10月26日に行われたプロ野球ドラフト会議2020。今年は早川隆久(早稲田大)、佐藤輝明(近畿大)に4球団が競合するなど、大学生の1位指名が集中した。改めて12球団の指名を振り返りたい。狙い通りに指名できた球団は?(全2回のセ・リーグ編/パ・リーグ編へ続く)

 1位の単独指名はパ・リーグの1球団(日本ハム)に対してセ・リーグは中日、DeNA、広島の3球団。2019年は広島とDeNA、18年は西武のみ、17年は広島とDeNAが単独指名したというのが3年間の流れである。こうしてみるとパ・リーグは競合するような好選手をリーグの総意で獲得に向かう――パ・リーグに入ればOK――という傾向が見て取れる。それが近年の「パ高セ低」の現象を生んでいるかもしれない。

 とは言っても、今年は春夏の甲子園大会をはじめとして、全日本大学野球選手権(以下、大学選手権)、社会人の日本選手権など、スカウトの前で実力をアピールする晴れ舞台が中止になり、ドラフト候補たちの実力を判断するべき場所が限られていた。単独指名された高橋宏斗(投手・中京大中京高→中日)、栗林良吏(投手・トヨタ自動車→広島)、伊藤大海(投手・苫小牧駒澤大→日本ハム)は投げる機会がもっと多ければ重複する球団はあったかもしれない。

 これらのことを頭に置いて、各球団の指名がよかったのか悪かったのか独断で判断して採点していくことにする。

外れ外れ1位の木澤はワンランク上?

◇ヤクルト 65点◇
× 早川隆久(投手・早稲田大)
× 鈴木昭汰(投手・法政大)
1位 木澤尚文(投手・慶應大)
2位 山野太一(投手・東北福祉大)
3位 内山壮真(捕手・星稜高)
4位 元山飛優(内野手・東北福祉大)
5位 並木秀尊(外野手・獨協大)
6位 嘉手苅浩太(投手・日本航空石川高)
<育成>
1位 下慎之介(投手・健大高崎高)
2位 赤羽由紘(内野手・BC信濃)
3位 松井聖(捕手・BC信濃)
4位 丸山翔大(投手・西日本工業大)

 早川、鈴木を1位の抽選で外したヤクルトは、外れ外れ1位でもやはり東京六大学リーグの好投手である木澤尚文の交渉権を獲得した。ヤクルトが東京六大学リーグの投手を指名したのは2016年2位の星知弥(明治大)以来4年ぶり、1位となると分離ドラフト下の07年大社1巡の加藤幹典(慶應大)以来13年ぶりとなった。

 外れ外れ1位だが木澤は堂々たる本格派である。ストレートは最速155キロを計測し、それ以上に落差の大きいカーブ、大きく横に変化するスライダーや鋭く変化する縦カットボールなど多彩な変化球を四隅に集めて毎試合ゲームメイクできる。近年、ヤクルトはバランス型の投手を多く指名しているが、そういう投手たちとくらべてもワンランク上の球威、変化球の精度を持っていると言っていい。

4位元山飛優は大学タイトル総なめ

  2位以下では4位元山飛優のショートの守備が目立つ。昨年の大学選手権2回戦・創価大戦では、初回のセンターへ抜けそうなゴロをさばいてアウトにしたプレーが今でも記憶に残っている。クリーンアップを打ってきた打撃も安定し、2年春にはMVP、ベストナイン、打率、打点で1位を獲得するなどタイトルを総なめ。現役大リーガーの触れ込みで活躍が期待されたエスコバーがいまいちインパクトを残せていないだけに、1年目からポジション奪取の期待がかかる。

栗林の“単独指名”は不思議?

