率4.57、左腕ホゼ・キンタナは2勝7敗、防御率6.60、タイラー・チャトウッドは1勝6敗、防御率6.39。

 そして我らがダルビッシュは3勝9敗、防御率6.24と散々な成績で、これでは最下位になって当然だ(複数のシミュレーション結果を列挙しているFanGraphs.comの「最終成績」より遥かに悪い)。

 今春、順調すぎるほど順調だった5人のキャンプの仕上がり具合を取材した側から見ると、「信じ難い」のひとことなのだが、個人成績はともかく、チーム成績に限って言えば、あながち有り得ない話ではないような気もする。

試合数が減れば順位は荒れる。

 というのも、現在協議中の今季の試合数は、MLB機構が最初に提案した「年俸の大幅削減での80試合前後」→選手組合が提案した「3月に合意した試合数に応じた年俸での114試合」→MLB機構が考えているという「試合数に応じた年俸なら50試合前後」という風に変化し続けている(その後、選手組合が提案した114試合制をMLB機構が拒否したらしい)。

 試合数が少なくなればなるほど、「瞬間最大風速」的に強いチームが優勝する可能性は高くなるし、OOTPによるBaseball-Reference.comの「途中経過」のような「信じ難い」順位になるかも知れない。

 たとえば昨年のワールドシリーズ王者ナショナルズは、50試合経過時点では19勝31敗で首位フィリーズ(!)から10ゲーム差、61試合経過時点でも28勝33敗で6.5ゲーム差の4位に沈んでいたので、その時点ではナショナルズが2019年のMLB王者になるなんて「信じ難い」ことだった。

 もしも今季が50試合制になるなら、昨年のナショナルズのような「後半巻き返し」はあり得ないし、OOTPが算出したようにマリナーズが「開幕ダッシュ&ゴール」を決めて優勝する可能性もあるわけだ。

 そう考えれば、カブスが何らかの理由で開幕からつまずき、そのまま最下位で終わってしまう可能性だってあるのだが、Baseball-Reference.comの「途中経過」より、FanGraphs.comの「最終予想」を信じたいと思うのは、日本メディアならではのエゴなのかも知れない。

文=ナガオ勝司

photograph by AFLO