バスター・ポージーが出ない。ライアン・ジマーマン、ニック・マーケイキス、デヴィッド・プライス、マイク・リークも出ない。

 予期したことだが、短縮された今季の大リーグには出場辞退者が相次いでいる。

 大半が30代前半で、妻子を持つ選手だ。家族を危険にさらしたくないのは当然のことで、新型コロナウイルスの厄介さが、ここからも伝わってくる。

 それでも、開幕まで1週間を切ってくると、どんなシーズンになるかが気にかかる。年間60試合の短縮シーズン。スタートダッシュとラストスパートが鍵を握りそうなことはいうまでもないが、発表された日程を見ると、有利不利の差がくっきりと際立つ。

スタートダッシュをかけられそうなチームは?

 ご承知のとおり、今季のレギュラーシーズンは、同地区対決に限定される。

 同リーグ同地区球団とは合計40試合、別リーグ同地区球団とは合計20試合。となると当然、強豪がしのぎを削る地区での戦いは厳しくなり、そうでない地区では勝ち抜きが楽になる。

 たとえば、ナショナルズやブレーヴスといった強敵がひしめくナ・リーグ東地区に属するフィリーズと、ドジャースが群を抜いて強いナ・リーグ西地区に属するダイヤモンドバックスを比べてみると、有利不利ははっきりと認められる。

 フィリーズの場合は、2019年に勝率5割以上を記録したチームとの対戦が60試合中41試合(そのうちロードが20試合)もある。一方、ダイヤモンドバックスのほうは、前年度勝率5割以上のチームとの対戦が20試合(ロードは8試合)しかない。

 有利不利は、日程面にも表れる。スタートダッシュをかけられそうなチームの代表格は、秋山翔吾が加入したレッズだ。

「お客さん」にひとしい3球団。

 レッズは、最初の25試合中、14試合でタイガース(6試合)、ロイヤルズ(4試合)、パイレーツ(4試合)と戦う。

 失礼な言い方をするが、この3球団は「お客さん」にひとしい。2019年の負け数を見ると、タイガースが114敗(大リーグ最多)、ロイヤルズが103敗、パイレーツが93敗。負け数が3ケタのチームは、これ以外ではオリオールズ(108敗)とマーリンズ(105敗)しか見当たらない。

 一方、スタートダッシュに苦しみそうなチームはレッドソックスだ。なにしろこの地区には、ヤンキースとレイズの両雄が立ちはだかる。ヤンキースの総合力、レイズの投手力は、どちらもペナントを狙えるレベルだ。

 レッドソックスは、7月31日から8月17日にかけて、そんな両チームと13試合も対戦する。これは苦しい。ここに差しかかる前の序盤7試合で、できるだけ貯金をしておきたいところだが、今季のレッドソックスにそれほどの余裕があるかどうか。

終盤の日程が最も楽そうに見えるヤンキース。

 終盤戦の日程に眼を転じると、こちらも明暗が分かれる。終盤の日程が最も楽そうに見えるのは、なんといってもヤンキースだ。

 9月4日以降のラスト23試合の対戦相手を見ると、ブルージェイズ(昨年95敗)、オリオールズ、マーリンズ(負け数はすでに書いた)とお客さんが並んでいる。ここで楽な戦いができれば、ポストシーズンに向けて余裕が生まれるにちがいない。

 移動面で、例年よりもゆとりが生まれそうなのは、ドジャースとパドレスだろう。例年ならば、この2チームは東海岸や中西部への遠征がかなりの数にのぼる。だが、今季はそれがない。長距離移動や時差の負担が消えるのは大歓迎だろう。

アストロズはラスト22試合のうち16試合がロード。

 ドジャースを例にとると、遠くても、ヒューストン(アストロズ)、コロラド(ロッキーズ)、テキサス(レンジャーズ)、シアトル(マリナーズ)といった所に移動すればすむ。

 しかもこのうち、昨季の勝率が5割を超えたのはアストロズしかいない。このカードに勝ち越せば、3年前にサイン盗みでワールドチャンピオンを横取りされた鬱憤を晴らすこともできるだろう。

 パドレスの場合は、9月の23試合のうち、20試合がカリフォルニア州内で行われるという日程が眼につく。残り3試合もシアトルが会場だから、移動の負担は大きく軽減される。投手陣に若手有望株が少なくないだけに、シーズン終盤に波瀾をもたらす可能性がある。
 逆に、終盤の日程がタイトなのは、メッツとアストロズだ。

 メッツの場合は、ラスト10試合が3カード連続で昨季のプレーオフ・チームとの対戦だ。ブレーヴスと3試合、レイズと3試合、ナショナルズと4試合。ロードに出るのは最後のカードだけだが、大負けしたり接戦が続いたりするようだと、ポストシーズンへの展望が開けなくなる。

 アストロズは、ラスト22試合のうち16試合がロードだ。カリフォルニア→テキサス→シアトル→テキサスという移動は、シーズン終盤だけにこたえるかもしれない。

シーズン前半で見逃したくないカード。

 日程面から見た予想は、ざっとこんなところだ。ほかにもさまざまな要因が絡み合うし、選手たちの体力は超人的だから、短縮シーズンはどっちへ転がるかわからない。とりあえず、シーズン前半で見逃したくないカードを挙げておこう。

 まずは、開幕戦のヤンキース対ナショナルズ(7月23日)。これは、ゲリット・コールとマックス・シャーザーの投げ合いが見ものだ。そして7月26日のエンジェルス対アスレティックス。約23カ月ぶりにマウンドへ戻る大谷翔平に注目しよう。

 8月に入ると、13日にアイオワ州ダイヤーズヴィルで〈フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム〉が行われる(カーディナルス対ホワイトソックス)。小説の原作者W・P・キンセラや映画の主役をつとめたケヴィン・コスナーらとともに、かつて「アンラッキー・エイト」と呼ばれたホワイトソックスの選手たちの姿が蘇ることを期待したい。

 そして14日から16日にかけては、エンジェルス対ドジャースの3連戦。両チーム合わせて、MVP受賞者が5人(トラウト+プーホルス+ベリンジャー+ベッツ+カーショー)も顔をそろえるのは壮観だ。16日(日曜日)には大谷が先発登板する可能性もある。

文=芝山幹郎

photograph by Getty Images