ヒットメーカーが語る、渋谷と原宿“5%”をターゲットにしたエンタメ

ヒットメーカーが語る、渋谷と原宿“5%”をターゲットにしたエンタメ

 20年以上にわたり、渋谷を拠点に活動してきたLD&K。かりゆし58らの音楽プロダクション及びインディーレーベルとしてだけでなく、近年はカフェ事業など飲食業も全国で展開するなど成長を続ける。一方、本年で10周年を迎えるアソビシステムは、きゃりーぱみゅぱみゅらを排出し、原宿を拠点に“KAWAII”を世界へ発信し続けている。今回は、この2社を率いる、いわば渋谷と原宿の“顔”と呼べる2人に、音楽業界の展望や課題、渋谷・原宿の未来を語ってもらった。

◆カルチャーがないと街は発展しない

――大谷さんが代表を務めるLD&Kは渋谷、一方、中川さんが代表を務めるアソビシステムは原宿を拠点にしています。
【大谷】 渋谷じゃないと何もできなくないですか? 中川さんは原宿というアイコンを手にしているけど、イベントをやるにしてもやっぱり渋谷が多いでしょ?
【中川】 そうですね。原宿には場所がないので。
【大谷】 飲食店にしても、原宿や代官山は難しいんですよ。美容師やアパレルの人が多いから、夜になると帰っちゃうので。みんなお金も持ってないだろうし。
【中川】 (笑)。アソビシステムを立ち上げた2007年はちょうど渋谷ブームだったから、違う場所でやろうと思ったんです。もともと原宿が好きだったし、まわりに美容学生がたくさんいたから、「この人たちと何かやるなら、原宿だな」と。

――渋谷、原宿は現在、2020年の東京オリンピックに向けて再開発が進んでいます。
【大谷】 心配ですね。今はパルコもないし、渋谷公会堂も改修しているし、駅もずっと工事していて。渋谷全体が工事中みたいなもので、恐らく渋谷の景気は今が底なんですよ。
【中川】 2019年から2020年かけて商業ビルが次々とオープンしますけど、どうなるでしょうね。
【大谷】 厳しいと思いますよ。商業ビルに入れるようなアパレルもないだろうし、ユニクロのような大企業はすでに路面の店舗を抑えているので。そうなると後は飲食店ということになるんだけど、「売上が落ちたので出て行ってください」というやり方だと、いい店は育たないですからね。そもそも渋谷に来ても、誰もビルに入らないんじゃないですか?
【中川】 渋谷の人たちはストリートのカルチャーが好きですからね。原宿も再開発が行われていて、原宿に新しい商業施設ができたりしているんですが、あまり人は入ってないみたいです。僕は新しいビルを建てるよりも、古い建物をリノベーションしたほうがいいと思っていて。
【大谷】 もともと原宿も渋谷も路地文化ですからね。東急やパルコにはぜひ、劇場を作ってほしいと思っています。カルチャーがないと街は発展しないですから。

◆マーケットを広げ過ぎないほうがいい

――大谷さんはLD&Kレコード、中川さんはアイドル横丁と組んで「FUJIYAMA PROJECT JAPAN」を運営しています。今の音楽業界に対してどのように感じていますか?
【大谷】 まず、メジャーのメーカーとはやりづらいところがありますね。調子がいいときはそれでもいいけど、状況が良くないとすぐに担当者が変わったりするし、やる気にムラがあるので。事務所をやっている立場としては、所属しているアーティストは一生面倒を見ようと思っているんです。
【中川】 僕も同じです。
【大谷】 メーカーはそうではないので、どうしても上手くいかないことがあるんですよね。本来は「メーカー=事務所」という形がいちばん美しいと思います。
【中川】 僕らも今は何が正解なのか考える機会が増えています。感覚がズレていると感じることもあるし。年間のリリース計画を立てて「シングル3枚、アルバム1枚」みたいなやり方もどうなのかなと。
【大谷】 ここ5年くらいで少しずつ意識が変わってきたようだけど、まだCDの売上がビジネスの主体になっているメーカーもありますからね。「CDを売るためにCDショップでイベント」とか、普通にやっていたじゃないですか。ちゃんとライブとして稼働すれば最低でも100万、200万くらい利益を出せる現場が作れるのに、なんでCDを売るために動かなくちゃいけないんだって。メーカーにいたことがないせいか、「何で?」って不思議に感じることも多かったんですよね。ウチのスタッフにも「無理してリリースする必要ない」って言っているんですよ。レコードレーベルなのにね(笑)。
【中川】 僕たちもいろいろ試している段階です。「360度ビジネス」をやるべきだと思っているんだけど、スタッフの実力、マンパワーが追い付いていない部分もあるので。メーカーも数年前から「360度ビジネス」と言っていますが、それって自分たちのライバルになるのか? と思ったり。
【大谷】 要は自由にやれるかどうかですよね。ライブでもいいし、コマーシャルでもいいので。
【中川】 稼ぐポイントはいろいろありますからね。音楽の価値をどう使うか? ということですけど、それはライブでもいいし、広告でもいいので。最近はマーケットを広げ過ぎないほうがいいとも感じています。マストバイキャンペーンみたいなタイアップは必要なくて、アソビシステムのことを好きな人を少しずつ増やしていくほうがいいな、と。だから、あまり音楽業界内のネットワークも広げられていないんですよ。
【大谷】 広げる必要なんてないですよ(笑)。ウチもほとんど協業してないで25年以上やってきていますからね。

