まさに「牝馬の時代」を象徴するグランプリとなった。

 上半期の競馬を締めくくる第61回宝塚記念(6月28日、阪神芝内回り2200m、3歳以上GI)には、レース史上最多の8頭のGIホースが集結。このドリームレースを、北村友一が騎乗したクロノジェネシス(牝4歳、父バゴ、栗東・斉藤崇史厩舎)が、レース史上最大の6馬身差で圧勝。昨年の秋華賞につづくGI2勝目を挙げた。

 いったんは良馬場に回復した阪神の芝コースは、直前の雨でまた稍重になった。

 そんななかクロノジェネシスは、ゲートからゴールまで、完璧な立ち回りを見せた。

 速いスタートを切って、外目の16番枠から出たなりに進み、スムーズに好位勢の後ろにつけて1コーナーに入った。

「馬場とか周りの馬のことは気にせず、自分の馬だけを信じて乗ればいいと思っていました。スタートが決まったことが大きかったです。折り合える位置でリズムよく運ぶことができ、終始手応えよく回ってこられました」と北村。

「馬が強くて自然に上がっていった」

 向正面に入っても先頭から6、7馬身離れた7、8番手で折り合っている。

 3コーナーで、斜め後ろから武豊のキセキが進出してくると、それに馬体を併せられる前に自らも動き出した。

「ゴーサインを出したというより、馬が強くて、自然に上がっていった感じでした。この手応えで、この直線なら絶対に伸びてくれると思っていました」

 北村がそう話したように、余裕たっぷりの手応えで外から先行馬に並びかけ、直線へ。

 クロノジェネシスの内で馬体を併せていた、先輩牝馬のラッキーライラックが、一瞬先頭に立った。しかし、ラッキーライラックが激しく追われていたのに対し、クロノジェネシスはほぼ持ったままだった。

道悪では4戦4勝、すべて圧勝。

 ラスト200m手前で、北村の左ステッキを受けたクロノジェネシスが桁違いの脚で抜き去り、先頭に躍り出た。

 そこからはワンサイドゲームだった。

 北村の見せ鞭に反応してさらに脚を伸ばし、2着のキセキを6馬身突き放してフィニッシュ。3着のモズベッロまでは、さらに5馬身も離れた。1番人気に支持されたサートゥルナーリアは、モズベッロから1馬身3/4遅れた4着に終わった。

 クロノジェネシスは、前日発売の段階では単勝5.3倍の3番人気だったが、終わってみれば、単勝4.1倍の2番人気。これは、馬場状態が回復しないと読んだファンが食指を伸ばした結果だと思われる。

 そのくらい、クロノジェネシスの道悪での成績は突出している。

 それまで、稍重の新馬戦と秋華賞を2馬身差、重馬場の京都記念を2馬身半差で完勝。この宝塚記念を勝ったことで、道悪での成績は4戦4勝となった。しかも、すべて2着を突き放しての勝利なのだから恐れ入る。

馬体の増加分そのまま強くなる。

 しかし、道悪巧者というだけで、これほどの圧勝劇を演じられるわけがない。

 阪神ジュベナイルフィリーズ2着、桜花賞とオークス3着という結果が示しているとおり、大舞台で安定したパフォーマンスを発揮する、底力のある馬なのだ。

 秋華賞を勝ったときは、オークスからプラス20kgの馬体重。そして今回は、前走の大阪杯からプラス10㎏の464㎏という、最高馬体重での勝利だった。馬体が大きくなったぶんだけ強くなるという、理想的な成長曲線を辿っている。

「結果を出せてよかったです。クロノジェネシスを褒めてあげてほしいと思います」

 そう話した北村は新馬戦からずっとこの馬に騎乗しており、これが11戦目のコンビだった。

「牝馬の時代」が到来した。

 牝馬の優勝は昨年のリスグラシューにつづく2年連続で、史上5頭目。

 これで、今年の牝牡混合GIレースにおける牝馬の勝利は「4」となった。内訳は、高松宮記念(モズスーパーフレア)、大阪杯(ラッキーライラック)、安田記念(グランアレグリア)、そしてこの宝塚記念。しかも、宝塚記念以外はすべて牝馬のワンツーフィニッシュという凄まじさだ。

 牝馬による牝牡混合GI最多勝記録は、ウオッカやダイワスカーレットが活躍した2008年の「5」。上半期終了時でそれに迫ろうとしているのだから、まさに「牝馬の時代」到来である。

上半期の馬券売上は前年比アップ!

 なお、宝塚記念の売り上げは203億9865万9400円で、前年比104.8%だった。今年上半期の平地GI12レースのうち、前年を上回ったのは、高松宮記念、ヴィクトリアマイルに次いで3レース目。

 また、中央競馬の上半期(前年=開催140日、今年=開催148日)の売り上げは1兆4752億6872万8200円(前年比101.5%)、入場者は86万3609人(前年比26.8%)と発表された。

 2月29日から始まった無観客競馬は18週にも及び、ネットと電話投票だけの発売となったことを考えると大健闘と言えよう。ほかのスポーツイベントが軒並み中止となり、ステイホームで楽しめる娯楽としての注目度が相対的に上がったことがこの売上げにつながったのだろう。

文=島田明宏

photograph by Kyodo News