高校の時に単語カードでDecadeという単語を覚えた。「10年」という意味だ。こんな言葉、使うことがあるのかと思ったが、野球の世界ではディケードはかなり大事である。野球選手の選手寿命は短いから、10年ごとに勢力図がガラッと変わるのだ。

 実は2020年の開幕に合わせて、2000年代の2つのディケードの数字をまとめていた。2000年から2009年と、2010年から2019年だ。2020年は3つ目のディケードの初めの年、過去を振り返るにはぴったりの年なのだ。実はこの2つの時代、選手の顔ぶれも数字の中身も大きく変わるのだ。

 まずは2000年代のベストナインを各データから考えていこう。

まさに大器晩成だった金本。

【2000年から2009年の野手ランキング】
<安打数5傑>
1 小笠原道大 1629安打
(日本ハム−巨人)
2 金本知憲 1559安打
(広島−阪神)
3 ラミレス 1545安打
(ヤクルト−巨人)
4 松中信彦 1459安打
(ダイエー・ソフトバンク)
5井端弘和 1444安打
(中日)

 イチローが2000年限りでメジャーに移籍した後、NPBの打者のトップに立ったのは小笠原、松中という「イチロー世代」の2人だ。広島からFAで阪神に移籍した金本は、2000年にはすでに32歳だったが、ここから力を発揮し始めた。

ローズ、ラミレス、カブレラの存在感。

<本塁打5傑>
1 ローズ 353本塁打
(近鉄−巨人−オリックス)
2 カブレラ 322本塁打
(西武−オリックス)
3 小笠原道大 311本塁打
4 松中信彦 299本塁打
5 ラミレス 287本塁打

<打点5傑>
1 松中信彦 991打点
2 ラミレス 980打点
3 金本知憲 974打点
4 小笠原道大 922打点
5 ローズ 899打点

 ローズとカブレラはともに55本塁打を記録した一方で「あと1本」を阻まれた、とも言われている。2000年代はローズ、ラミレス、カブレラと、NPB史上で最も成功した外国人選手を生み出した10年だと言えるだろう。

赤星の俊足にヒットメーカー青木。

<盗塁5傑>
1 赤星憲広 381盗塁
(阪神)
2 荒木雅博 259盗塁
(中日)
3 川崎宗則 206盗塁
(ダイエー・ソフトバンク)
4 福地寿樹 202盗塁
(広島−西武−ヤクルト)
5 片岡易之 173盗塁
(西武)

 クイックモーションの進化で、盗塁は以前より難易度が上がっているが、2001年デビューの赤星は「脚の魅力」を存分に見せつけた。

<打率5傑(3000打席以上)>
1 青木宣親 率.331
 2734打数905安打(ヤクルト)
2 小笠原道大 率.323
 5048打数1629安打
3 和田一浩 率.314
 4174打数1311安打(西武−中日)
4 福留孝介 率.3079
 3391打数1044安打(中日)
5 カブレラ 率.3075
 3762打数1157安打

 青木は3121打席なので辛うじてこのランキングに入る。青木はNPB公式サイトでは4000打数以上の打率史上1位をキープしている。右打者では和田が1位である。

最多勝利と奪三振は意外な人?

【2000年から2009年の投手ランキング】
<勝利数5傑>
1 西口文也 103勝67敗
(西武)
2 清水直行 93勝85敗
(ロッテ)
3 松坂大輔 92勝55敗
(西武)
3 上原浩治 92勝58敗
(巨人)
3 下柳剛 92勝65敗
(日本ハム−阪神)

 この10年は、西武の西口、松坂というWエースが輝いた時代だった。また松坂と同期の巨人、上原も素晴らしい実績を残した。ロッテの清水は地味ながらも5年連続2けた勝利を挙げている。

 ただ、松坂、上原そしてこのランキングにはないが岩隈久志、黒田博樹、川上憲伸、井川慶、和田毅らエース級がMLBに渡る。若くて伸び盛りの投手の人材流出が続いた。

 この10年、さらに若い世代のダルビッシュ有(日本ハム)は63勝、田中将大も35勝を挙げているが、彼らもMLBへ。このランキングには無縁だった。

<奪三振5傑>
1 三浦大輔 1319奪三振
(横浜)
2 松坂大輔 1204奪三振
3 杉内俊哉 1202奪三振
(ダイエー・ソフトバンク)
4 上原浩治 1197奪三振
5 西口文也 1181奪三振

 意外なことに奪三振は三浦が1位。三浦はこの10年、1654.1回と断トツのイニング数を投げている。横浜は大洋時代から秋山登、平松政次、遠藤一彦、野村弘樹と伝統的に「弱くてもエースがいる」チームだったが、彼も弱いチームで黙々と投げ続けたのだ。

岩瀬、小林雅、JFKと名リリーフが。

<セーブ数5傑>
1 岩瀬仁紀 233セーブ
(中日)
2 小林雅英 227セーブ
(ロッテ)
3 永川勝浩 163セーブ
(広島)
4 高津臣吾 158セーブ
(ヤクルト)
5 豊田清 157セーブ
(西武−巨人)

〇ホールド数5傑
1 ウィリアムス 141ホールド
(阪神)
2 菊地原毅 99ホールド
(広島−オリックス)
3 武田久 98ホールド
(日本ハム)
4 岡本真也 92ホールド
(中日−西武)
5 藤川球児 90ホールド
(阪神)

