大分市の県立芸術文化短期大情報コミュニケーション学科の学生が毎年、市内福宗の岩下地区でクチナシの実の収穫作業を手伝っている。田中敏子さん(65)=同市上宗方=が父の後を継いで栽培するが、地区は「限界集落」になり、手伝ってきた親戚も高齢化した。田中さんは「本当にありがたい。若い人が人生の中で、ここに来たことを思い出してくれるだけでもうれしい」と感謝している。
 クチナシは田中さんの父が減反になった田(約600平方メートル)で種から育てた。2004年に父が亡くなり、田中さんは「自然の恵みを無駄にできない」と古里に通い、母(85)と一緒に栽培。約180本の収穫作業は親戚に手伝ってもらっていたが、高齢になり難しくなったという。
 学生の手伝いは「学校での学びを地域で生かす授業」の一環。数年前、吉良伸一特任教授が地域社会を学ぶ特別講義の講師に田中さんを招き、クチナシ栽培や集落のことを話してもらったのがきっかけだった。
 本年度は12月21日に1、2年生15人が参加し、田中さんの友人らと一緒に黄色い実を一つ一つ摘み取った。古川桃子さん(19)=1年=は「農作業の大変さを実感した。いい経験になった」、村尾泰空さん(19)=同=も「人がいなくなり、集落がなくなってしまうのは寂しい」と地区の現状を肌で感じた様子。
 実は乾燥させて保存し、郷土料理の「黄飯」の色付けとして臼杵市の飲食店などに卸したり、県内の学校給食で使ってもらう。大分市今市の「若妻の店」でも販売している。染料や漢方薬に利用できるが、一般的には栗きんとんやたくあんなど食品の着色が主。
 田中さんは「父とクチナシがつないでくれた縁と出会いを大切に、できる限りのことはしていきたい」と話していた。