◇広島 70点◇
1位 栗林良吏(投手・トヨタ自動車)
2位 森浦大輔(投手・天理大)
3位 大道温貴(投手・八戸学院大)
4位 小林樹斗(投手・智弁和歌山高)
5位 行木俊(投手・四国IL徳島)
6位 矢野雅哉(内野手・亜細亜大)
<育成>
1位 二俣翔一(捕手・磐田東高)

 1980年代の津田恒美、長冨浩志、佐々岡真司を単独1位で獲得した広島の戦略は“社会人の一本釣り”と言われ、カープを上位球団に押し上げる原動力になった。近年は大学生投手の野村祐輔(明治大)、岡田明丈(大阪商業大)、森下暢仁(明治大)を競合なしの一本釣りで指名しているが、今年は社会人No.1の触れ込みの栗林良吏を指名。社会人の上位指名となると15年2位で獲得した横山弘樹(NTT東日本)以来となる。

 栗林は“単独指名”が不思議なほどの実力派だ。ストレートは毎試合150キロ以上を計測し、大きい落差で落ちるカーブは森下クラスのキレがある。縦変化のスライダー、カットボール、フォークボールなど多彩な変化球を四隅に配する制球力も備えているため、即戦力と見ていい。

欠点が少ない大道温貴、小林樹斗はリリーフ候補

 3位の大道温貴はキレのいいストレートとカーブ、スライダー、チェンジアップを交えた緩急に持ち味がある。昨年の大学選手権1回戦・佛教大戦では8回1/3を投げて10三振を奪っているが、そのうち7個がスライダーなど変化球によるものだった。欠点のない美しい投球フォームも活躍を後押ししてくれるはずだ。

 4位の小林樹斗はチームが抱えるリリーフ不足解消の期待がかかる。最速152キロのストレートを前面に押し出すパワーピッチングに持ち味があり、19年夏の甲子園大会3回戦・星稜戦では上半身主導の投球フォームを試合中に下半身主導に直した修正能力も見せている。

森敬斗に続く2年連続の単独指名

◇DeNA 50点◇ 
1位 入江大生(投手・明治大)
2位 牧秀悟(内野手・中央大)
3位 松本隆之介(投手・横浜高)
4位 小深田大地(内野手・履正社高)
5位 池谷蒼大(投手・ヤマハ)
6位 高田琢登(投手・静岡商業高)
<育成>
1位 石川達也(投手・法政大)
2位 加藤大(投手・横浜隼人高)

 DeNAは1位で入江大生を単独指名した。過去5年では東克樹(立命館大)、森敬斗(桐蔭学園高)に続く一本釣りだ。これを戦略と見る人もいるが私は勇気のない指名と考え、低く評価した。

 入江の評価が上がったのは2020年10月11日の法政大戦だろう。高田孝一(法政大→楽天2位)が5回降板したのを横目に9回を7安打に抑えて完封。特に光ったのは4回までの変化球主体の技巧的ピッチングだ。カーブ、カットボール、フォークボール主体に打たせて取る投球を展開、その様子が最初はストレートに自信が持てないように見えたが5回以降ストレートを多用し、法大の強力打線を見事に抑えた。

  ただし、4年間の通算成績4勝7敗、防御率2.77がどうしても気になる。縦変化のカーブも先輩・森下暢仁(広島)のようなキレはまだ持ち得ていない。課題克服が長く活躍するポイントになるだろう。

山田哲人を彷彿させる牧秀悟

  私が期待するのは2位の牧秀悟だ。20年9月22日の東洋大戦では4回にセンターへ抜けようかという打球を逆シングルで好捕したあと、すぐ体勢を整えて一塁に投げてアウトを奪う華麗なプレーを目撃した。守備範囲の広さ、強肩などプロに入ってもレギュラーを張れる安定感がある。

  一方、打撃も3年秋までに71安打を記録し、18年秋は遊撃手として、19年春、秋には二塁手としてベストナインに輝き、19年秋はMVP、19年春には首位打者を獲得している。リストの強いバッティングや二塁というポジションが山田哲人(ヤクルト)を思わせ、私の評価は即戦力。