――アソビシステムはさまざまな企業と協業することは多いですよね?
【中川】 はい。大谷さんと違って、いろいろな場所に出て行きまくっています(笑)。モデルも多いので、イベントなどで使ってもらわないと。うちのモデルは自分で発信できるタイプばかりなので、そこは良いところだと思っています。読者モデル出身も多くて、スタイリングもメイクも自分でできるんですよ。売れてきても「アイメイクだけは自分でやる」という子もいます。
【大谷】 アソビシステムは美しいサブカルですよね。

◆音楽業界は不況ではない

――昨今のバンドブームもあって、音楽業界も徐々に勢いを取り戻しつつあります。若い人材を確保することも大事ですよね。
【中川】 最近、この業界を目指す学生は少なくなっていますね。エンタメに興味はあっても「それを利用してITで稼ぎたい」とか「スタートアップしたい」という人が多くて。以前は「ライブを手伝いたいです」という学生もかなりいましたが、今はぜんぜんいないんですよ。優秀な若い人に入ってもらわないと、業界はさらに衰退するでしょうね。
【大谷】 エンタテインメントに関わるメディアも意識を変えてほしいですね。いまだにレコード会社を中心に考えているから、「CDが売れない=音楽業界は不況」というニュースが浸透して、“不況”という誤ったイメージが付いているんじゃないかなと。
【中川】 ぜんぜん不況ではないですからね。稼いでいる人も多いし。
【大谷】 むしろバブルですよ。オリコンもいいニュースをたくさんピックアップしてほしいですね。それがリクルーティングに繋がると思うので。CDビジネスから移行できていないメーカーはどう考えてもキツイけど、プロダクション機能を持っているところは儲かってますから。
【中川】 ビジネスモデルを作れるかどうかですよね。ウチはファッション誌とも付き合いがあるんですが、これまではコンビニなどの流通を通して10万部以上配本して、そのうちの「5割5分売れたらいい」というやり方だったんです。
【大谷】 エコじゃないですね(笑)。
【中川】 そうなんですよ。そもそも「5割5分売れればいい」というビジネスは無駄が多い。そうじゃなくて3万部くらいの部数でも成り立つように考えないと。
【大谷】 誰が買うかもわからない商品をコンビニに置くのも無理がありますからね。LD&Kでもクラウドファンディングをやっていますが、あれは受注生産みたいなものなので。エコですよ(笑)。

――ユーザーの好みに合わせた、さらにきめ細かいサービスが必要なのかもしれないですね。
【中川】 僕たちはそもそもお茶の間を狙っているわけではないんですよね。きゃりーぱみゅぱみゅもそうですが、アソビシステムのアーティストはもともと尖ったタイプが多いし、本当に好きになってくれる人を増やすべきだなと思っているので。最近よく「何かおもしろいことをやりましょう」と話をいただくことがあるんですが、ザックリした事案では意味がないし、自分たちの価値を下げるような気がしていて。そこはしっかり見極めたいですね。
【大谷】 渋谷の話に戻ると、商圏は1000万人なんです。我々は「そのうちの5%が好きでいてくれたらいい」という考え方なんですよ。うちの店(宇田川カフェ、Cafe BOHEMIAなど、LD&Kが経営する飲食店)のコーヒーはすごく濃いんですが、それを「美味い」と思う人が5%いれば成り立つ。我々だけではなくて、そういうスタンスの人間が増えればもっとおもしろくなると思うんですよね。5%の人をターゲットにした飲食店やエンタテインメントがたくさんあったほうが街は活気づくし、渋谷に来る人も楽しいじゃないですか。今度、LD&Kでアパレルを始めようと思っているんですが、売る人をこちらで決めたいんです。「お前は着てよし!」「お前には売らない」って(笑)。

大谷秀政氏
1968年愛知県生まれ。22歳でデザイン事務所ビックボスを設立。同社は1995年にLD&Kに社名変更。2001年の「宇田川カフェ」のオープンを皮切りに、東京・大阪・神戸・大分、沖縄などで、カフェやバー・ライブハウスなどを運営。音楽プロダクションとしては、かりゆし58、ガガガSP、中ノ森文子、日食なつこ、打首獄門同好会、ドラマチックアラスカなどが所属。レーベル事業、プロダクション事業のほか、上述した飲食業や、近年はクラウドファンディングなど新規事業も積極的展開。

中川悠介氏
1981年、東京生まれ。イベント運営を経て、2007年にアソビシステムを設立。原宿を拠点に地域と密着しながら、ファッション・音楽・ライフスタイルといった、原宿カルチャーを発信。所属アーティストのきゃりーぱみゅぱみゅのワールドツアーを成功させるなど、グローバルへ“KAWAII”を伝えるアイコンとして活躍。また、15年からはインバウンドを視野に入れた「もしもしにっぽんプロジェクト」もスタート。また、同プロジェクトからはフェス型イベント「もしもしにっぽんフェスティバル」も開催。昨年はB to B向けセミナーなども充実させるなど年々規模を広げている。本年創業10周年を迎えた。

[17年7月31日号 コンフィデンスより]

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