新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が加速し、終息の兆しが見えない中では当然な判断だ。

 7月24日に開幕予定だった東京五輪を巡り、安倍晋三首相は、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話で会談、1年程度延期することで一致した。

 延期はその後のIOC理事会でも正式承認された。五輪延期は史上初めてである。五輪後に予定されているパラリンピックも延期となる。

 大会組織委員会はきょう26日に福島県をスタートすることになっていた国内聖火リレーの中止を決めた。トーチのリレーをやめ、ランタンにともした聖火を車で巡回する案が検討されていた。こんな方法で強行するよりは一から出直した方がいいだろう。

 カナダのオリンピック委員会(COC)などは選手団を派遣しない方針を表明した。「われわれの選手と国際社会の健康と安全ほど重要なものはない」と強調するのは「選手ファースト」の観点からである。選手最優先の立場で準備を進めなければならない。

 バッハ会長は感染症が広がる中、当初は予定通りの開催に理解を求めていた。しかし五輪出場権を争う国内外の大会が軒並み中止や延期に追い込まれ、選手や競技団体から延期を求める声が相次いだ。五輪の主人公となる各国アスリートからも怒りの声が上がった。

 選手のことを考えればIOCの判断は遅すぎたというほかない。参加するアスリートと数百万人に上るとみられる観客の健康を危険にさらすわけにはいかない。

■    ■

 最大の気がかりは選手だ。今年の夏にピークを合わせて練習を積み、モチベーションを高めてきただけに少なからず動揺しているだろう。

 原則23歳以下で争うサッカー男子は、延期で出場できない選手が出る恐れがある。年齢的に今回が最後と踏ん張ってきたベテランには長い1年となる。競技によっては、延期で代表が見直される可能性さえあるという。

 経済への影響も計り知れない。訪日外国人客が減り、国内消費の冷え込み、エコノミストからは今年の経済損失は3兆円を超えるとの見方も出ている。さらに追加の費用負担が膨らめば、企業業績にも影を落とす。

 1年先送りになっただけとの楽観論もある。だがコロナ不況でそれまで持ちこたえられるか、ぎりぎりの観光関連企業も少なくない。

■    ■

 大会組織委はこれまで進めてきた準備のやり直しや人員配置の見直しを迫られる。五輪、パラリンピックの抽選で販売済みの観戦チケットはどうなるか。約8万人に上る大会ボランティアの中には参加できなくなる人も出てこよう。会場確保も一から始めなければならない。すでに入っている予約との調整は困難を極めるだろう。

 日本政府にとって最悪の「中止」は避けられた格好だが、五輪開催の大前提は新型コロナの終息だ。特効薬やワクチンがない現在、来年夏までに終息しているかどうかが五輪開催の鍵を握る。