およそ1年前には、こうした事態が起きるとは想像できなかっただろう――。

 瀬戸大也の女性問題に対し、日本水泳連盟は10月13日に処分を発表した。

 その内容は、以下の通りとなった。

〈1〉年内の活動(水連公式大会への出場、強化合宿、海外遠征への参加)停止
〈2〉スポーツ振興基金助成金の2020年下半期の推薦停止
〈3〉日本水泳連盟の教育プログラム及びJOC(日本オリンピック委員会)インテグリティ教育プログラムの受講を行うこと

予想より厳しい処分の影響

 処分の理由として、今回の件が水泳連盟が「競技者資格規則」で定めているスポーツマンシップに反したこと、その他本連盟及び本連盟の加盟団体の名誉を著しく傷つけたことに抵触すると判断したことをあげた。

(C)Asami Enomoto

 水泳連盟はプロスポーツの競技団体ではないとはいえ選手を管轄する立場にある。また瀬戸は東京五輪に内定している日本代表選手として多くのスポンサーと契約を結び、助成金も得て活動してきた。

 その立場と従来から定められている資格規則とを考慮し、処分が与えられたことになる。

 事前に予想されていたものより厳しい処分となったのは、引き起こした反響の大きさに対する部分もあるだろう。

 あらためて考えれば、瀬戸は自身の立っている場所への自覚が足りなかった、足りな過ぎた、と言わざるを得ない。

 いずれにせよ、こうして処分は下された。助成金の推薦停止、またスポンサーとの契約解除で活動資金が失われる影響は大きい。競技生活の基盤が大きく損なわれる。

実戦の機会が失われる大きすぎる打撃

 そしてそれ以上に〈1〉の「年内の活動停止」は大きな影響を及ぼす。

 今年はただでさえ新型コロナウイルスの影響で国内外の大会が次々に中止になり、選手たちは試合の場を失った。

 そんな状況から、ようやく国内でも大会が再開され始めた矢先だ。

 瀬戸はもともと、10月の日本短水路選手権、10〜11月にハンガリー・ブダペストで開催される国際リーグに出場する意向を持っていた。

 さらに12月には、本来は4月に予定されていた日本選手権が控えていた。会場である東京アクアティクスセンターはオリンピックの会場でもあるから、場慣れするための絶好の機会でもあった。

 そういう点も含めて、これら実戦の機会が失われる打撃は決して小さくない。

来夏の東京五輪に向け、大きな修正を

 しかもこれまでを振り返ると、瀬戸は試合を重ねていく中で調子を整え、上げてきた選手だ。

 そうした特徴からしても、開催そのものが貴重な大会に出られなくなることのダメージは大きい。

(C)Asami Enomoto

 加えて、大会のみならず日本代表合宿が実施される際も参加できない。高いレベルにある選手たち同士で切磋琢磨する時間は互いに刺激を与える重要なものであり、これに参加できないとなれば瀬戸にとっては大きな損失になる。

 つまりは、来夏の東京五輪に向けた強化は、大きな修正をよぎなくされる。

 大きな影響があるのは否めない。

すべては瀬戸がどうするかにかかっている

 ただし、練習そのものが禁じられたわけではない。これまでも練習を重ねてきた国立スポーツ科学センターをはじめ、プールを使用して泳ぐことはできる。

 試合には出られない年内を、「長期合宿」と見立てて強化の期間にあてることは可能だ。

 処分が下り、従前とは変わらざるを得なくなったとしても、スケジュールをはっきり見定められるようになった。

 立ち位置への自覚や理解が足りなかったことから招いた事態ではあっても、競技においてはかつての輝きを取り戻せる。

 大事なのはスケジュールを立て直し、年明け処分が解除となったあとに万全の態勢で臨めるよう、ひたむきに泳ぎ、トレーニングを積むこと。そして大会に備えること。

 いちばん大きいのは、五輪代表内定は変わらないということだ。

 長く経験を積み、調整の仕方も熟知している。

 最大の課題は瀬戸自身にある。どのように時間を使っていくか、この時間を意義あるものにできるかは本人次第だからだ。

 道は残されている。それをどう歩むか、どこにたどり着くことができるかは、瀬戸自身にかかっている。

(C)Kaoru Watanabe/JMPA

【写真】瀬戸大也を支える元飛び込み選手の美人妻・優佳さんの現役選手時代 へ

文=松原孝臣

photograph by Getty Images