FC東京はJ1再開となった4日の柏レイソル戦で勝利し、第1節清水エスパルス戦に続いて敵地で勝ち点3を確保した。新型コロナウイルス禍による特殊な環境下のシーズンにあって、昨シーズン2位から“もう1つ上”を目指すためにどう戦おうとしているのか。8日に川崎フロンターレとの「多摩川クラシコ」が控える中、キャプテンの東慶悟に今季への決意を聞いた。

――7月4日のリーグ再開初戦となったアウェーの柏レイソル戦に1-0で勝利し、次は久しぶりの味の素スタジアムでの試合になります。対戦相手は川崎フロンターレ、多摩川クラシコですね。

「多摩川クラシコはいつも、両チームのファン・サポーターの方々が素晴らしい雰囲気を作ってくれるので、リモートマッチになるのが残念ですけれど、熱い試合になると思います。川崎は近年、王者の風格を感じますし、活きのいい大卒ルーキーが加わって戦力がアップしたと聞きましたが、しっかり勝って勢いに乗りたいですね」

――川崎は3年連続でタイトルを獲得して、雰囲気が出てきたと感じますか?

「感じますね。特に昨年の味スタでの試合(19節/0−3)はすごく感じました。僕らのホームゲームでしたけど、川崎がかなりガンガン来て、後手を踏んでしまった。彼らは首位の僕らを食ってやるという気持ちがすごく出ていたし、差を感じました。その差が何かっていうと、タイトルを獲ったことで身についた自信だと思うんです。だから、僕らもタイトルを獲らないといけない」

中断期間に味わった“引退後”の心境。

――ようやくJリーグが再開しましたが、改めて4カ月間の中断期間は、東選手にとってどんな時間でした?

「小学1年生から29歳までずっとボールを蹴ってきたので、サッカーができないというのは、思っていた以上のストレスでしたね。自宅でトレーニングをしたり、マスクをつけて外を走ったりしましたけれど、充実感は得られなかった。だから、久しぶりに小平でみんなとボールを蹴ったときは感慨深かったです。サッカー選手はサッカーをしてこそ存在価値があると。それを改めて感じさせてもらえましたね。

 あと、STAY HOME期間に家にいるときに思ったのは、『現役を引退したら、こんな感じなのかな』って。張り合いがないというか。引退した方々からよく『現役が一番いいよ』っていう話を聞いたりするんですけれど、こういうことなのかと」

――現役中に、引退後の心境を味わえた?

「そうですね(笑)。だから、身体が動くうちは、少しでも長く現役を続けたいなって改めて思いました」

妻へ改めて感謝とリスペクト。

――東選手は、目を負傷して2月の清水エスパルスとの開幕戦も欠場したので、他の選手たちよりもさらに長く、サッカーから離れていたことになりますもんね。

「だから、かなりウズウズしました(苦笑)。あのときは、練習中にボールが左目に当たって、片目が見えない状態が2週間くらい続いて。普段の生活を送るだけでも不自由だったし、本当に視力が戻るのか不安で。ようやく治って、全体練習に合流できたと思ったら、今度は新型コロナウイルスでリーグが中断。だから今は、なおさらボールを蹴れることを幸せに感じています(笑)」

――中断期間中は、家族と一緒にいる時間も普段以上に多かったと思います。

「4歳の娘がいるんですけど、娘も幼稚園に行けなかったので、家で一緒に遊んだり、家の前で縄跳びをしたり。いつもなら外で遊んだあと、娘は疲れてすぐに寝てしまうんですけど、今回は公園にも行けない状態だったので、体力が有り余ってずっと元気。一緒に遊ぶのもひと苦労でした(笑)。普段は妻のほうが娘と一緒にいる時間は長いので、いつも大変なんだろうなって、改めて感謝とリスペクトをしましたね」

「トップを目指す」ことを再確認。

――練習が再開されてから、キャプテンとしてチームメイトにはどんなアプローチを?

「僕だけではなくみんなが今、ボールを蹴れる幸せを感じていると思うんですけど、そこからしっかりギアを入れて、『トップを目指す』ということを、もう一度確認しないといけない。昨年、最後まで優勝争いをしながら、あと一歩でリーグタイトルを逃して、『今年は絶対に獲ろうぜ』っていうところでリーグが中断したので、キャプテンの自分が改めてみんなにその意志を確認しないといけないな、と思っています」

――昨年は初めてキャプテンを務め、10番も背負いました。東選手自身、開幕前には「変わらないといけない」と熱く語っていました。1年を終えて、どうでした?