 中日はこの10年間で9回Aクラス、落合博満監督になって2回優勝。その原動力となったのは、岩瀬仁紀という絶対的なクローザーだった。

 ホールドは2005年から導入された指標だが、この時期に阪神は「JFK」という「勝利の方程式」を導入。そのうちウィリアムスと藤川が5位以内。久保田智之も82ホールドだった。

杉内を含めて「松坂世代」が全盛。

<防御率5傑(1000イニング以上)>
1 杉内俊哉 2.97
 1166.1回79勝41敗
2 松坂大輔 3.00
 1222.2回92勝55敗
3 井川慶 3.11
 1228.2回85勝59敗(阪神)
4 上原浩治 3.144
 1351.1回92勝58敗
5 川上憲伸 3.146
 1319回90勝57敗(中日)


 投球の精度や奪三振率では、杉内はこの世代で抜群だった。この10年は杉内、松坂、救援の永川、藤川、久保田と「松坂世代」の投手たちが多彩な活躍をした時代でもあった。

様々な成績からベストナインを選ぶと。

【ベストナイン】
〇先発投手 3人
 松坂大輔92勝55敗 率3.00
 杉内俊哉79勝41敗 率2.97
 上原浩治92勝58敗 率3.14

〇セットアッパー
 Jウィリアムス
 16勝17敗47セーブ141ホールド率2.20

〇クローザー
 岩瀬仁紀
 39勝29敗233セーブ16ホールド率2.11

 勝利数では西口だが防御率は4.03。投球の精度では先発はこの3人だろう。セットアッパー、クローザーも文句なしのはず。

三冠王・松中を外すわけには……。

〇捕手
 阿部慎之助(巨人)
 1078安 204本 632点 11盗 率.285

 阪神の矢野輝弘(1004安92本 率.278)や横浜−中日の谷繁元信(962安129本 率.241)ヤクルトの古田敦也(814安90本 率.292)もいるが、打撃成績では阿部が抜きんでている。打撃だけならダイエーの城島健司(807安159本 率.306)も捨てがたいがMLBに挑戦したので実働6年だけだった。


〇一塁手
 松中信彦
 1459安 299本 991点 17盗 率.306

 2004年の三冠王を外すわけにはいかないだろう。本塁打だけならカブレラ(1157安 322本 率.308)が上だが、打点、安打は松中が上。ロッテの福浦和也(1321安87本 率.298)は長打で及ばない。

〇二塁手
 荒木雅博
 1202安 23本 292点 259盗 率.275

 長打だけなら巨人の仁志敏久(1114安117本 率.266)の方が上だ。また、広島の東出輝裕(980安 11本 率.271)も10年間活躍した。しかし守備力も含めた総合的な面で荒木とする。

〇三塁手
 小笠原道大
 1629安 311本 922点 56盗 率.323

 筆者は、この10年の最強打者は小笠原だと思う。両リーグMVPを獲得するなど数字・実績両面で圧倒的だった。広島ー阪神の新井貴浩(1223安 210本 率.280)、ダイエーー巨人ーソフトバンクの小久保裕紀(1178安 264本 率.281)、近鉄ーオリックスーMLBー中日―楽天の中村紀洋(1049安 227本 率.275)などもいるが、小笠原の方が上回っているだろう。

〇遊撃手
井端弘和
1444安 48本 375点 135盗 率.291

 2000年代、遊撃手は空前の豊作だった。ヤクルトの宮本慎也(1299安 49本 率.290)、横浜−広島の石井琢朗(1296安 62本 率.275)、巨人−日本ハムの二岡智宏(1045安 143本 率.283)、ダイエー・ソフトバンクの川崎宗則(992安 22本 率.295)、日本ハムの金子誠(961安 53本 率.255)、2010年代にも登場する鳥谷敬(831安 70本 率.279)とベストナイン級の選手が目白押しだ。

 しかし井端は安打数が最多なだけでなく、守備機会も圧倒的に多い。また二塁・荒木との伝説の「アライバコンビ」を考えても井端にしたい。

外野手の3人、打順を組むと?

〇外野手 3人
 金本知憲
 1559安 282本 974点 96盗 率.297
 ラミレス
 1545安 287本 980点 17盗 率.305
 赤星憲広
 1276安 3本 215点 381盗 率.295

 金本、ラミレスは抜群のポイントゲッターだった。同じタイプには和田一浩(1311安 219本 率.314)もいるが、総合的にはこの2人。さらに中軸打者なら巨人の高橋由伸(1125安 211本 率.297)、中日の福留孝介(1044安 176本 率.308)、広島の前田智徳(936安 149本 率.298)も候補だがリードオフマンも必要なので、圧倒的な脚力を見せた赤星を選んだ。

〇指名打者
 タフィ・ローズ
 1213安 353本 899点 34盗 率.284

 一塁で紹介したカブレラ(1157安 322本 率.308)と拮抗するが、打点、本塁打はローズがやや上回る。ここはローズとしよう。

 2000年代ベストナイン、打順を組むと以下のようになる。

1番 中 赤星憲広
2番 遊 井端弘和
3番 三 小笠原道大
4番 一 松中信彦
5番 指 ローズ
6番 右 金本知憲
7番 左 ラミレス
8番 捕 阿部慎之助
9番 二 荒木雅博
先発 松坂大輔

 赤星、井端の1、2番は足もあり、小技も利く。小笠原、松中の「イチロー世代」が中軸。下位に重量級の打者が並ぶ。

 こうした豪華な野手陣を背景に松坂大輔が投げる。胸が躍るシーンになるのは間違いないだろう。

(編集註:2010年代ベストナインも関連記事からぜひご覧ください!)

文=広尾晃

photograph by Koji Asakura