【シールズ琉球−これまで/これから−】(下)基地強化 新時代に逆行 訪朝体験 平和構築のヒントに

【シールズ琉球−これまで/これから−】(下)基地強化 新時代に逆行 訪朝体験 平和構築のヒントに

 安全保障関連法に反対する活動を展開し注目された若者グループ「シールズ」が昨年解散する中、沖縄県内で活動をする「シールズ琉球」は解散をせず、活動を継続している。東村高江周辺のヘリパッド建設や辺野古の新基地建設など沖縄を取り巻く現状を踏まえ、これまでの取り組みや今後の活動についてどう考えるか。3人のメンバーに寄稿してもらった。    ◇   ◇ 基地問題を抱える沖縄の現状に対して私が心底疑問を抱くようになったのは、大学進学で本土に出てからだった。帰省で地元に帰る度、フェンスに囲まれていると感じ、息苦しさを覚えるようになった。私がウチナーンチュということだけで、本土の人間から「基地は沖縄に置いておけばいい」とか「沖縄県民はゆすりたかりで税金ばかり奪っている」などといわれたこともあり、本土との溝の深さにがくぜんとした。 その頃から近現代史に興味が湧き、いわゆる琉球処分から沖縄における国語・同化政策、地上戦と米軍施政権下の沖縄、「祖国」復帰から現在への歴史を学ぶようになった。沖縄の歴史と日本帝国主義の歴史を見ているなかで、私はどうしても立ち止まらなければならなかった。それは朝鮮の存在である。 日本帝国主義によって1国が滅ぼされ、同一民族の分断や在日コリアンに対する差別など、日本帝国主義の問題が現存するという共通点に気が付いた。特に「北朝鮮」は中国と並んで日本と敵対関係にあり、在日米軍基地が正当化される要因の一つになっている。いつしか「北朝鮮」の人々と対話がしたいと思うようになり、昨年8月、実際に「北朝鮮」に行くことができた。 この訪朝は、東アジアの子どもたちが絵を通して交流する「南北コリアと日本のともだち展」(日本国際ボランティアセンターなどの人道支援を行うNGO団体の主催)の事業の一環で、平壌外国語大学日本語学科の学生と日本側の学生が交流を行うというものだった。 沖縄が日本の南西に位置し、米軍基地があるという程度は平壌の学生も知っているようだったが、ひめゆり学徒を知っている学生や、琉球方言に関心を持つ学生もいたことには驚いた。私の渡航の目的は、平壌の学生に沖縄の歴史や現状を少しでも伝えること、また、「北朝鮮」から日本がどう映って見えるのか、すなわち日本の脅威をどのように認識しているのか、日本が敗戦を機に変わったと思うかを聞くことであった。 軍事境界線上にある板門店を訪れた時のことが非常に印象に残っている。そこはまさに、米軍の脅威によって民族の分断が保持される場だった。平壌の学生通訳2人も特別に板門店に入ることが許され、私たちと同行した。板門店の中には南北の軍事境界線が走っている。その屋内で通訳の学生が、目には見えない境界線をまたぎ、初めて「南」側に足を踏み入れて涙ぐんでいるのを見た。日本が米軍基地を置くことで、戦争に加担している現状を初めて目の当たりにした。 さらに私は板門店で人民軍兵士と話す機会を得た。「日本は戦後、日本国憲法の下で平和国家として再出発をした。敗戦を機に日本は変わったか」という私の問いに対し、兵士は、「オオカミが草を食べるようになったからといって、牙や毛皮が生え変わり、羊になることができようか」と答えた。 日本は「朝鮮民主主義人民共和国」を国家として認めておらず、その理由から帝国主義の過ちを謝罪していない。そればかりか、朝鮮戦争をはじめ、戦後も米国の戦争を支援する形で積極的に戦争に関わってきた。兵士の言葉はもっともだと思った。兵士に感謝の意を伝えると、「私たちは平和を愛する者同士です。そんな私たちが敵対関係にある理由がありません」といい、手を差し出してくれた。私たちは最後に固い握手を交わして別れた。 今回の訪朝を通して感じたのは、この人民軍兵士が決して「特別」ではないということだ。平壌の学生の1人は、「私たちは新しい世代だ」といった。「新しい世代」による「新しい時代」を、私たちが創っていかなければならないと思った。加害者の立場である日本が、過去の禍根を清算する責任を果たさなければならないし、私たち市民は政府に対してそれを求め続ける必要がある。 去る12月、安倍晋三首相は慰霊のために真珠湾を訪れた。安倍首相は、「世界の惨禍は、いまだに世界から消えない。憎悪が憎悪を招く連鎖は無くなろうとしない。寛容の心、和解の力を、世界は今、今こそ必要としています」と所感を表明した。その必要性を認識しているなら、安倍首相は真っ先にアジア地域において慰霊・謝罪の訪問をしなくてはならない。東アジアにおいては「憎悪が憎悪を招く連鎖」の源流が日本にある。「和解の力」は東アジアでこそ、その力をより強く発揮すると私は考えている。 憎悪の源となっている一つが、ここ沖縄に存在する。朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争など、米国の戦争の前線基地として在沖米軍基地がその機能を担った。女性や子どもなど、一般市民をも殺りくした爆撃機が、沖縄から飛び立ったのである。 「新しい時代」を築いていくために、沖縄は「悪魔の島」をやめる必要がある。しかしながら政府が負担軽減の名目で推し進める辺野古新基地や高江ヘリパッドの建設は、むしろ基地機能の強化でしかなく、私たち「新しい世代」の「新しい時代」に逆行するものであり、断固として許すことはできない。 これまで私がシールズ琉球として取り組んできたのは、侵害され続けた沖縄の人権を守るためであり、いわば「自分」のための活動であった。しかし訪朝以降、日本の一地域としての沖縄ではなく、東アジアの中の沖縄として、いかに東アジアの平和に関わるかという積極的な視点を得ることができた。 軍事力ばかりを頼りにする東アジアの秩序は「新しい時代」にそぐわない。新秩序の形成に、沖縄だからこそ担える役割があるはずである。 訪朝最終日、平壌の学生から「米軍基地のない美しい沖縄で幸せに暮らす、あなたの未来の生活を望みます。あなたは沖縄で、私は朝鮮で平和の世界のために頑張っていきましょう」とメッセージを受け取った。沖縄の権利獲得の闘争に「新しい時代」を築き上げようとする動きが加わり、沖縄はより一層強くなるに違いない。「新しい世代」のうねりはまだ日の目を見たばかりである。(2017年3月17日付沖縄タイムス文化面から転載)▼関連記事はこちら【シールズ琉球−これまで/これから−】(上)厳しさ増す沖縄の現状 正確な情報提供が重要【シールズ琉球−これまで/これから−】(中)ウチナーンチュ連帯を 同世代のつながりに意欲

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