2000年代に続いて、2010〜2019年までのディケードのベストナインを選考する。

 ただし2000〜2009年までの10年間と比べて、環境が激変している。

 読者各位は覚えておられるだろうか? 2011年に加藤良三コミッショナー(当時)が、MLB仕様とされる「統一球」を導入したことを。この年から極端な投高打低になり、反発係数を測定したところ基準の下限値を下回るなど大混乱した。

 その後、調整されて基準値内に戻ったとされるが、この10年は、前の10年に比べて打撃成績は大きく低下している。投打のバランスは大きく変動したのだ。

 それを前提に2010年代のベストナインをデータから出していこう。

2010年代で1500安打以上は坂本だけ。

【2010年〜2019年の野手ランキング】
<安打数5傑>
1 坂本勇人 1571安打
(巨人)
2 糸井嘉男 1448安打
(日本ハム−オリックス−阪神)
3 大島洋平 1442安打
(中日)
4 秋山翔吾 1405安打
(西武)
5 松田宣浩 1347安打
(ソフトバンク)

 前の10年、1500安打以上は3人いたが、この10年は坂本だけ。またスラッガーというよりスピード感のある1番、3番打者タイプが並んでいる。

バレと中村剛也の図抜けた長打力。

<本塁打5傑>
1 バレンティン 288本塁打
(ヤクルト)
2 中村剛也 281本塁打
(西武)
3 松田宣浩 239本塁打
(ソフトバンク)
4 中田翔 226本塁打
(日本ハム)
5 筒香嘉智 204本塁打
(横浜・DeNA)

<打点5傑>
1 中田翔 828打点
2 中村剛也 818打点
3 松田宣浩 764打点
4 バレンティン 763打点
5 浅村栄斗737打点
(西武−楽天)

 2013年にNPB記録の60本を打ったバレンティンと、極端な打低だった2011年に48本塁打を打った中村剛也が傑出した存在だ。中田は本塁打数では劣るが、打点は1位。勝負強さが光った。松田宣浩も長打力、勝負強さで鳴らした。パの選手が多い中で、筒香嘉智が本塁打5位にランクインしている。

盗塁数も減少、打率はギータ。

<盗塁5傑>
1 糸井嘉男 259盗塁
2 西川遥輝 245盗塁
(日本ハム)
3 本多雄一 234盗塁
(ソフトバンク)
4 大島洋平 217盗塁
5 荻野貴司 201盗塁
(ロッテ)

 前の10年、赤星憲広は381盗塁していたが、この10年は盗塁数も減少している。糸井は35歳の2016年に史上最年長で盗塁王になっている。西川は、200盗塁以上の選手で最も盗塁成功率が高い(.868)。盗塁は「数」ではなく「質」の次元に入ったと言えるかもしれない。

<打率5傑(3000打席以上)>
1 柳田悠岐 打率.319
 3003打数958安打(ソフトバンク)
2 マートン 打率.310
 3287打数1020安打(阪神)
3 糸井嘉男 打率.304
 4757打数1448安打
4 秋山翔吾 打率.301
 4674打数1405安打
5 川端慎吾 打率.298
 3246打数967安打(ヤクルト)

 前の10年は10人いた3割打者は4人となった。柳田は長打力が目立つが、実は広角打法のアベレージヒッターだ。マートンは2010年に当時のNPB記録の214安打をマークしている。柳田は1回トリプルスリーを記録。打率6位(.297)のヤクルト山田哲人は3回トリプルスリーを記録している。

分業が進んで先発の勝利数も……。

【投手編】
<勝利数5傑>
1 金子弌大 100勝65敗
(オリックス−日本ハム)
2 メッセンジャー 98勝84敗
(阪神)
3 岸孝之 89勝68敗
(西武−楽天)
4 菅野智之 87勝47敗
(巨人)
4 石川雅規 87勝90敗
(ヤクルト)

 投高打低の時代だから、投手成績が向上するかと言えば、そうではない。この10年、投手の分業がさらに進み、先発投手が投げるイニングはさらに短くなった。またダルビッシュ有、田中将大、和田毅、前田健太などトップクラスの投手はMLBに移籍した。前の10年、80勝以上は12人いたが、これが10人に減った。

 そんな中でオリックスという強いとは言えないチームで2度の最多勝を獲得した金子弌大はエースの働きをしたと言えるだろう。

<奪三振5傑>
1 メッセンジャー 1475奪三振
2 金子弌大 1260奪三振
3 岸孝之 1259奪三振
4 則本昂大 1245奪三振
(楽天)
5 能見篤史 1152奪三振
(阪神)

 毎年のように200イニング、3000球を投げたメッセンジャーが1位。抜群のスタミナだった。奪三振率で言えば、イニング数(1196.1回)を上回る三振を奪った則本が際立っている。

2010年代も岩瀬は凄かった。

<セーブ数5傑>
1 サファテ 234セーブ
(広島−西武−ソフトバンク)
2 岩瀬仁紀 173セーブ
(中日)
3 増井浩俊 163セーブ
(日本ハム−オリックス)
3 山崎康晃 163セーブ
(DeNA)
5 平野佳寿 156セーブ
(オリックス)

<ホールド数5傑>
1 宮西尚生 316ホールド
(日本ハム)
2 山口鉄也 213ホールド
(巨人)
3 マシソン 174ホールド
(巨人)
4 浅尾拓也 154ホールド
(中日)
5 増井浩俊 152ホールド

 前の10年、233セーブで1位だった岩瀬が次の10年も2位。投手史上初の1000試合登板を樹立して引退した岩瀬だが、その持久力は驚異的だった。山崎は、次の10年にも期待がかかる。

