本年度の沖縄県立病院の看護師採用試験で、応募人数が県の想定を下回っている。看護師は地域医療の根幹を支える存在だが、締め切り3日前の21日になっても採用予定の約90人を極端に下回り、人手不足が避けられない状況だ。県病院事業局は「このままでは県民の医療を支えることが難しくなる」と危機感を募らせる。(社会部・下里潤)

 同局によると昨年度も応募者が少なく、2次募集を実施するなどして対応した。本年度は那覇市と名護市に加え、初めて東京と大阪に試験会場を設置。県外に住む看護師の募集にも力を入れているが、病院によっては採用時期を前年度に前倒しするなど、学生の「青田買い」が起きている。

 応募が少ない理由として、看護師の活躍の場が病院以外に広がったことが大きい。高齢化の進展などで在宅医療や地域ケアの人材需要が増大。福祉施設や訪問看護ステーションなどで働く看護師は、2010年から10年間で2倍以上に増えた。

 一方で県立病院は転勤や夜勤があり、ライフステージに合わせた多様な働き方を重視する若者に敬遠される傾向があるという。コロナ禍で「激務」のイメージが付いた可能性もある。

 県外への就職を希望する人も後を絶たない。県内の看護系大学や専門学校の新卒者は毎年700人程度。コロナ禍の20〜21年度卒業生は県内志向が高まり、県内就職率は70%以上となったが22年度は63・9%まで落ち込み、直近の10年間で最低となった。

 看護師不足解消に向け、県が力を入れるのが、資格はあるが仕事に就いていない「潜在看護師」の掘り起こしだ。子育てなどで離職した人が現場復帰すれば即戦力になると期待。不安解消に向けたサポート体制の強化や、県立病院で働く魅力などを発信する。

 県病院事業局の担当者は「研修体制や産休・育休への対応など、県立病院ならではの強みがある。応募締め切りの24日を過ぎても別の働き方があるので、まずは電話で相談してほしい」と話した。

 採用試験の詳細はこちら(https://byoinjigyokyoku.pref.okinawa.jp/topics/1684372223/)から。応募は24日締め切り。問い合わせは同局、電話098(866)2123。