「ひとりドラフト」とは、私自身が“球団”の代表者になったつもりで、実際のチーム事情とチーム作りを考え合わせながら、ドラフト候補選手たちを指名して、ひとりで「ドラフト会議」を完遂してしまう。

 そういう企画です。この1年間、野球の現場で取材を続け、選手側の関係者たち、プロ側のスカウトの方たちから聞き取った内容の“集大成”と考えています。

 セ・パ両リーグの最下位球団から指名していくのは、今まで通りですが、今年は、指名スタートが「パ・リーグ」になります。

 指名方法は現実と同じ。1位が「入札→抽選→再入札」、2位以下が「ウエーバー」です。1位の「抽選」は毎年そうなのですが、厳正な「あみだクジ」によって決定されます。そのへんが、「私製のドラフト」とご諒解くだされば……と思います。

球団ごとの現実を踏まえた「リアル・フィクション」

 なお、指名の対象になる選手ですが、高校生、大学生は「プロ野球志望届」を提出している選手に限定しました。社会人については、私が知るかぎり、「プロ志望」を打ち出している選手たちの中から選抜しました。

 各球団がどうしてそういう指名になったのか……その理由や背景を記しました。これも、この1年間の球団の動向と関係者への取材に基づいたものです。

「ひとりドラフト」はあくまでもフィクションですが、その内容は、極力現実を踏まえて考察した「リアル・フィクション」であるように努力しています。

「その1」は、実際の指名順に沿って3球団分をご披露します。さあ今年も、ひと足早く、「2020ドラフト会議」のリアルな雰囲気を味わってください(全3回の1回目/#2、#3へ続く)。 

「ドラフト上手」オリックスの1位指名は?

〔オリックス 2020年ひとりドラフト指名選手〕

1位 三塁手 佐藤輝明(近畿大) 186cm92kg 右投左打
2位 投手 小林樹斗(智弁和歌山高) 182cm86kg 右投右打
3位 投手 有村大誠(立命館大) 185cm88kg 右投右打
4位 捕手 辻本勇樹(NTT西日本)24歳 173cm73kg 右投左打
5位 投手 高野脩汰(関西大) 181cm75kg 左投左打
6位 投手 佐々木大輔(東日本国際大) 172cm75kg 左投左打
7位 投手 内星龍(履正社高) 190cm84kg 右投左打

〔オリックス 総評〕

 阪神、ソフトバンク、巨人との「4球団重複」の間隙をかいくぐっての1位・佐藤輝明(近畿大)獲得。

 これだけでも、今年のドラフトの「70%」ぐらいは成果達成か……と思ったが、オリックスは今年も「ドラフト上手」の定評を守ったようだ。

 2位以下で獲得した5人の投手。右が3人、左腕が2人。即戦力系もいれば、将来のエース候補もちゃんと組み込んで、今季こそ、最下位確定かもしれないが、ここ数年のドラフトの成果もあって、オリックスの「近未来」は明るい(……というような内容を昨年のこの項にも書いたような気がするが)。

1位佐藤輝明は1年目から「20本」も

 今の「オリックス」に、選手がいないわけじゃない。

 チーム打率リーグ3位(以下、10月17日現在)、チーム防御率だって、日本ハムと同率3位みたいなもので、盗塁数に至ってはリーグトップの81盗塁。本塁打数だけがリーグワーストの75本だが、そこは、メジャーリーガー・ジョーンズをもってしても、カバーできなかった。

 ならば、「和製大砲」に期待だ。1位佐藤のパワーと技術なら、1年目から「20本」ならクリアできると見る。同時に、懸案の「三塁手」のレギュラーも解消。なんなら、クリーンアップの一角まで埋めてしまえ。

 今のオリックスというチーム、何かドカンと刺激を与えたら、劇的に飛躍できる潜在能力を秘めているような気がしてならない。

 その「劇的飛躍」になくてはならない原動力の投手陣に、まず3位・有村大誠(立命館大)が来季の即戦力として働きそうだ。リーグ最優秀防御率を2度獲得している失点しないピッチング。その理由は角度抜群の速球と変化球を、低めのストライクゾーンに集められるコントロールだ。時に150キロに及ぶほどの速球がありながら、力任せにならない。そういう投球スタイルが大学4年間で身についた。