「自分にできることは何か、すごく考えた1年でしたね。ピッチ内はもちろん、ピッチ外でも『チームが良くなるには、何を言ったらいいだろう』とか。間違っていることがあれば、指摘しないといけない。相手が先輩だろうと、後輩だろうと関係ない。そんなスタンスで臨みました。まずは自分が選手としてお手本になるような振る舞いをしないと、何を言っても説得力がないんですよね」

優勝争いとキャプテンとしての重圧。

――プレーで示さなければ、誰も聞く耳を持ってくれない。

「言葉って、誰に言われるかによって響くかどうかが変わると思うんですよ。どの世界も同じだと思いますが、『いや、お前、やってないだろ』って思われたら終わり。だから、チームのことも気にしながら、自分のことも疎かにしない。その難しさ、大変さを感じた1年でしたね」

――ましてや優勝争いの真っ只中にいたわけで、プレッシャーも相当だったと思います。

「プレッシャーは……相当ありました(笑)。優勝争い自体が初めてなのに、それをキャプテンとして経験できたわけですから。でも、チームをまとめることの難しさは、それほどなかった。負けてばかりだと、キャプテンの責任を問われたと思うんですけど、昨年は勝つことが多かったので、やりやすかった。ピッチ外でも『試合後にユルネバ(※You'll Never Walk Alone)を歌おう』とか、アクションを起こしやすかったですから。

 最後、結果が付いてくれば最高だったんですけどね。でも、本当にいいチームだったし、あれだけ白星を重ねたことも、最後に悔しさを味わったことも、大きな財産だと思います。鹿島アントラーズや川崎は毎シーズン、あの緊張感を経験して強くなったと思うので、東京もベースのレベルが上がったのは間違いないと思います」

長谷川体制3年目、一段階上へ。

――長谷川健太監督就任3年目となります。今季のFC東京の強みや魅力は?

「ハードワークや球際とか、ファストブレイクの部分で積み上げてきたものはあるので、さらに今季は攻撃力、得点力に注目してほしいですね。新加入のブラジル人選手たち(レアンドロ、アダイウトン)はすでに馴染んでいて、清水戦でも柏戦でも素晴らしい連係を見せてくれたし、大卒ルーキーの3人(安部柊斗、紺野和也、中村帆高)もクオリティがかなり高いので、チームとして一段階上に行けると感じています」

――レアンドロ選手、アダイウトン選手はサイドでもプレーできますし、安部選手はインサイドハーフやボランチでプレーできる。東選手にとって、ポジション争いが熾烈になりますが。

「刺激になりますよね。若い選手たちがアピールをガンガンすると、僕も負けられないという気持ちになりますし、もちろん、まだまだポジションを譲る気もないですし。やはり昨年は、ある程度スタメンが固まっていて、それが最後、息切れに繋がった部分があった。

 今季は連戦が増えるし、ACLも戦わなければならないので、メンバーを入れ替えながら戦うことが必要になると思います。ブラジル人選手がひとり欠場したからといって、戦力がガクッと落ちるようでは、優勝は狙えない。誰が出ても遜色ないようにしないと。だから、競争は大歓迎です」

多摩川クラシコを盛り上げ、3連勝を。

――東選手の個人としての目標は?

「個人の目標ですか? なんだろうな……ゴールを決めたいですね(笑)」

――昨年は1ゴールでしたからね。

「5得点くらいは取りたかったんですけどね(苦笑)。アシストはある程度できたので、ゴール前まで飛び出していければ、もうワンランク上の選手になれるので、狙っていきたいと思います」

――多摩川クラシコはリモートマッチとなりますが、DAZNを観ながら応援してくれるファン、サポーターの方々にメッセージをお願いします。

「みなさんのサポートをスタジアムで感じられないのは寂しいですが、画面を通してみたほうが細かいプレーや選手の表情などが見られると思うので、ぜひ楽しみながら応援してください。僕たちも画面越しでも気持ちが伝わるようなプレーをして、多摩川クラシコを盛り上げながら、3連勝を狙うので、ぜひ応援してください」

――ファン・サポーターはいませんが、勝利したら、ゴール裏に向かってユルネバを歌いますか?

「それは、ちょっと寂しいですよね(苦笑)。ユルネバはみんなで歌ってこそ。ファン・サポーターの方々がスタジアムに戻ってくるまで取っておきたいと思います。皆さんが戻ってきたときには、また一緒に歌って、勝利の喜びを分かち合いたいと思います」

文=飯尾篤史

photograph by Atsushi Iio