6月27日のビッグインパクトが、今シーズンの新たな潮流を象徴しているのかもしれない。ヤクルトの山田哲人が巨人戦(神宮)の6回に、チームの大逆転を締めくくる3号グランドスラムを放った。一方、メットライフドームでは西武との6連戦中のソフトバンク柳田悠岐が、1回に先制の2号2ランを中越えに打ち込んだ。この2人に共通するのはトリプルスリーだけではない。「2番」を任されていたのだ。

 近年の「2番打者重視」の流れが、明らかに強まっている。バント不要。1回無死一塁からの犠打なんてもってのほか。打って倒す。1イニング複数得点をねらい、打力を期待できる選手を置く傾向にある。開幕から10試合(ヤクルト、広島は9試合)が経過した6月30日時点での、各球団の2番事情をまとめてみた。

“昇格”の柳田、山田は不動の存在に。

『最強打者』……MLB流の最強打者を配して戦っているのは、以下の4チームだ。

<ソフトバンク>
 先の柳田の本塁打は、3番から2番に「昇格」したその日に打っている。併せて5番を4番に、4番を3番に繰り上げている。つまりクリーンアップトリオを2番から4番で組んだことになる。工藤公康監督は「塁にいるところでプレッシャーをかけられる」と意図を説明しているが、最大のメリットは打席数が増えることだ。

 3人合わせた年間の打席数は、単純計算で約47打席(シーズン143試合制で)プラス。もっとも、当初から工藤構想にあったわけではなく、開幕2番は有望株の栗原陵矢。十分に役割は果たしていたが、チームが波に乗りきれない中で今宮健太、川島慶三も2番で起用した。柳田を含めた4人で打率.289、11打点、4本塁打。2番・柳田が今後も継続されるか注目だ。

<ヤクルト>
 セ・リーグで唯一の不動の2番。最下位脱出を誓う高津臣吾新監督が、打線の目玉として早くから山田の起用を宣言していた。開幕戦から2試合連続第1打席で2ランを放つなど、最強打者としての働きを続けている。打率.286、11打点、3本塁打はさすがのひと言だ。

坂本&丸からつながる岡本。

<巨人>
 昨シーズンから引き続き坂本勇人を置いているが、開幕からやや出遅れた3番の丸佳浩のリフレッシュのため、3試合入れ替えている。2人で打率.297、7打点、2本塁打。どちらが定着しても経験豊富なリーグMVP経験者から、絶好調の4番・岡本和真との相乗効果が期待でき、最強打者のグループに入れてよさそうだ。

<DeNA>
 アレックス・ラミレス監督は大方の予想通り、チーム最強打者である2年連続本塁打王のネフタリ・ソトに任せた。開幕3連戦は違ったのは、3番を打つはずのタイラー・オースティンがコンディション不良でベンチスタートとなったため。ソト、オースティン、佐野恵太の2、3、4番もソフトバンクと同じくクリーンアップトリオといえる。3人を起用して1打点、本塁打なしが気になるが、ソトは打率.351と状態に問題はない。

左右で使い分ける楽天、日ハムは長打力に。

『強打者』……“最”こそつかないが、信頼できる打者を置き、得点力を高めようとしているのは次の2球団。

<楽天>
  FAで獲得した左の鈴木大地と、選球眼が優れている右のジャバリ・ブラッシュを使い分けている。打率.308、9打点、1本塁打。三木肇新監督が目指す野球のキーポイントといえそうだ。

<日本ハム>
 開幕から大田泰示が不動だったが、10試合目に渡辺諒を起用。2人で打率.178ながら、7打点、2本塁打と期待の長打力は発揮している。

『つなぎ』……昔ながらの堅守&巧打のくせ者タイプを配しているのは2球団。

<広島>
 開幕3連戦で無安打に終わったために1試合だけ下位に下げたが、基本は菊池涼介。2カード目からは目を覚まし、5試合連続安打を放った。安部友裕と併せて打率.231、3打点、1本塁打。

<西武>
 山賊打線不動の2番は源田壮亮だ。打率.146、0打点と出遅れたが状態は上がってくるはず。この2チームに共通するのは強打の新外国人に1番を打たせていること。そして絶対の4番打者がいること。いかに好機を供給するかという意味では、つなぎも重要な意味をもつ。

ロッテ以外はいずれも低迷……。

『迷走』……開幕前の構想が跡形もなく消えてしまったのはこの4球団。

<ロッテ>
 開幕から7試合は実力者の角中勝也が務めたが、不振が続いたため岡大海、新人の福田光輝も起用。3人で打率.135、1打点と数字は悪いが、チームは首位をキープ。角中が復調すれば迷走グループからも脱出できそう。

<オリックス>
 マイナーリーグながら通算174本塁打の新外国人アデルリン・ロドリゲスを置き、破壊力アップをもくろんだが、チームが開幕10戦で1勝と不振を極め、打順がめまぐるしく入れ替わることに。大城滉二、安達了一と3人で打率.189、2打点、1本塁打。

<阪神>
 昨シーズン盗塁王の近本光司を置く開幕前の構想は、わずか2試合で頓挫。糸原健斗、北條史也をも起用し、打率.150、1打点とチーム成績同様の低速発進となった。

<中日>
 最も迷走し、低迷しているのがこのチームだ。開幕2番は「強打者タイプ」の平田良介が務めたが、5試合目からめまぐるしく入れ替わる。12球団最多の5人も起用し、なんと打率.053、1打点は悲しすぎる。攻撃陣には実力者がそろっており、首脳陣の発想しだいで強い2番は置けると思うのだが……。

 ロッテを除く3球団はいずれも下位に低迷している。監督たるもの、負けが込むと必然的に打線を大きくいじりたくなるもの。2番あたりはちょうど手をつけやすい打順なのかもしれない。柳田、山田、坂本といった侍ジャパンクラスの2番打者が、主要タイトルにからんでくるのも新たな野球の楽しみだ。

文=小西斗真

photograph by Hideki Sugiyama