自然豊かな山麓で育てられた玖珠産のおおいた豊後牛。肉質はやわらかく、甘くてまろやかだ。玖珠町はスーパー種雄牛「糸福」(1983〜2002年)を出すなど、県畜産界をリードしてきた。玖珠牛の歴史や魅力を取材した。 

〇銘牛が次々と 「豊後が日本一」有名に
 玖珠町やJA玖珠九重などによると、玖珠郡からはこれまで全国に名の知れた和牛が複数誕生している。古くは1921年に東京で開かれた全国畜産博覧会。郡畜産組合(当時)が出品した「千代山号」が1等を獲得し、「牛は豊後が日本一」と評された。
 83年に銘牛「糸福」が玖珠町内の農家で生まれ、翌年に県畜産試験場(竹田市久住町)に買い上げられた。糸福の子は肉質と発育の両方を兼ね備え、県平均より10万円以上高い値で取引されたという。18歳2カ月(人間に換算すると90歳以上)で大往生するまでの間、約4万頭を世に送り出した。
 「糸福」の子「寿恵福」(97〜2014年)は和牛のオリンピックと称される全国和牛能力共進会(02年)で、県勢初のグランドチャンピオン(内閣総理大臣賞)を獲得。父と同じく種雄牛として活躍し、豊後牛の銘柄確立や改良に貢献した。
 元畜産担当の町職員で、糸福の全盛期を知る町内帆足、農業佐藤左俊(さとし)さん(72)は「全国から買い付け業者が大分に来ていた。玖珠産の牛であり誇らしかった」と振り返る。
 郡内の畜産関係者らは2000年、糸福の功績に感謝し、町内塚脇のAコープくす店前に等身大の像を完成させた。通行量の多い国道210号沿いにあり、町のシンボルの一つとなっている。佐藤さんは「あの頃と比べると、農家数も減っている。もっと多くの若い世代が畜産に興味を持ち、担ってもらいたい」と願う。

〇久留島流すき焼き こだわりの「地元産」
 玖珠町では地元のおおいた豊後牛を使ったすき焼きを、町の名物にしようという取り組みが昨年12月から始まった。町出身の口演童話家・久留島武彦(1874〜1960年)の好物だったことから「久留島流すき焼き」の名で、道の駅「童話の里くす」で販売を開始。森まちなみ情報発信施設「カネジュウ館」も1月から、試験的にディナータイムでの提供を始めた。
 町などによると、すき焼きは久留島の弟子が随筆に記していたレシピを参考に作り方を研究。玖珠産の食材にこだわり、鍋の底にタマネギを敷き詰め、甘味を際立たせているのが特徴だ。
 観光情報の発信や飲食物の販売などをしているカネジュウ館は通常、午前10時〜午後4時までの営業(月曜日は休み)。事前に申し込みがあり、スタッフや食材の調整などができた場合、営業時間終了後に飲食部門を再オープンする。
 「多くの人に食べてもらいたい。久留島流すき焼きの取り組みが町全体に広がり、地域活性化につながってほしい」と期待する。
 問い合わせはカネジュウ館(TEL0973・77・2180)。

〇研究熱心な農家 畜産振興へ切磋琢磨
 玖珠町によると、2019年2月現在、町内には子牛を産ませる繁殖農家が131戸、子牛を出荷するまで育てる肥育農家が2戸あり、計4500頭以上を飼育している。17年に仙台市で開催された第11回全国和牛能力共進会では、玖珠郡和牛育種組合が繁殖雌牛群の部など3部門で、3位入賞を果たした。
 当時の組合長だった梶原美行さん(73)は立役者の一人。繁殖と肥育を一貫して担う「グリーンストック八幡」=町内山下=を経営し、約250頭を育てている。
 梶原さんによると、玖珠牛は体積が大きく、発育が良いことなどが特徴。食べた際の強い甘味やうま味も、高い評価を受けているという。
 郡内の農家は研究熱心で、かつて県外にも積極的に足を運び、良質な牛を導入するなどしてきた。行政も畜産に力を入れ、各農家が切磋琢磨(せっさたくま)して牛の生産に励んでいるという。
 梶原さんは「先人たちが積み重ねてきた歴史のおかげで今がある。向上心を忘れず、畜産振興のために尽力したい」と話している。