琉球放送で12日に初回が放映されるドラマ「尚円王」の題字を書いた書家の豊平美奈子さん(50)は、父で師匠の峰雲さん(享年77)が亡くなる2日前にくれた指導を思い返しては涙を流す。「王というのは天の力を受け、大地を踏みしめ、民を支えるんだ」。弱った力を振り絞り、琉球を治めた王の覚悟を字に表してくれた。最期まで作品に命を吹き込んだ父の姿を目に焼き付け、書の道を進む決意を新たにする。(首里城取材班・城間有)

 美奈子さんは昨年夏、高校の同級生でドラマを監修する琉球歴史家の賀数仁然さんに題字の揮毫(きごう)を頼まれた。尚円の人生を一通り聴き「人の支えを得て立ち上がった美しく、優しい国王」という人物像をそのまま表現した。

 2017年のドラマ「尚巴志」の題字を書いた峰雲さんに助言を求めると「自分でいいと思うならいいよ」と言われ、見せないまま納品した。

 峰雲さんの病状は急速に悪化し、昨年10月に入院した。美奈子さんが病室を訪れ、CMを見せて作品の完成を報告すると、峰雲さんは怒りだした。「おまえは世の中を統一する王というのが全く分かっていない。王っていうのはな」

 峰雲さんは字を書き始めた。体を起こすことができず、筆を持っても墨が腕に垂れてくる。力が弱った手で筆ペンを握り、ボードに挟んだA4の紙に何度も線を重ねて字を書いた。「円という字の真ん中は、心眼なんだよ。心眼の丸はティダ(太陽)。後ろから国民を照らすようなティダなんだよ」

 2日後の11月22日、峰雲さんは息を引き取った。

 美奈子さんは書き直しを決意した。初七日を済ませ、涙を拭いながらようやく一筆目を置くと、どんどん筆が進んだ。「先生が私の中にいる。一緒に書いてくれている」と思った。

 峰雲さんは「美奈子には箸より先に筆を持たせた」とよく冗談を言った。惜しみなく愛情を注いでくれた父であり、書の、人生の師だった。美奈子さんは「先生は最期まで、作品に命を吹き込むことの大事さを教えてくれた」と話す。父が導いてくれた書の道を自分の足で進んでいこう。そう決意を固めた。