「看板」という名の看板屋。「タルト屋」という名のタルト専門店。さらに「不動産屋です」という不動産屋―。県内各地に、業種をそのまま会社名や店名にした人たちがいる。単純明快をモットーにしたつもりが、お客さんに聞き返されることも多いという。「それでも、変えるつもりはないです」。店主らは口をそろえる。(中部報道部・平島夏実)

 沖縄県沖縄市胡屋で看板を製作している有限会社「看板」。3代目代表の松島良也さん(49)が名付けた。祖父の昭さんの代は、米兵用の名札作りが主で「島アート」。継いだ父の良勝さんは「島プラスチック工芸」を名乗り、米兵相手のバーの看板や映画セットを手掛けた。

 看板の材料は現在、プラスチックをアルミで挟んだ複合板が主流。電光掲示板も増えた。良也さんは「看板の変化に合わせて会社の名前も変わってきた。これからは『看板』のままで行きたいね」と話す。

 宜野湾市大山には、今夏で開店4周年を迎えるタルト専門店「タルト屋」がある。店主の久志大樹さん(37)は、1級パン製造技能士。パン激戦区の沖縄で生き残ろうとタルトに注目し、「タルト以外何もやりません」との決意から「タルト屋」にした。

 「屋」の文字に和風の響きを込めてリンゴやクリームチーズなどの定番に加え、金時豆をトッピングしたオリジナル商品も出す。客層は幅広く、久志さんは「お客さんみんなが『タルト屋』と呼び捨てしてくれるのがうれしい」と喜ぶ。

 那覇市国場には「不動産屋です」という不動産屋がある。代表の宮城明信さん(74)は約30年前、「琉球の土地を大きく動かそう」と「大琉地産」を創業したが、お客さんになかなか覚えてもらえず「大琉」に変更。約15年前、思い切って「不動産屋です」に改めた。

 役所で書類を提出した際、「会社名」の欄を見た若手職員に社名だと分かってもらえずいぶかしがられたことも。しかし2度目の訪問からは、職員のほうから手を振ってもらえるといい、宮城さんは「私はもう74歳。みんなを笑わせて世の中を明るくしようかと。それだけです」とほほ笑んだ。