「国防は国の専権事項」ではなかったのか。決まり文句を盾に自衛隊基地建設を受け身のまま容認した石垣市が、尖閣諸島の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変えることを決め、国際的な緊張を招いている

▼中山義隆市長は「政治的意図はない」と言う。しかし、市民が尖閣と登野城を間違えて手続きした例は過去1件のみ。事務効率化が目的という説明は苦しい。強硬姿勢だけが一貫しているように映る

▼最近、中国公船が尖閣周辺で沖縄の漁船を追尾するなどしている。危険で、即座に中止すべきだ。ただ、中国に示威行動激化の理由を与えたのは1首長である石原慎太郎元都知事の「尖閣買い取り」表明だった。教訓を学ぶ必要がある

▼領土問題は妥協が難しく、エスカレートすると引っ込みがつかない。今回の字名変更には台湾の地方議会も反発し、対抗して地名変更を決議した

▼もともと尖閣周辺の海は沖縄と台湾の漁民が生活の場として共同で利用してきた。地理的にも歴史的にも、日中というより沖縄と台湾に当事者としての発言権がある

▼国防も、住民の命に関わる限り国の専権事項ではない。むしろ現場に、暮らしの知恵に基づく解決策がある。台湾は争いの棚上げと資源の共同開発を呼び掛けている。石垣市や県も、問題の平和的解決に向けて役割を果たせる。(阿部岳)