  それでもDeNAの評価が低いのは、球団のドラフト戦略にやや疑問が残るためだ。

佐藤輝明と柳田、大谷の共通点

◇阪神 90点◇
1位 佐藤輝明(内野手・近畿大)
2位 伊藤将司(投手・JR東日本)
3位 佐藤蓮(投手・上武大)
4位 榮枝裕貴(捕手・立命館大)
5位 村上頌樹(投手・東洋大)
6位 中野拓夢(内野手・三菱自動車岡崎)
7位 高寺望夢(内野手・上田西高)
8位 石井大智(投手・四国IL高知)
<育成>
1位 岩田将貴(投手・九州産業大)

 2016年に単独1位で大山悠輔を獲得して以降、17年の清宮幸太郎(早稲田実業高)、安田尚憲(履正社高)、18年の藤原恭大(大阪桐蔭高)と、果敢に高校生の競合に参戦してきた。チームを大きくしようとする姿勢には納得できるものがあり、その攻めの姿勢が4球団に1位入札があった佐藤輝明の当たりクジを引く幸運につながったと見る。

 佐藤の打撃の大きな特徴は小さく慎重な始動とステップ、そしてボールを捉えるミートポイントが捕手寄りにあるということだ。反動を抑えた無駄のない動きで、ボールを長く見ることによって確実性を増す、という狙いがこの2つのことから見えてくる。

 しかし、佐藤はヒット量産タイプではなく一発長打のタイプである。差し込まれる恐れがある捕手寄りのミートポイントを変えずにホームランを量産するというのは、日本的ではなくメジャーリーグの強打者に見られる特徴だ。日本の打者では柳田悠岐(ソフトバンク)や大谷翔平(エンゼルス)くらいしか見当たらない。こういう難しい打ち方をする選手が1年目からレギュラーを張れるほど日本のプロ野球は甘くないが、レギュラーに定着したあとは打撃タイトルを毎年取るようなスケールの大きい打者に成長しているのでは、という期待をさせる。

絶対的な決め手を欠く二遊間

 そのほかの指名を見ると、2位伊藤将司、3位佐藤蓮は阪神にはいないタイプの投手だ。すぐに甲子園のマウンドで見ることができそうな即戦力だろう。

 一番の注目は6位中野拓夢だ。堅実なショートの守備と小技にとどまらない小力のある打撃で注目を集めている。育成も目的としたアジアウインターベースボールリーグ(プロ野球選抜やJABA選抜など6チームが参加)では19年に打率.371(打撃成績2位)を記録。ホームランも1本放った。阪神の二遊間は中堅世代の木浪聖也、糸原健斗、北條史也、植田海に加え、若手の小幡竜平がポジション争いを展開している状況だが、絶対的な決め手を持つ選手はいない。中野はここに割って入る力が十分ある。

高橋宏斗を応援したくなる理由

◇中日 85点◇
1位 高橋宏斗(投手・中京大中京高)
2位 森博人(投手・日本体育大)
3位 土田龍空(内野手・近江高)
4位 福島章太(投手・倉敷工業高)
5位 加藤翼(投手・帝京大可児高)
6位 三好大倫(外野手・JFE西日本)
<育成>
1位 近藤廉(投手・札幌学院大)
2位 上田洸太朗(投手・享栄高)
3位 松木平優太(投手・精華高)

 1位高橋宏斗は当初、慶應大進学の準備を進めていたが、これに失敗して急遽プロ志望届を提出した。プロ志望を語る高橋の表情に“暗さ”がなかったのが意外で、夢の実現のため精一杯努力をしたという満足感がその表情には溢れていた。こういう選手は応援したくなる。

 もちろん、実力もピカイチだ。明治神宮大会を制した昨年秋もストレートの速さや変化球の精度が高く、ドラフト1位候補の前評判に疑いはなかったが、20年夏に行われた交流試合、智弁学園戦ではさらに躍動感溢れる投球フォームから投じられるストレートの威力に目を見張った。

地元球団である中日に指名された高橋宏斗(中京大中京高校)。「成長」を誓った

 ドラフト採点とは関係ないが、中京大中京は新チームも強く、高橋の後を継ぐマウンドには2年生の畔柳(くろやなぎ)亨丞という剛腕が立っていた。高校球界では新型コロナウイルスの影響のため数少ない公式戦には3年生を優先して出場させたいという温情采配が目立った。つまり下級生には出場機会が削られる状況があったわけだが、それでも中京大中京には2年続けて150キロを超すストレートを投げる剛腕が現れ、野手のレベルも高い。こういうチームで育った高橋には技術的な信頼感がある。

