「2020ひとりドラフト予想」の第2回は、広島、西武、DeNA編。各球団、どのような構想でどんな選手の名前を挙げてくるのだろうか(全3回の2回目/#1、#3へ)。

広島は「即戦力」投手を1位指名

〔広島 2020年ひとりドラフト指名選手〕

1位 投手 栗林良吏(トヨタ自動車)24歳 177cm80kg 右投右打
2位 投手 平内龍太(亜細亜大) 186cm90kg 右投右打
3位 投手 藤野幹大(日本文理大) 191cm80kg 右投右打
4位 投手 辻垣高良(学法福島高) 180cm80kg 左投左打
5位 投手 加藤翼(帝京大可児高) 178cm80kg 右投右打
6位 投手 桑原秀侍(神村学園高) 175cm77kg 右投右打
7位 投手 近藤廉(札幌学院大) 182cm88kg 左投左打

〔広島 総評〕

 本当なら、森下暢仁と左右のローテーションの軸になれそうな早川隆久(早稲田大)だって、鈴木誠也との左右のクリーンアップ確実の佐藤輝明(近畿大)だって、いきたかったはずだ。

 しかし、今のカープに、3球団、4球団競合のリスクに挑めるだけの余裕はなかった。

 とりわけ「投手陣」だ。

 今季、戦列を離れたり、戦列復帰が果たせなかった投手を挙げれば、大瀬良大地、今村猛、岡田明丈、中崎翔太、薮田和樹、一岡竜司、アドゥワ誠……そこに、野村祐輔の手術の報まで加わった。

 体調万全なら、強力投手陣が1チーム分作れそうなメンバーだ。

 何がなんでも、確かな即戦力を「1位」で。しかも「単独」か、重複してもせいぜい2球団……そんな狙い、いや願いで指名した1位・栗林良吏(トヨタ自動車)に、他球団が1つも指名しなかったのだから、カープ、まだわずかながらも「持っている」。不調でもなんとか試合を作って勝ちを呼び込む高い実戦力を持つ栗林。チームに「勝ち」が欲しい状況では、「MAXなんキロ」のハデな数字よりどれだけありがたいか。

 「カープ復活」の足掛かりとなれ!

藤野幹大は来季新人王の隠れた「目玉」

 2位・平内龍太(亜細亜大)はリリーフ陣の一角を期待しての指名だ。豪快に投げ下ろす150キロ前後の速球とフォークボール。亜大の大先輩でカープの守護神をつとめた永川勝浩(現・二軍コーチ)の再来となれるか。

 今年のカープは、結果的に7人全員「投手」で攻めた。

 3位で狙っていた和製大砲候補・古川裕大(上武大)を、2つ前でDeNAに持っていかれたのが痛かった。4位からの4投手は、5年後の「最強カープ」の中軸を期待しての指名だ。

 いつでもストライクがとれるスライダーとチェンジアップがあって、他にも多彩な変化球の140キロ前後の速球で先発タイプの4位・辻垣高良(学法福島高)、バックスピン抜群の140キロ後半の快速球で「藤川球児」をめざす5位・加藤翼(帝京大可児高)。

 パワーピッチャーのようで140キロ後半の速球と変化球にしっかりした球道を持つ6位・桑原秀侍(神村学園高)は「6位ではムリだろう……」と半分あきらめていた剛腕。この1年で急激にスピードアップした無名左腕・近藤廉(札幌学院大)を7位で指名して締めくくった。

 ところで、3位指名の藤野幹大(日本文理大)だ。191cmのサイドハンド。長いリーチが存分にしなって、それだけでも見にくくタイミングが難しいのに、速球、スライダー、シンカーを両サイド低めに集められる。こんなピッチャー見たことない。

 ひと足も、ふた足も早いが、来季新人王の隠れた「目玉」だと勝手ににらんでいる。

迷いに迷った西武の1位は……

〔西武 2020年ひとりドラフト指名選手〕

1位 投手 早川隆久(早稲田大)180cm76kg 左投左打
2位 二塁手 牧秀悟(中央大) 178cm92kg 右投右打
3位 投手 藤井聖(JX−ENEOS)24歳 176cm80kg 左投左打
4位 投手 田澤純一(BC埼玉) 180cm90kg 右投右打
5位 遊撃手 萠拔哲哉(JR九州) 24歳 179cm73kg 右投左打
6位 投手 森田駿哉(ホンダ鈴鹿) 23歳 185cm87kg 左投左打
7位 右翼手 宮本ジョセフ拳(名古屋学院大) 175cm87kg 右投右打

〔西武 総評〕

 最後まで「1位」で迷った。

 昨季はリーグ優勝したもののチーム防御率リーグワースト、今季も同じく……その「投手陣」立て直しなのか。それとも、秋山翔吾(レッズ)の穴が埋まらず、おかわりくん・中村剛也に翳りが見える「山賊打線」の後継者でいくのか。

 迷った末に指名した早川隆久(早稲田大)を4球団重複を乗り越えて引き当てたのだから、それだけで、もはや今ドラフトは「100点」であろう。

 しかし、今年の西武はその後もよかった。トータルで150点から200点、「会心の指名」である。

 2位でしっかり「和製大砲候補」の牧秀悟(中央大)を手中に収め、3位・藤井聖(JX−ENEOS)は24歳のわりに伸びしろがあって、変化球でストライク先行できる投球には「先発」の目もある。来季2年目の浜屋将太頼みの左腕投手陣になりかねなかったところを、早川、藤井の即戦力左腕コンビで一気に挽回だ。

