ついに、ついに、Jリーグが動き出す。J1に先駆けてJ2が、6月27日に再開される。J3も同日に開幕を迎える。

 予測不可能のシーズンである。

 22チームが総当たりで対戦するJ2は、12月20日までに41試合を消化していく。月別では7月が6試合、8月が7試合、9月が8試合と、酷暑が予想される夏場に過密日程が待ち受ける。昨シーズンは7月が5試合、8月と9月は4または5試合だったから、フィジカル的な負担は相当なものになるだろう。

 10月は6試合に減るものの、11月は再び8試合が組まれている。シーズン最終盤で疲労の蓄積が避けられない12月にも、20日の最終節までに5試合がつづく。

 水曜日開催のゲームが例年以上に多いスケジュールは、中2日か中3日で迎える試合が増えることを意味する。大宮アルディージャを昨シーズンから率いる高木琢也監督が言う。

「中2日か中3日で試合が続く時期は、コンディションの維持と回復を繰り返していく。戦術的なトレーニングに、どこまで時間を割けるか。現実的に難しいでしょうね。そう考えると、再開までにしっかり理解を深めておかないといけない」

永井「実際に始まってみないと……」

 J2はJ1より試合数が多い。試合に追われていくスケジュールは、これまでにもあった。それにしても、戦術的な修正よりリカバリーを優先せざるを得ないタイミングが、今シーズンは多くなるということだ。

 そう考えると、停滞期はできるだけ避けたい。水戸ホーリーホックの秋葉忠宏監督は、「6カ月弱に縮まったシーズンなので、流れに乗る、流れを作る、ということは大事でしょう」との見通しを立てる。

 東京ヴェルディの永井秀樹監督は、「スケジュールを見ながら中断期間に色々なシミュレーションをしてきましたが、実際に始まってみないと分からないところがある」と、割り切って受け入れるスタンスだ。

秋葉「資金力のないチームにはチャンス」

 スケジュールが過密になれば、ケガのリスクが高まる。ドイツ・ブンデスリーガでは、再開直後にしてケガ人が続出した。高木監督がうなずく。

「シーズンのスタートが6月後半から7月というのは、これまでになかったことです。いきなり蒸し暑いコンディションです。それに対して、身体は当然ながら影響されます。いくら戦力が揃ってても、ケガ人が出たら戦力はダウンする。そういう意味での怖さはあります」

 コンディション管理については、秋葉監督も細かく配慮している。そのうえで、現状を前向きにとらえる。

「ありとあらゆることに気を配っていきますが、誰も経験したことのないこの状況ですから、我々のように資金力のないチームにはチャンスだと思っています。知恵とアイディアを絞ってピッチ外でも素早く行動できるのは我々のいいところで、コンディショニングでも他チームとの違いを見せられれば」

5つの交代枠をどう使う?

 過酷なスケジュールを消化しつつ、戦線離脱者を出さないためには、コロナ禍での新たなルールの活用もポイントになるだろう。交代枠である。

 今シーズンは3人から5人に増えた。Jリーグに先立って再開されたヨーロッパ各国リーグでは、3人同時の交代といった采配も見られる。秋葉監督は様々な要素を組み合わせ、想定される状況を整理してきた。

「1試合のなかで5人の交代枠をどう使うのか。5枚すべて使うのか、使わないのか。41試合トータルで、交代枠をどう使うか。スタメンを入れ替えるターンオーバーも含めて、対戦相手がどこなのか、ホームゲームなのか、アウェイゲームなのか。色々なことをシミュレーションしながら戦略を考えています。

 ケガ人が出ることも想定すると、チームの総合力が問われるでしょう」

高木「相手に合わせるばかりではなく」

 永井監督も「色々なプランが考えられる」と言う。

「できることが増えると考えれば、前向きにとらえています。自分たちは誰が出ても同じ絵を描いてくのが基本にあるので、より多くの選手がピッチに立って活躍してくれることを楽しみにしています」

 ベンチからの働きかけで、試合を動かせる機会は増える。そのための準備はもちろんする。ただ、大切なのはチームの「芯」だという意味で、3人の監督は意見を揃える。交代枠の活用をシミュレーションする秋葉監督にしても、「シーズンインとともに掲げてきた一戦必勝のスタンスは変わらない」と話すのだ。

 高木監督の見立てが正鵠を射る。

「試合中に5人まで代えられるので、対戦相手が最初は3枚でスタートして、状況によって4枚に変え、また3枚に戻すとかいうこともあるかもしれない。暑いなかの試合でもアグレッシブに前からどんどんボールを奪いにいって、疲労が見えた選手から5人代えていく、ということも可能です。そういうことに対応できる準備をしつつも、相手に合わせてばかりではなく、自分たちのベースをしっかり持つことが大切です」

昇格が2チームだけになる影響は?

 新型コロナウイルスの感染拡大は、終息を迎えたわけではない。リーグ戦再開後も感染のリスクはくすぶり、全クラブが全日程を消化できなかったり、日程消化のために新たな制限が加えられたりする可能性も残る。

 公平性を担保するのが難しいことを鑑みて、今シーズンはJ2降格がなくなり、J1昇格が上位2チームのみとなった。3位から6位が出場するJ1昇格プレーオフは実施されない。

「この状況も楽しむぐらいの気持ちで」

 そういったこともすべて受け入れていく覚悟が、各チームの監督と選手たちには求められるのだろう。’09年から12年連続でJリーグのクラブを指揮している高木監督は、落ち着いた口調で語る。

「プレーオフが無くなったぶん、J1昇格の難しさは増したでしょう。でも、自分たちは自動昇格を目標にしていますので、気持ちの変化はありません。これからどんなことが起こるのか分かりませんが、色々なことをあらかじめ想定しておきながら、この状況も楽しむぐらいの気持ちで臨みたいですね」

 秋葉監督も声を弾ませる。2月の開幕戦ではホームで大宮に競り負けたが、躍動感あふれるサッカーは大いなる可能性を感じさせた。

「全選手のコンディションが上がってきていて、誰をスタメンに選ぼうか本当に悩みます。ブンデスリーガを観ていても、イレギュラーなことが起こっています。変化を受け入れて、察知して、いち早く対応する。細心の注意を払いながら、大胆に戦いたいですね」

Jリーグが開催されることへの感謝を。

 誰も経験したことのないシーズンだからこそ、瞬発力を発揮して課題を克服し、なおかつ「自分たちらしさ」を見失わない。さらに言えば、そんなシーズンだからこそ、サッカーができる喜びを心に刻み、Jリーグが開催されることへの感謝を表現するチームが、勝利を引き寄せていくに違いない。自分のためではなく誰かのために戦うとの思いは、困難を乗り越える支えとなっていくからだ。

文=戸塚啓

photograph by J.LEAGUE