1位候補だった森博人を2位指名

 2位森博人も1位指名が噂されていた大物だ。2020年9月19日の武蔵大戦では7回をヒット1本に抑え、ストレートの威力だけではない内外を正確に突くコントロール、さらにスライダー、カットボール、カーブ、フォークボールを操る投球術に改めて舌を巻いた。現在の中日はイキのいい若手がどんどん輩出している状況だが、先発、リリーフとも万全ではない。ゲームメイクできる力があるのでまずは先発として力量を見たい。

平内龍太は出世魚タイプ?

◇巨人 65点◇
× 佐藤輝明(内野手・近畿大)
1位 平内龍太(投手・亜細亜大)
2位 山崎伊織(投手・東海大)
3位 中山礼都(内野手・中京大中京高)
4位 伊藤優輔(投手・三菱パワー)
5位 秋広優人(内野手・二松学舎大附高)
6位 山本一輝(投手・中京大)
7位 萩原哲(捕手・創価大)
<育成>
1位 岡本大翔(内野手・米子東高)
2位 喜多隆介(捕手・京都先端科学大)
3位 笠島尚樹(投手・敦賀気比高)
4位 木下幹也(投手・横浜高)
5位 前田研輝(捕手・駒澤大)
6位 坂本勇人(捕手・唐津商業高)
7位 戸田懐生(投手・四国IL徳島)
8位 阿部剣友(投手・札幌大谷高)
9位 奈良木陸(投手・筑波大)
10位 山崎友輔(投手・福山大)
11位 保科広一(外野手・創価大)
12位 加藤廉(内野手・東海大海洋学部)

  1位で佐藤輝明を抽選で外した巨人は、すぐに即戦力タイプの本格派右腕である平内龍太に舵を切った。「即戦力タイプ」と書いたが、3年秋までに4勝4敗、防御率2.20というのが東都大学リーグでの通算成績。ストレートの最速は156キロと速いが、2020年9月22日の立正大戦では3番手でリリーフ登板し、2回1/3を投げて被安打2、四球1、死球1、三振3というやや粗っぽい内容だった。

 ストレートは魅力だが、変化球のときとは腕の角度や振りが変わり、打者は打ちづらそうには見えなかった。3月に右ヒジのクリーニング手術を行った影響で調整遅れはあったのだろう。ルーキー年より2、3年目に本格化する出世魚タイプだと思う。

スカウトをニンマリさせる山崎伊織の投球

 2位山崎伊織は勇気ある指名だった。20年6月にトミー・ジョン手術を行った影響でプロではなく社会人入りの準備を進めていた。それが急遽、プロ志望に転換。登板には1年半くらいかかるのが通例なのでデビューは2021シーズンあたりになるだろうが、プロ2、3年目から台頭する大学、社会人出身などざらにいる。実力は1位入札クラスだ。

 19年夏の大学選手権1回戦・立命館大戦では先発し、6回1/3を投げて被安打5、奪三振8、失点3という内容だった。点は取られたがストレートは最速153キロを計測し、さらによかったのが横に大きく変化するスライダー。巨人の当時のスカウト部長が「今日はこの選手を見られたので最高」と満面の笑みで応えてくれたのが強く印象に残っている。

秋広優人は駒田級? 大量指名の育成も期待

 個人的に推したいのは5位秋広優人という選手。2メートルの長身で投手も務めるが、マウンドに立つと頼りない下半身が打席に立つとピシッと見える。長身を窮屈に使っていないのがよく、うまく育てば駒田徳広クラスに成長するかもしれない。

 12人と大量指名となった育成ドラフトでは岡本大翔、笠島尚樹、奈良木陸あたりに期待。指導陣の手腕に期待したい。

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文=小関順二

photograph by Kyodo News