 ホールドでは宮西が、2018年限りで引退した山口鉄を抜いて史上1位になった。増井はセーブでもホールドでもランクイン。150セーブ150ホールドは藤川球児(通算241セーブ162ホールド)に続いて史上2人目だ。

マエケンの防御率は昭和の大投手級。

<防御率5傑(1000イニング以上)>
1 前田健太 2.16
 80勝51敗1207回(広島)
2 菅野智之 2.36
 87勝47敗1222.2回
3 菊池雄星 2.77
 73勝46敗1010.2回(西武)
4 金子弌大 2.90
 100勝65敗1486.2回
5 岸孝之 2.91
 89勝68敗1445.2回

 この10年で1000イニング以上投げたのは17人。2000年代は21人だった。投手の分業が進んでいるのだ。ただ防御率2点台は1人から5人に増えている。前田健太の2.16という防御率は、昭和の大投手に近いレベルだ。前田は防御率1位を3回取っている。菅野智之は昨年3.89と数字を下落させたが、それを除へば2.25。菅野は前田を上回る防御率1位が4回。この2人が際立っている。

ベストナイン、抑えはあの助っ人。

【ベストナイン】
〇先発投手 3人
 菅野智之 87勝47敗 率2.36
 金子弌大 100勝65敗 率2.90
 前田健太 80勝51敗 率2.16

〇セットアッパー
 宮西尚生 316ホールド

〇クローザー
 サファテ 234セーブ

 菅野は2年連続沢村賞。2018年には歴史的な快投を見せた。この10年のエースと言ってよいだろう。続いて最多勝の金子、防御率1位の前田。

 セットアッパーも文句なし。クローザーのサファテは2017年に54セーブのNPB記録を樹立している。

二塁手は激戦だがやはり山田哲人。

〇捕手
 阿部慎之助(巨人)
 1054安 202本 653点 2盗 率.283

 捕手は悩ましい。阿部が捕手を務めたのは2010年から15年までの6シーズン621試合だった。しかし安打数で阿部に次ぐのはヤクルトの中村悠平(646安 29本 率.241)、続いて現ヤクルトで前年まで楽天の嶋基宏(637安 20本 率.239)だ。この差はあまりにも大きい。前の10年に続き、阿部とする。

〇一塁手
 中田翔
 1210安 226本 828点 13盗 率.253

 横浜−ソフトバンクの内川聖一(1226安 117本 率.296)もいる。安打数、打率では上だ。それに比べて中田は打率が低いが、この10年の打点王を外すわけにいかないだろう。

〇二塁手
 山田哲人
 1068安 202本 583点 168盗 率.297

 二塁手は混戦模様だ。守備では広島の菊池涼介(1117安 85本 率.271)、打撃では西武−楽天の浅村栄斗(1317安 180本 率.285)もいる。しかしトリプルスリー3度の山田を外すわけにはいかない。

〇三塁手
 松田宣浩
 1347安 239本 764点 112盗 率.272

 西武の中村剛也(993安 281本 率.254)も傑出した存在だが、彼は指名打者に回したい。松田はプロとしてはそこまで大きくない体格ながら長打も多く当代屈指のクラッチヒッターだ。

〇遊撃手
 坂本勇人
 1571安 197本 693点 136盗 率.294

 現ロッテで元阪神の鳥谷敬(1254安 68本 率.280)やソフトバンクの今宮健太(886安 66本 率.248)もいるが、数字的には圧倒的だ。坂本は球史に残る遊撃手になろうとしている。

外野は糸井、丸、マートンらもいるが。

〇外野手 3人
 秋山翔吾
 1405安 116本 513点 112盗 率.301
 バレンティン
 959安 288本 763点 7盗 率.273
 柳田悠岐
 958安 157本 525点 143盗 率.319

 他にも捨てがたい選手がいる。昨年までDeNAの筒香嘉智(977安 207本 率.285)、外野手最多安打の糸井嘉男(1448安1 43本 率.304)、MVP2度で広島−巨人の丸佳浩(1235安 174本 率.281)、安打製造機、阪神のマット・マートン(1020安 77本 率.310)など。しかし選考は「この10年の実績」だ。迷ったがシーズン最多安打を更新した秋山、シーズン最多本塁打のバレンティン、最高打率の柳田とした。

〇指名打者
 中村剛也
 993安 281本塁打 818点 14盗 率.254

 この10年、DH専門打者はほぼ外国人選手だった。しかしロッテーソフトバンクのデスパイネ(618安 154本 率.264)、西武のメヒア(510安 130本 率.247)とパッとしない。心情的には日本ハムの大谷翔平(296安 48本 率.286)も……と思うが、数字が足りない。

 中村は三塁手だが、DHでも通算326試合出ている。屈指のスラッガーでもある中村をDHとしたい。

 数字で選出した2010年代ベストナイン、打順を組むと以下の通り。

1番 中 秋山翔吾
2番 二 山田哲人
3番 右 柳田悠岐
4番 左 バレンティン
5番 指 中村剛也
6番 一 中田翔
7番 遊 坂本勇人
8番 三 松田宣浩
9番 捕 阿部慎之助
先発 菅野智之

 1番から3番までは打撃に加え、足もある。中軸は長距離打者。下位も強力だ。

 今年から始まる2020年代は、2000年代と2010年代に伍するようなチームになるのか。果たしてどんなベストナインになるだろうか?

(編集註:2000年代ベストナインも関連記事からぜひご覧ください!)

文=広尾晃

photograph by Nanae Suzuki/Hideki Sugiyama