 牧は、大学では遊撃、二塁とこなしてきたが、西武では「三塁手」で使いたい。はっきり、おかわりくんの後釜である。

 腰を据えてバッティングに取り組めば、プロでも3割・20発以上……バットとボールの接触時間が長く感じるスイング軌道は、DeNAのバッティング職人・宮崎敏郎(内野手)に通じる才能を感じる。

メジャー帰りの田澤を4位で

 そして、メジャー帰りの田澤純一(BC埼玉)を4位で押さえる。

 正直、BCリーグでの投球を見る機会がなかったのだが、私が信頼している「観戦談話」としては、「打者の顔色を見極めながらタイミングを外して、丁寧に狙ったコースを突く……スピードばっかり欲しがっているこっちの若い連中に見せたいようなピッチングだった」。リリーフで「年季」の入ったところを見せてほしい。

 名手・源田壮亮遊撃手の休まない強さには頭が下がるばかりだが、万が一大きな故障でもして……そんな心配がいつもつきまとっていたのが、5位・萠拔哲哉(JR九州)の加入で、「名手の後に名手が控える」という構図が確立。西武のセンターラインに、さらに芯が通る。柔軟さと強さを兼備したメリハリの効いたフィールディング、ぜひご堪能を。

 6位・森田駿哉(ホンダ鈴鹿)は「ゴールデンシート」だ。平井克典、柘植世那……ホンダ鈴鹿→西武5、6位は「出世街道」になりつつある。すべては左腕の体調次第、万全なら150キロだって投げてみせる大型左腕だ。

 「太陽の子」、陽性な外向きのエネルギーを発散させる、強肩・俊足の7位・宮本ジョセフ拳(名古屋学院大)。「ジョセフ坊や」みたいなキャラクターグッズが生まれそうな人気者の資質いっぱいのナイスガイだ。

DeNAの“外れ1位”は?

〔DeNA 2020年ひとりドラフト指名選手〕

外れ 投手 早川隆久(早稲田大) 180cm76kg 左投左打
1位 投手 高田孝一(法政大) 183cm88kg 右投右打
2位 投手 森博人(日本体育大) 177cm80kg 右投右打
3位 捕手 古川裕大(上武大) 185cm91kg 右投左打
4位 遊撃手 細川凌平(智弁和歌山高) 176cm73kg 右投左打
5位 投手 佐々木健(NTT東日本)24歳 179cm85kg 左投左打
6位 投手 高橋康二(BC福井)25歳 190cm87kg 右投右打
7位 右翼手 寺本聖一(広島商高) 169cm77kg 左投左打

〔DeNA 総評〕

「左腕王国」が徐々に危うくなっている。

 東克樹のカムバックが見えず、エース今永昇太が左肩のクリーニングで戦列を離れ、リリーフで奮投した砂田毅樹にも一時の精彩が見られず、浜口遥大、石田健大が踏みとどまってはいるが、翳りが見えているのは「現実」だろう。

 早川隆久(早稲田大)の喪失は仕方ない。4球団重なれば不運が大きくなるのは、自明の理だ。

 むしろ、5位・佐々木健(NTT東日本)が面白い。ハマれば、浜口遥大タイプのパワーピッチャーになれる。内蔵しているエンジンの大きさは間違いなく一級品。それが、なかなか「野球」の技能につながらないでここまで来た。

 繰り上げ1位・高田孝一(法政大)、2位・森博人(日本体育大)の2人は、まずリリーフで実績を作ることからだろう。高田はパワーとドスーンと来る150キロ前後の球が特徴。森は大学4年間で別人のような体躯を獲得。一見パワータイプに見えるが、本質は「切れ味」だ。スピンの効いた140キロ後半と急激なタテの変化で勝負。自分で考え、工夫しながら、自分から練習できる内面も頼もしい。

7位の高校生は「小さな怪物」

 指名は6位でも、高橋康二(BC福井)には「1年目から!」の期待がかかる。苦労しながらNPBをめざし、やっと実現した夢のマウンドから角度抜群の重い速球とスプリットで「本気勝負」をかける。

 4年目の4番・佐野恵太の台頭はすばらしいが、先を見通すと、もう一枚足りない。

 そこで、3位・古川裕大(上武大)の雄大な「放物線」に賭けた。田代富雄コーチの現役当時、夜空を見上げた大アーチが懐かしい。「お、オレみたいなヤツが入ってきたな……」、果たして、そう言わせることができるだろうか。

 4位・細川凌平(智弁和歌山高)、7位・寺本聖一(広島商高)の2人の高校生。サンショは小粒でピリリと辛い……じゃないが、野球のエッセンスがビッシリ詰まった“逸材”だ。

 中堅手から転向半年で「遊撃手」を手の中に入れた細川は、場数を重ねるほどに伸びてくる野球センスの塊。

 寺本の突き抜けた走攻守と野球小僧ぶりは、3年目あたりからの向こう10年、ベイスターズのリードオフマンをつとめ続けられる資質は十分ある。よそがマークを外していたから「7位」だが、実力だけで評価したら、2位、3位でもぜんぜんおかしくない「小さな怪物」だと考えている。

(ドラフト全指名予想#1【オリ・ヤクルト・日ハム編】、#3【楽天・阪神・ロッテ編】、※【中日・ホークス・巨人】の指名予想は#3に記しています)

文=安倍昌彦

photograph by KYODO