先週の宝塚記念(GI)をもって今年の競馬シーズンも折り返しとなった。上半期のGI戦線では様々なスターホースが誕生。近年まれにみる名馬の時代とも思える結果になった。

 まず牡牝ともに無敗の2冠馬が生まれた3歳クラシック戦線。皐月賞、日本ダービーの両レースを1番人気で快勝したのがコントレイル(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)だ。

 2歳時の昨年、デビューから3連勝でホープフルS(GI)を優勝。最優秀2歳牡馬に選定された同馬は、今年の初戦をぶっつけで皐月賞に出走した。同じく2歳時に3戦3勝でGI(朝日杯フューチュリティS)勝ちのサリオスとの一騎討ちとなったが、これを半馬身差退けて見事に1冠目を制覇。続く日本ダービーでも再戦となると今度はその差を3馬身に広げた。

 サリオスはここも2着に健闘したが、これをあっさりと負かして2冠制覇を達成。これでデビューから5戦、全て1番人気に応えての5連勝という完璧なパフォーマンス。秋には菊花賞(GI)挑戦が関係者からすでに表明されており、2005年のディープインパクト以来、史上3頭目となる無敗の3冠馬を目指す。

 3000メートルに距離が延びる事でサリオスの逆転があるのか?

 他の上がり馬が台頭するのか?

 それとも距離と時間の壁も関係なく彼と福永祐一騎手が、みたび挑戦者の前に立ちはだかるのか? どういう結果が待っているかは分からないが、楽しみなのは間違いない。ぜひ無事に秋を迎えていただきたい。

デアリングタクトも牝馬3冠なるか。

 無事に秋を、という意味では牝馬2冠を達成したデアリングタクト(牝3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)も同様だ。

 昨年11月、2歳でデビューしたこの馬は、今春の2戦目でエルフィンSを優勝。3戦目で一気に桜花賞(GI)を制覇すると、続くオークス(GI)も優勝。デビューから4戦4勝、無敗で桜花賞とオークスの2冠を制したのは実に63年ぶりという快挙を達成した。

 秋には主戦の松山弘平騎手を背に史上初の無敗での牝馬3冠は成るのか? 牡馬のコントレイル同様、楽しみに待ちたい。

古馬の根幹路線は牝馬が中心に。

 一方、古馬の根幹路線では牝馬が中心になった感がある。

 3200メートルの天皇賞・春(GI)こそ牡馬のフィエールマン(牡5歳、美浦・手塚貴久厩舎)が制したものの、2000メートルと2200メートルの大阪杯(GI)と宝塚記念(GI)はラッキーライラック(牝5歳、栗東・松永幹夫厩舎)とクロノジェネシス(牝4歳、栗東・斉藤崇史厩舎)の牝馬勢が優勝。とくに大阪杯は並み居る牡馬勢を押しのけてその2頭でワンツーフィニッシュを決めてみせた。

 しかし、牝馬が強かったのはこの路線ばかりではなかった。

 短距離1200メートル戦の高松宮記念(GI)は1位入線のクリノガウディー(牡4歳、栗東・藤沢則雄厩舎)が4着に降着となってしまった事もあったが、結果、モズスーパーフレア(牝5歳、栗東・音無秀孝厩舎)とグランアレグリア(牝4歳、美浦・藤沢和雄厩舎)の牝馬2頭が1、2着となった。

 そしてグランアレグリアは続く安田記念(GI、芝1600メートル)で優勝。こちらは2着アーモンドアイ(牝5歳、美浦・国枝栄厩舎)とまたも牝馬の上位独占となった。

ヴィクトリアマイルの直線での衝撃。

 さて、このようにアーモンドアイをしても終わってみれば脇役となってしまったわけだが、この春、最大のインパクトのあったレースはどれかと問われれば、私は彼女が勝ったヴィクトリアマイル(GI)を挙げたい。

 これはあくまでも個人的な見解であり、人それぞれ違うだろうが、当方にはあの直線のパフォーマンスは稀に見る衝撃だった。

 マイル以下の序盤から速い流れの競馬になると往々にして後ろからになりがちなアーモンドアイだが、このヴィクトリアマイルでは好発を決めると先行してみせた。そのまま掛かる事もなく流れに乗ると、直線を向いた時にはすでに明らかに他馬と手応えが違った。

 手綱を取ったクリストフ・ルメール騎手に後にこの時の話を聞くと、笑みを隠せないといった表情で次のように語った。

「自分はまだ持ったままだったのに他の馬のジョッキー達の手は既に激しく動いていました。『やっぱりアーモンドアイは凄いな……』って思いながら乗っていました」

安田記念2着の悔しさは秋に晴らす。

 楽々と先頭に立つと後は軽く気合いを入れただけ。ノーステッキでアッと言う間に抜け出し、最後は2着のサウンドキアラに4馬身の差をつけてゆうゆうとゴールに飛び込んで見せた。

 有馬記念(GI)では折り合いを欠くシーンもあってまさかの9着に敗れた女王だが、やはり普通に力を出し切れば強いと痛感させられたレースだった。

 しかし先述の通り、続く安田記念では先に抜け出したグランアレグリアに2馬身半の差をつけられての2着に敗れるのだから競馬は難しい。

 さて、秋にはどんな競馬を見せてくれるのだろうか?

 ラッキーライラックやクロノジェネシス、はたまたグランアレグリアとの再戦もあるだろうか? 彼女の今後の動向からも目が離せない。

文=平松さとし

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