 2位・小林樹斗(智弁和歌山高)は将来の「エース」候補だ。強く投げようとし過ぎないで150キロ近辺を安定して続けられるコツのようなものを覚えてきた。並行してスライダー、フォークの球筋も安定。3年も4年も待たずに、一軍のマウンドを託せる投手になれると見ている。

 5位・高野脩汰(関西大)、6位・佐々木大輔(東日本国際大)の学生左腕2枚は、立ち上がりさえしのげれば、持ち球の優秀さは一級品。

 伏見寅威、若月健矢の一軍捕手陣に、敏捷なディフェンスの4位・辻本勇樹(NTT西日本)の加入は大きい。大学、社会人ですぐにレギュラーマスクを獲得した野球カンの鋭さは、レベルが上がるほどその威力を発揮する。

 高校では2番手ながら、変化球も器用に操る大型右腕の7位・内星龍(履正社高)は、時間をかけて少しずつレベルアップしてほしい未完の大器である。

ヤクルトは即戦力投手で地盤強化

〔ヤクルト 2020年ひとりドラフト指名選手〕

外れ 投手 早川隆久(早稲田大) 180cm76kg 左投左打
1位 投手 伊藤優輔(三菱パワー)23歳 178cm77kg 右投右打
2位 投手 大道温貴(八戸学院大) 178cm78kg 右投右打
3位 捕手 牧原巧汰(日大藤沢高) 174cm78kg 右投左打
4位 投手 豆田泰志(浦和実高) 175cm75kg 右投右打
5位 二塁手 度会隆輝(横浜高) 182cm81kg 右投左打
6位 投手 福島章太(倉敷工高) 176cm90kg 左投左打
7位 三塁手 渡部健人(桐蔭横浜大) 175cm105kg 右投右打

〔ヤクルト 総評〕

 12球団各チームちょうど100試合前後の「試合数」で横に並んだ今の段階で、チーム失点「509」は、抜けて12球団ワースト。ヤクルトは99試合だから、1試合平均およそ5失点するのに、チーム得点406は1試合平均およそ4点しか取れないのだから、なかなか勝てないのはわかる。

 しかし、打線には若き村上宗隆内野手がドーンと君臨して、打線の軸はしっかりとしている。

 というわけで、1年目から10勝前後を計算できそうな早川隆久(早稲田大)でいくのは“常套”だろうが、千葉ロッテ、西武、横浜と合わせて4球団重複の厚い壁を突破できず……2度目の入札では、重複を嫌ったか、1位・伊藤優輔(三菱パワー)を指名して、交渉権を得た。

 さらに、ウエーバー順2番目で、2位・大道温貴(八戸学院大)を指名して、「即戦力系」2枚の獲得を果たした。共に、よく似た背格好の右投げオーバーハンド。しかし、タイプは違って、大切な部分に共通項を持つ。

 伊藤の速球は、速くて破壊力あり。「芯で捉えた!」とときめいた打球がフェンス手前で失速。つまり「剛速球」、凡打の山を作るタイプだ。一方の、大道の速球は、抜群のバックスピンを帯びて、打者のスイングの上方を通過。空振りの三振が奪えるタイプだ。

 共に、スライダー、カット、チェンジアップにスプリット……カウント球にも勝負球にも使える複数の変化球を兼備する。 それ以上の共通項が、ピンチにもひるまず、打者に向かっていける果敢なファイティングスピリット。負けが込むチームには、何より必要な資質であろう。

ヤクルト「次期レギュラーマスク」候補

 今年のヤクルトのドラフト、その「ハイライト」は牧原巧汰(日大藤沢高)の3位指名だ。レギュラーマスクと目された中村悠平が故障で、今は西田明央が代わって奮闘しているが、若手だ、若手だと思っていた西田もいつの間にか10年目。

「次期レギュラーマスク」の見通しも立っていない今、間違いなく、打てて守れる捕手の資質を持った牧原の獲得は「朗報」だ。 牧原の場合、一級品の身体能力に加えて、それ以上の「野球技術」を持っているのが強い。全国的には無名でも、3年目での一軍定着も十分ありの逸材だ。

 父親・博文氏が元ヤクルト内野手の5位・度会隆輝(横浜高)のバッティング技術は、父親以上だろう。

 バットを両腕の延長のように使えるバットコントロールは、最近の高校生では見たことのない達者な「芸」だ。あとは、インパクトでバチーンといける強さ…瞬発力を養えば、横浜高の偉大な先輩・近藤健介(日本ハム)に匹敵するようなアベレージヒッターも夢じゃない。

 純粋なオーバーハンドから投げ下ろす速球が、下からホップしてくるように見える4位・豆田泰志(浦和実高)は「武田久(日本ハム)二世」だし、福島章太(倉敷工高)はこんなに球筋の見にくい左腕も珍しい。

 7位の渡部健人(桐蔭横浜大)のバッティングには、「右打ちの佐野恵太(DeNA)」の資質を感じている。決してパワーに頼らない。ボールを長く見られて、しなやかなハンドリングで広角に打球を飛ばす。アベレージも飛距離も期待してよい「バットマン」だ。

日ハムは投手陣に厚みを

〔日本ハム 2020年ひとりドラフト指名選手〕

1位 投手 伊藤大海(苫小牧駒大) 176cm82kg 右投左打
2位 投手 入江大生(明治大) 187cm83kg 右投右打
3位 左翼手 今川優馬(JFE東日本)23歳 176cm84kg 右投右打
4位 中堅手 並木秀尊(獨協大) 170cm70kg 右投右打
5位 投手 シャピロ・マシュー・一郎(國學院栃木高) 191cm93kg 右投右打
6位 一塁手 秋広優人(二松学舎大附高) 200cm95kg 右投左打
7位 投手 奈良木陸(筑波大) 184cm87kg 右投右打

〔日本ハム 総評〕

 地元北海道から久々に……というか、もしかしたら、道産子球児歴代No.1かもしれない。

 そこまでの期待を背負って、1位・伊藤大海(苫小牧駒澤大)が「新・札幌ドーム」のマウンドに挑む。コンスタントに150キロ前半をマークする速球は、試合終盤で「MAX」を出すこともある。スライダー、カットボールを交えて、ここ一番を三振で切り抜けてみせるエースの矜持は、見事なまでだ。

 オレが投げずに誰が投げる! そんなマウンドの支配感がすばらしい。

 ローテーションの一角を期待できる伊藤大海に対して、「後ろの3人」候補で2位・入江大生(明治大)か。 150キロ近い速球にツーシームとフォーク…角度抜群で圧倒できる球威だ。

間違いなく「足」で食える

 大田泰示、西川遥輝、近藤健介……磐石の3人がいて、その後がなかなか見えてこない「外野手」は、そろそろ待ったなしのタイミングに差しかかってきた模様だ。

 間違いなく「足」で食える4位・並木秀尊(獨協大)は、外野守備でも十分貢献できるが、バッティングを猛勉強して外野の一角を奪い、「盗塁記録」を狙ってほしいほどのスピードの持ち主。

 3位・今川優馬(JFE東日本)はバットマンだ。長打がきびしそうな場面は、逆方向へ狙いを切り換えるバッティングの「TPO」を心得ていて、本人、もちろんレギュラー狙いでいくのだろうが、私には、最近とんといなくなった「代打男」の匂いも感じるのだ。

“とんでもない掘り出しもの”

 夏の「合同練習会」で突如現れた5位・シャピロ・一郎(國學院栃木高)は、とんでもない掘り出しものだ。これだけのサイズでボディバランスが抜群。140キロ後半を続けて、スライダー、フォークの球筋もきちんとしていて、これで、この6月までは成長痛で野球にならなかったというのだから、どんだけ隠し持ってるんだ……って話だ。

 やはり身長2mのサイズがあって、180cm台のような俊敏なプレーができるのが、6位・秋広優人(二松学舎大附高)の将来性だ。大味感がない。このサイズでしなやかさや柔軟性を感じるのだから逸材だ。投手、三塁手、外野手……どの可能性を追いかけるのか。

 7位・奈良木陸(筑波大)のパワフルな投げっぷりと、そこまで荒れないコントロール、タテのスライダーとフォークのキレは、立派に「隠し玉」だ。大学院で研究者の道を行くはずだったのが、急成長で急遽方向転換したという。高学歴好みの日本ハムにはうってつけの存在かもしれない。

(ドラフト全指名予想#2【広島・西武・DeNA編】、#3【楽天・阪神・ロッテ編】へ続く。※【中日・ホークス・巨人】の指名予想は#3に記しています)

文=安倍昌彦

photograph by JIJI PRESS